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中村 孝司, 屋嘉比 康治
2000 年 97 巻 5 号 p.
551-559
発行日: 2000/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
NSAIDによる消化管粘膜傷害は,人口の高齢化とともに,今後ますます重要な問題となると予測される. NSAID粘膜傷害には2つのタイプがあると考えられる. 投与後胃体部を中心に急激に発生し,出血などの合併症をもたらしやすいものと,慢性投与期に無症状で前庭部を中心に浅い多発病変としてみられるものである,治療法はわが国ではmisoprostolのみが承認されているが,世界的にはPPIやH
2RAの有用性が証明されており,使用の承認が求められる. 将来的には
H.pylori除菌,選択的COX-2阻害薬,NO-NSAIDの開発などが期待されている.
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大谷 泰一
2000 年 97 巻 5 号 p.
560-567
発行日: 2000/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
急性膵炎の発生メ力ニズムを解明するには,膵腺房細胞内における消化酵素,とくにkey enzymeであるトリプシノーゲンの活性化の機序を探ることは重要である.ラットセルレイン膵炎モデルを用いての検討は広く行われ,膵腺房細胞内においてトリプシノーゲンはsorting errorされたライソゾーム酵素:カテプシンBにより活性化されるとするカテプシンB説と,トリプシノーゲンはセリンプロテアーゼ活性のもとで酸性環境のdistinct subcelluar compartmentに移送されて活性化されるとするautoactivation説は,現在最も有力な2大仮説である.
この2大仮説の論争はまだ続いているが,弱塩基およびセリンプロテアーゼインヒビターの前投与により,
in vitro,
in vivoにおいてTAP活性の出現が抑制される(トリプシノーゲンはトリプシンに活性化されない)ことなどから,酸性環境とセリンプロテアーゼ活性のもとでトリプシノーゲンは活性化するというautoactivation説は少なくとも膵腺房細胞内における膵消化酵素活性化の重要なpathwayの1つと考えて差し支えあるまい.
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杉山 照幸, 清水 勝, 大西 弘生, 野口 顕広, 岩田 圭介, 小島 康志, 渡辺 裕, 川瀬 光八郎, 福富 尉, 山内 治, 安田 ...
2000 年 97 巻 5 号 p.
568-574
発行日: 2000/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
C型慢性肝炎患者をIFN投与群と非投与群に分け,口腔扁平苔癬の出現について検討した. lFN投与群での口腔扁平苔癬の出現率は非投与群に比し有意に高率であったが,HCVRNA量,HCV遺伝子型は口腔扁平苔癬出現例と非出現例の間で差異は認められなかった. またIFN治療効果と口腔扁平苔癬の予後との間に明らかな関連はみられず,IFNにより誘発された口腔扁平苔癬6例中3例は血中HCVRNA消失後に発症を認めた.すなわち,C型慢性肝炎患者にてIFNにより誘発される口腔扁平苔癬はHCV感染自体による可能性は少なく,HCV感染によって生じた潜在性病変にIFN投与による宿主の反応が加わり発症する可能性が示唆された.
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河野 通盛, 山田 稔, 奥村 剛清, 堀 浩太郎, 星野 潮, 吉村 禎二
2000 年 97 巻 5 号 p.
575-579
発行日: 2000/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
プロトンポンプ阻害剤による視力障害と考えられる57歳女性と49歳男性の2症例を経験した.両症例とも糖尿病,慢性肝障害を合併し,投与開始後短期間で急速に進行する視力障害を訴えた.眼科的検査では前眼部,中間透光体,眼底に視力低下を説明する異常所見を認めず,視神経障害による視力障害と考えられた.両症例とも薬剤中止により視力は速やかに回復した.本剤による視力障害の報告は本邦ではいままでになく,重要な副作用と考えられたため報告した.
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丸田 和夫, 棗 雅子, 堀 高史朗, 石塚 大輔, 安田 有利, 平良 悟, 片上 利生, 日高 道生, 中田 健一, 木幡 義彰, 田口 ...
2000 年 97 巻 5 号 p.
580-584
発行日: 2000/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は63歳,女性.便潜血反応陽性精査目的に当科受診した.大腸内視鏡検査では,虫垂開口部に一致して表面顆粒状の隆起性病変を認め,生検にて印環細胞癌と診断された.虫垂原発の印環細胞癌は極めてまれな疾患であり,その報告も少ない.更に,虫垂癌自体その臨床症状より術前に診断することは比較的困難である,今回我々は,術前に診断し得た原発性虫垂印環細胞癌の1例を経験したので若干の考察を加え報告した.
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榎本 康之, 伊坪 真理子, 河辺 朋信, 小池 和彦, 小野田 泰, 小室 理, 都野 晋一, 戸田 剛太郎
2000 年 97 巻 5 号 p.
585-589
発行日: 2000/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
肝動脈塞栓療法(TAE)を繰り返した後に,右横隔膜直下に位置する肝細胞癌(HCC)に右内胸動脈からの栄養血管の発達を認めた2症例を経験した,同動脈を介してカテーテル治療を行い,重大な副作用なく,1例ではAFPの軽度低下を認め,他の1例では腹腔内腫瘤破裂を止血できた.横隔膜直下のHCCでは内胸動脈が栄養血管になる可能性があり,経力テーテル治療は超選択的手技により安全かつ有効に行えると考えられた.
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堀本 亜希, 竹中 成之, 森 紀香, 大畑 博, 原 猛, 西 彰平
2000 年 97 巻 5 号 p.
590-594
発行日: 2000/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は73歳,男性.左季肋下部痛,発熱にて入院.CTにて肝左葉から突出した15cm大の嚢胞があり,網嚢にも液体貯留あり.経皮的ドレナージにて黄白色混濁液が排液され,
Streptococcus milleriと
Klebsiella pneumoniaeが検出された.嚢胞造影で網嚢への穿破が確認された.嚢胞内に塩酸ミノサイクリンを注入し,嚢胞は著明に縮小した.嚢胞造影およびERCPにて嚢胞と胆管との交通は確認できなかった.
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米田 諭, 吉川 正英, 今津 博雄, 福井 博, 山根 佳子, 中谷 敏也, 岩澤 秀, 西村 公男, 榎木 登, 飯室 勇二, 森本 泰 ...
2000 年 97 巻 5 号 p.
595-599
発行日: 2000/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は,61歳男性.肝右葉前区域の塊状型肝細胞癌に対する手術治療の待機中に,繰り返す心窩部痛,黄疸を認めた.内視鏡的逆行性胆管造影では肝門部胆管内に類円形の透亮像を認め胆管結石様であった.しかし,腹部MRIでは肝細胞癌の胆管内発育進展を疑った.開腹手術で,肝右葉前区域から連続性に総胆管内まで発育した肝細胞癌と診断した.肝細胞癌を有する症例に閉塞性黄疸がみられた際は,胆管閉塞機転として胆管腫瘍栓を視野に入れる必要がある.
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金児 猛夫, 上野 徹男, 丸山 雄造, 袖山 治嗣
2000 年 97 巻 5 号 p.
600-604
発行日: 2000/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は23歳女性.腹部腫瘤に気付き近医を受診,紹介で当科初診,入院となった.腹部エコー,CT,MRI,ERCP,血管造影などで周囲臓器と比較的境界明瞭な巨大腫瘍と診断した.膵頭十二指腸切除術により摘出された腫瘤は17.5×14.0×9.5cmで病理検査の結果は膵頭部のsolid cystic tomorであった.本腫瘍がリンパ節転移をともなうことはきわめてまれであるが,8a,14b,17aリンパ節に転移を認めた.
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杉山 宏, 佐々木 稔, 浅野 貴彦, 河合 英博, 加藤 則廣, 森脇 久隆, 黒岩 正樹
2000 年 97 巻 5 号 p.
605-611
発行日: 2000/05/05
公開日: 2008/02/26
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症例は64歳,男性,大酒家.腹痛にて来院.血清膵酵素は著明に上昇し,腹部US,CTで肝S
2区域の多房性嚢胞性病変と,膵体尾部の嚢胞を認めた.肝嚢胞性病変の穿刺造影像は樹枝状を呈し,膵嚢胞へ造影剤が流出した.肝嚢胞液中アミラーゼは異常高値を呈し,肝左葉へ穿破した膵仮性嚢胞と診断した.膵仮性嚢胞の肝穿破例は極めてまれであるが,肝嚢胞穿刺造影と嚢胞液中アミラーゼの測定がその確定診断に極めて有用であった.
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小林 聡, 寺崎 正起, 岡本 恭和, 坂本 英至, 神谷 諭, 篠原 剛, 浅羽 雄太郎
2000 年 97 巻 5 号 p.
612-615
発行日: 2000/05/05
公開日: 2008/02/26
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症例は52歳,男性. 心窩部不快感を主訴に来院. 精査で副甲状腺機能亢進症に合併した慢性膵炎にともなう膵仮性嚢胞と診断した. 入院中突然に腹痛を認め,CTで嚢胞の脾穿破を認めた. 手術は膵体尾部脾切除,胃部分切除,副甲状腺腫瘍摘出術を施行した. 主膵管は膵石により閉塞しており,膵液のドレナージ不良のため膵仮性嚢胞が脾穿破を来したと考えられた. また病理学的検索で副甲状腺機能亢進症と慢性膵炎の関連が示唆された.
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徳山 博, 中山 祐史, 築野 美俣, 緒林 誠, 南條 知己, 金 邦源, 柳川 憲一, 川口 貢, 西森 武雄, 坂崎 庄平, 韓 憲男 ...
2000 年 97 巻 5 号 p.
616-618
発行日: 2000/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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