日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
108 巻, 8 号
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総説
  • 波多野 悦朗, 上本 伸二
    2011 年 108 巻 8 号 p. 1347-1353
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌においてこれまで多くの遺伝子解析が行われてきたが,臨床へのフィードバックは少なかった.2009年の分子標的治療薬ソラフェニブの登場は,これまで有効性が証明された薬剤がなかった肝細胞癌の臨床に大きなインパクトを与えている.現在,次なる分子標的治療薬を求めて,多くの臨床試験が行われている.一方,世界で初めて肝細胞癌全ゲノム解読解析の結果が報告され,63個のアミノ酸置換を引きおこす遺伝子変異と4個の融合遺伝子を含んだゲノム異常の全体像が明らかにされた.これらの画期的な開発,研究を契機に,肝細胞癌の分子機序の解明がすすみ,創薬ならびに個別化医療が実現されることを期待したい.
今月のテーマ:消化器癌の分子メカニズムの研究の進歩
  • 辻井 正彦, 飯島 英樹, 竹原 徹郎
    2011 年 108 巻 8 号 p. 1354-1362
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌においては,近年,FOLFOXをはじめとした化学療法や,EGF受容体(EGFR)を標的分子とした分子標的治療の進歩により,切除不能が切除可能となり,手術で根治となる症例が増えてきている.抗EGFR治療は,KRAS変異例では奏功せず,その治療方針を決定する上で,KRAS変異は優れた分子マーカーとなっているが,KRAS変異のない症例でも奏功しない症例が多く,十分とはいえない.マイクロサテライト不安定性やLINE-1メチル化など,有効性が示唆されるマーカーや,NOTCH阻害剤など抗腫瘍効果が期待できる標的分子が報告されてきているが,今後,包括的分子生物学的手法を用いたさらなる検討が必要である.
  • 松崎 恒一, 関 寿人, 岡崎 和一
    2011 年 108 巻 8 号 p. 1363-1373
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    近年,肝線維化と発がんを同時に促進する分子機構が,TGF-βシグナル伝達の詳細な解析より明らかにされた.TGF-βシグナルは,リン酸化Smadを介して伝達される.I型TGF-β受容体とc-Jun N-terminal kinaseは,Smad3のC末端と中央に位置するリンカー部をそれぞれリン酸化し,C末端がリン酸化されたSmad3(pSmad3C)とリンカー部がリン酸化されたSmad3(pSmad3L)を形成する.ウイルス性慢性肝組織の肝細胞におけるリン酸化Smad3シグナルは,pSmad3Cを介するがん抑制経路から,間質細胞に特徴的なpSmad3Lを介する細胞増殖促進(がん化)・線維化経路に,病態の進行とともに次第に移り代わっていった.この結果により,線維化進展に比して発がんリスクが高まるウイルス性慢性肝疾患の病態は,リン酸化Smadシグナル伝達の変遷に起因すると考えられた.
  • 清水 孝洋, 丸澤 宏之
    2011 年 108 巻 8 号 p. 1374-1382
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    消化器領域で発生する癌の多くは,慢性炎症を背景に発生する.すなわち,持続する炎症反応が発癌において重要な役割を果たしているものと考えられる.これまで,炎症性疾患の発癌リスクに関する報告は数多くなされてきたが,近年,慢性炎症の原因となる疾患の治療や炎症反応の制御が発癌の予防につながることも疫学的なエビデンスを持って明らかにされてきている.同時に,慢性炎症による発癌の分子メカニズムの解明も徐々に進んでおり,炎症反応により正常上皮細胞にさまざまな遺伝子異常が引きおこされるとともに,周囲をとり巻く間質細胞との相互作用が腫瘍形成の支持母体となっていることもわかってきた.
原著
  • 志和 忠志, 川並 義也, 横山 知子, 守谷 昭彦, 橋本 正敏, 後藤 亨
    2011 年 108 巻 8 号 p. 1383-1392
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    生活習慣改善指導によってもLDL-CがJAS 2007年版ガイドラインの管理目標値に到達しなかった脂質異常症患者297例に対し,ezetimibeを平均178.2±295.4日投与し,血清脂質およびNAFLDに対する有用性を検討した.本剤はNAFLDの有無にかかわらず対象患者の血清脂質を有意に改善した(p<0.01).また,NAFLDを有する群のAST,ALT,γ GTPを有意に改善した(それぞれp<0.01,0.05,0.01).本剤投与前後の腹部超音波検査によるNAFLDの経過観察可能な70例のうち,38.6%に脂肪肝の消失が見られ,ezetimibeはNAFLDの改善にも有用であると考えられた.
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