日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
102 巻, 11 号
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総説
  • 木下 芳一, 古田 賢司, 足立 経一
    2005 年 102 巻 11 号 p. 1377-1383
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/04
    ジャーナル フリー
    Non-erosive reflux disease(NERD)は逆流症状があり健康な生活が障害されているにもかかわらず食道にびらんや潰瘍がない疾患である.NERDの有病率はerosive esophagitis(EE)より高く,EEに比べて女性や若年者に多く,肥満者,食道裂孔ヘルニアを有する例,Helicobacter pylori陰性例は少ない.病因としては胃酸の逆流が最も重要であるが,その他にも多くの成因が関与しており単一の病因で発症する疾患ではない.本症の診断には病歴の聴取と内視鏡検査で十分であるが病態の解析には種々の検査がおこなわれる.治療にはプロトンポンプ阻害剤がまず用いられるが有効率は40~70%程度であり無効な場合にはanti-depressantなどの種々の薬剤が試みられる.
今月のテーマ:メタボリックシンドロームと消化器
  • 河田 純男, 三澤 慶子, 三條 麻衣, 大武 さや香
    2005 年 102 巻 11 号 p. 1384-1391
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/04
    ジャーナル フリー
    近年,過食や運動不足による生活習慣病が増加している.その基盤に内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドロームがあることが注目されており,先頃,その診断基準が提唱された.脂肪組織からはアディポサイトカインという一群の生理活性物質が分泌されていることが知られている.肥満があると,このアディポサイトカインの分泌調節異常が生じ,そのためにインスリン抵抗性を始めとした多彩な病態が形成されることが明らかにされてきている.一方,消化器疾患の発症・進展におけるメタボリックシンドロームの関与が国内外で漸く検討され始めている.アディポサイトカインを介した消化器病態の発生機序が理解されると,疾患の予防・治療における新しい標的が明らかになると考えられる.
  • 池嶋 健一, 佐藤 信紘
    2005 年 102 巻 11 号 p. 1392-1397
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/04
    ジャーナル フリー
    本邦でも生活習慣の欧米化などにともない肥満,糖尿病が増加傾向にあり,メタボリックシンドロームに高率に併発する脂肪肝の臨床的重要性が認識されるようになった.肝脂肪化はそれ自体がNASHとして進行性の肝病変を惹起し得ることに加え,C型慢性肝炎など他の病因による慢性肝疾患の進行や治療効果に影響を及ぼすことも明らかにされつつある.脂肪性肝炎の病態は肥満,インスリン抵抗性や自律神経系調節と密接な関連があり,これらを結び付ける因子としてアディポカインの関与が想定される.レプチンが肝の炎症および線維化反応を調節する因子として作用することが明らかになり,レプチンをはじめとする種々のアディポカインが脂肪性肝炎の病態形成に主要な役割を演じていることが示唆される.
  • 難波 光義, 宮川 潤一郎, 浜口 朋也
    2005 年 102 巻 11 号 p. 1398-1404
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/04
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病の治療のみならず,メタボリックシンドロームから2型糖尿病への進行を止めることは,大小両血管障害を抑制することにつながる.わが国では食習慣の変化,とりわけ高脂肪食によってメタボリックシンドロームを抱えた肥満者が急増しつつあるが,その背景には消化管ホルモン,とりわけ脂肪摂取に対してインスリン分泌促進作用を発揮するGIPやGLP-1などのインクレチンの分泌あるいは作用異常の介在が疑われる.従来の薬剤とは全く異なる機序をもったGLP-1関連製剤の臨床応用は,前述の代表的生活習慣病の予後改善に貢献するのみならず,これらの成立機構や病態基盤の解明にも役立つ可能性が期待される.
原著
  • 千野 晶子, 浦上 尚之, 保坂 尚志, 石山 晃世志, 帯刀 誠, 山本 頼正, 土田 知宏, 藤崎 順子, 星野 恵津夫, 高橋 寛, ...
    2005 年 102 巻 11 号 p. 1405-1411
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/04
    ジャーナル フリー
    放射線性直腸炎による出血に対して,argon plasma coagulation(APC)治療を施行し,半年以上経過観察された18例を対象に,内視鏡所見別の治療戦略やAPCの最適な焼灼方法をretrospectiveに検討した.治療前の内視鏡所見を見直しで以下の様に分類,Type A;限局した拡張血管(n=6),Type B;びまん性の拡張血管(n=6),Type C;拡張血管にともないびらん・潰瘍をともなう(n=6).APCの設定値と焼灼方法は,電力40 W・アルゴンガス流量1.0 l/minで5~10秒の連続焼灼または,電力40 W/アルゴンガス流量0.6 l/min(低侵襲設定)で1~2秒の短時間焼灼で施行した.Type A・Bの症例は,いずれの設定値と焼灼方法でも,全例重篤な合併症なく効果を得ることができた.Type Cにおいても,止血効果は認めたが,40 W・1.0 l/min/5~10秒の連続焼灼を施行した例で直腸膣瘻やAPC後潰瘍の遷延例を認めた.無再発例は89%,無再発期間は平均18±9.9カ月であった.出血性放射線性腸炎に対するAPC治療は有用であるが,粘膜の脆弱性が高度で広範囲の症例は,瘻孔形成や潰瘍治癒が遅延することがあるため,APCの設定値と焼灼方法は,より低侵襲設定での短時間焼灼を推奨する.
  • 新井 由季, 玉田 喜一, 佐藤 幸浩, 和田 伸一, 田野 茂夫, 花塚 和伸, 大橋 明, 菅野 健太郎
    2005 年 102 巻 11 号 p. 1412-1416
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/04
    ジャーナル フリー
    胆嚢収縮能超音波検査において一般に用いられている卵黄に代わりカロリーメイト缶®を用い,その有用性について検討した.健常人ボランテイア27名を対象とし,腹部超音波検査にて空腹時胆嚢容積をellipsoid法にて求めた.カロリーメイト缶®飲用後,30分後と60分後に胆嚢容積を測定し,胆嚢収縮率(EF)を求めた.空腹時胆嚢容積は平均13.5 ml, EFは平均で30分後53%,60分後62%と充分な胆嚢収縮が見られ,カロリーメイト缶®は胆嚢収縮剤として有用と考えられた.また,空腹時胆嚢容積が4 mlに満たない例では前日の脂肪食の影響を除くために,禁食を厳重にして再検する必要があると考えられた.
症例報告
TTT(Train the Trainers)
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