日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
114 巻, 5 号
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総説
  • 竹原 徹郎
    2017 年 114 巻 5 号 p. 807-812
    発行日: 2017/05/05
    公開日: 2017/05/05
    ジャーナル フリー

    非アルコール性脂肪肝から脂肪肝炎への発症メカニズムは十分に解明されていない.病態を構成する因子が複合的であることから,多様な視点からの研究が必要である.本稿では,非アルコール性脂肪性肝疾患の病態研究に関して,特にこの1年間の進歩に焦点を当て,興味深い研究をいくつか取り上げた.1)肝細胞死に直接関わる脂肪毒性,2)肝細胞障害に引き続く炎症細胞浸潤,3)細胞外小胞と細胞間コミュニケーション,4)臓器相関の1つともいえる腸内細菌叢,5)細胞死と脂肪代謝の双方に関与するオートファジー,などに関して,重要な知見が報告されており,今後の研究の展開が期待される.

今月のテーマ:NAFLD/NASH; 臨床と研究の最前線
  • 建石 良介, 小池 和彦
    2017 年 114 巻 5 号 p. 813-818
    発行日: 2017/05/05
    公開日: 2017/05/05
    ジャーナル フリー

    非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は,世界的な肥満人口の増加を背景として,その増加が全世界規模で大きな公衆衛生上の問題となってきている.多数の疫学研究を統合した結果,全世界規模での非飲酒者に占めるNAFLDの割合は,25%と推定された.NAFLDは内臓肥満を背景としてインスリン抵抗性を主因におこってくる疾患であるため,メタボリックシンドロームの構成因子である脂質異常症,糖尿病を合併,新規発症することが多い.また遺伝素因の関与が濃厚に疑われる疾患でもあり,近年いくつかの疾患感受性遺伝子多型が報告されている.

  • 徳重 克年
    2017 年 114 巻 5 号 p. 819-825
    発行日: 2017/05/05
    公開日: 2017/05/05
    ジャーナル フリー

    NASHは,非飲酒者にもかかわらず脂肪性肝炎を認め,進行性病態をとる疾患群として報告された.以降,NASHの診断にはさまざまな議論がなされ,病理診断基準に関しても,さまざまな基準が報告されてきた.また病態に関しても,現在のNASH/NAFLDは非飲酒者の色々な脂肪肝を呈する病態を含有しており,新たな分類・診断基準の確立が望まれる.また,診断・病態に関する新たなバイオマーカーの研究,画像診断の研究が進んでいる.今後肝生検することなしに,NASH,NAFLDの診断が可能になる時期も近いと思われる.

  • 調 憲, 新木 健一郎, 塚越 真梨子
    2017 年 114 巻 5 号 p. 826-833
    発行日: 2017/05/05
    公開日: 2017/05/05
    ジャーナル フリー

    サルコペニアは加齢による骨格筋減少症と定義される.肝疾患によるサルコペニアは,栄養障害や肝機能低下,加齢などを原因としている.このような背景の中,日本肝臓学会のワーキンググループによって診断基準が示された.サルコペニアは肝硬変や肝細胞癌,肝移植後の予後を規定する因子とされ,最近NASHにおける肝線維化との関連が報告された.サルコペニアに対しては栄養・運動療法あるいは薬剤による治療が有用との報告がある.このようなサルコペニア対策が肝疾患患者における生命予後延長をもたらすのかが臨床上の大きな関心となっているとともに,NAFLDやNASHとの関連についての研究の発展が期待される.

  • 小川 佳宏, 伊藤 美智子
    2017 年 114 巻 5 号 p. 834-838
    発行日: 2017/05/05
    公開日: 2017/05/05
    ジャーナル フリー

    NAFLDはメタボリックシンドロームの肝臓における表現型と考えられるが,このうち進行性の病変としてNASHの発症機構が注目されている.われわれは最近,新しいNASHモデルマウスの開発に成功し,メタボリックシンドロームを背景として,どのようにしてNAFLD/NASHを発症するのかに関する手掛かりを得てきた.過剰な脂肪蓄積により細胞死に陥った実質細胞(脂肪細胞・肝実質細胞)とマクロファージや線維芽細胞などの間質細胞の相互作用の場として,肥満の脂肪組織とNASHの肝臓に共通するcrown-like structures(CLS)あるいはhepatic CLS(hCLS)に着目し,NAFLD/NASHの発症機構の解明と早期発見・発症前診断のためのバイオマーカーや治療戦略の開発が期待される.

原著
  • 中井 正人, 森川 賢一, 大原 正嗣, 川岸 直樹, 出水 孝章, 梅村 真知子, 伊藤 淳, 常松 聖司, 佐藤 史幸, 荘 拓也, 須 ...
    2017 年 114 巻 5 号 p. 839-845
    発行日: 2017/05/05
    公開日: 2017/05/05
    ジャーナル フリー

    ウイルソン病は原因不明の肝機能障害,肝硬変における鑑別診断の1つである.多くは幼少期に診断されるが,成人後に肝硬変として発見される症例も経験する.血清セルロプラスミン,尿中銅などの測定にて診断可能な症例もあるが,診断に苦慮し,ATP7B遺伝子変異検査や肝組織中銅含有量測定が必要な場合もある.米国肝臓病学会,ヨーロッパ肝臓学会から診断ガイドラインが提唱されており,本邦でも2015年にウイルソン病診断ガイドラインが発表され,診断困難例においても,各ガイドラインに従った診断が可能となった.当科でのウイルソン病症例を各ガイドラインの診断基準,フローチャートを用いて検討し,その有用性を報告する.

症例報告
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