日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
120 巻, 7 号
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今月のテーマ(総論):多角的アプローチによる炎症性腸疾患の最新治療
  • 安藤 朗
    2023 年 120 巻 7 号 p. 537-543
    発行日: 2023/07/10
    公開日: 2023/07/10
    ジャーナル 認証あり

    炎症性腸疾患(IBD)の診断治療は大きく進歩を遂げてきたが,いまだその病態は完全には明らかになっていない.クローン病(CD)は,自然免疫と関連した疾患感受性遺伝子(NOD2やオートファジー)が報告され,食物抗原や腸内細菌によるTh1,Th17免疫応答がその病態の中心と考えられている.一方潰瘍性大腸炎(UC)は,食物抗原の関与や腸内細菌の変化はCDほど明確ではなく,CDでは認められない上皮細胞や間質細胞の形質,機能変化とTh1,Th17免疫応答に加えてTh2免疫応答がその病態に深く関わっている.さらに,治療抵抗性の病態にIL-1βの関与が示唆されている.

今月のテーマ(総説):多角的アプローチによる炎症性腸疾患の最新治療
  • 久松 理一, 松浦 稔, 三好 潤
    2023 年 120 巻 7 号 p. 544-553
    発行日: 2023/07/10
    公開日: 2023/07/10
    ジャーナル 認証あり

    IBDは原因不明の慢性炎症性疾患である.遺伝的素因(疾患関連遺伝子)と環境因子が関与する多因子疾患と考えられており,腸管免疫と腸内細菌叢との関係が注目されている.腸管免疫は,腸内細菌叢や食物抗原に対し過剰な免疫応答をおこさないように常に恒常性が保たれている.その恒常性が破綻し,免疫活性化状態が持続するのがIBDと考えられる.病態には炎症性サイトカインなどの多くの分子が関与するが,従来は副腎皮質ステロイドのように免疫全般を抑えるような治療が行われてきた.しかし,抗TNF-α抗体製剤の成功を契機に腸管免疫を標的とした分子標的治療の開発が進んでおり,その内容も抗体製剤から低分子化合物へと移りつつある.

  • 吉松 裕介, 筋野 智久, 金井 隆典
    2023 年 120 巻 7 号 p. 554-561
    発行日: 2023/07/10
    公開日: 2023/07/10
    ジャーナル 認証あり

    炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease;IBD)は再燃寛解を繰り返す慢性疾患で,原因不明である.現在,治療のターゲットの中心となっている腸管免疫のほかに,遺伝的素因・環境因子が複合的に関与して発症することが想定されている.近年,腸内細菌叢がこれらの要因のいずれとも関与していることが明らかとなり,腸内細菌叢の組成の乱れ,いわゆるdysbiosisを是正する治療概念についてさまざまな研究が行われている.いまだ確立されていない概念だが,将来的に難治のIBD患者にとっての光明となりうる.本稿では,IBDの病態における腸内細菌の関与と治療の可能性について概説する.

  • 岡本 隆一, 水谷 知裕, 清水 寛路
    2023 年 120 巻 7 号 p. 562-570
    発行日: 2023/07/10
    公開日: 2023/07/10
    ジャーナル 認証あり

    炎症性腸疾患は消化管に原因不明の慢性炎症をきたす一方,同時に粘膜組織などの破壊・機能欠損が生じる.このため,治療の過程では破壊・損傷した粘膜組織を再生・修復し,正常な機能を回復することが重要であり,「粘膜治癒」を目標に掲げるT2Tの考え方に通じている.組織の再生・治癒の過程では当該組織に内在する幹細胞の機能が極めて重要な役割を果たす.このような観点から,炎症性腸疾患においても造血幹細胞・間葉系幹細胞に加え,腸上皮幹細胞を利用した治療法の開発が検討されてきた.本稿では,いわゆる再生医療の考え方で用いることが可能となっている治療,開発の途上にある治療について,病態との関わりを辿りながら展望する.

  • 山本 博徳
    2023 年 120 巻 7 号 p. 571-578
    発行日: 2023/07/10
    公開日: 2023/07/10
    ジャーナル 認証あり

    炎症性腸疾患診療はさまざまな治療薬の登場などにより大きく進歩した.しかし,いまだに原因不明の慢性炎症性疾患であることには変わりない.診療の目標は寛解導入・維持によるQOL・予後の改善であり,粘膜治癒が治療目標として重要である.腸管粘膜の状態,炎症の活動性,腫瘍や狭窄などの合併症の有無を見るためには内視鏡は精度が高く,有用である.近年内視鏡機器,技術にも進歩が見られ,精度の高い診断・治療が可能となっている.寛解維持率の向上に加え,内視鏡診療レベルも向上し,外科手術を必要としていた潰瘍性大腸炎にともなうdysplasiaやクローン病における小腸狭窄などの合併症に対しても,低侵襲内視鏡治療が可能となっている.

座談会
原著
  • 佐藤 允洋, 上野 伸展, 杉村 浩二郎, 岩間 琢哉, 田中 一之, 坂谷 慧, 芹川 真哉, 安藤 勝祥, 嘉島 伸, 石川 千里, 武 ...
    2023 年 120 巻 7 号 p. 590-601
    発行日: 2023/07/10
    公開日: 2023/07/10
    ジャーナル 認証あり

    炎症性腸疾患(IBD)患者の基幹病院と地域中核病院における医療連携の確立は,本邦において重要な課題となっている.本研究は,北海道内の多施設による後ろ向きコホート研究とアンケート調査から,その診療実態と医療連携構築の課題を明らかにすることを目的とした.その結果,IBD患者の基幹病院へ集中と診療格差が明らかとなり,地域中核病院での病院機能,メディカルスタッフのIBD診療理解度の低さが逆紹介の課題と考えられた.課題の解決には,重症度に応じた診療の棲み分け,教育活動やチーム医療の充実化が重要と考える.基幹病院と地域中核病院でIBD医療連携が進むことで,IBD診療の均てん化を実現できると考える.

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