日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
107 巻 , 7 号
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総説
  • 海野 倫明
    2010 年 107 巻 7 号 p. 1081-1088
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    胆管癌は難治癌の1つであるが,近年治療成績の向上が見られている癌の1つでもある.これはMD-CTに代表される新しいmodality導入による診断能向上が大きく寄与している.さらに術前胆道ドレナージ法もPTBDから内視鏡的ドレナージ法に変化し,肝不全回避策として術前門脈塞栓術が普及したことも一因である.外科切除術も肝門部・上部胆管癌に対する尾状葉切除をともなう肝切除が標準術式となり,治癒切除率が高くなった結果,治療成績が向上している.その一方で,中下部胆管癌に対しては膵頭十二指腸切除術が標準術式であるが,その治療成績は以前と比較すると大きな向上は見られない.治癒切除が行われた症例の成績もいまだ満足すべきものではなく,胆管癌の治療成績向上のためには新たなブレークスルーが求められている.
今月のテーマ:胆管癌の進展度診断と治療戦略
  • 真口 宏介, 小山内 学, 潟沼 朗生, 高橋 邦幸
    2010 年 107 巻 7 号 p. 1089-1095
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    胆管癌に対する外科手術手技の向上と門脈塞栓術の開発・普及により,定型的な肝葉切除術が比較的安全に施行可能となった.このことにより,手術適応の判定,術式決定に必要な進展度診断,術前の胆道ドレナージ法が変化してきた.また,画像診断も発展し,特にMDCTなどの低侵襲性画像診断機器の進歩が目覚しく,多数の検査を必要とした診断体系も低侵襲と効率性の観点から変化してきている.胆管癌の術前に必要な画像情報は,遠隔転移の判定と局所進展であり,後者には垂直方向と胆管癌に特有の水平方向進展があり,術式決定に際しては水平方向進展度診断が重要となる.水平方向進展は癌の肉眼型と占拠部位によって異なり,これに対応する診断が求められる.すなわち,肝門部・上部胆管癌では壁内進展が多く,胆管分離限界点を指標とした胆管像の硬化狭窄像の読影がポイントとなり,中・下部胆管癌では表層進展が多く,胆道鏡,生検がポイントとなる.ただし,胆管癌に対しては適切な胆道ドレナージを行いながら速やかに精査を進める必要があり,現状ではENBDを中心とした内視鏡的アプローチが第一選択に位置する.
  • 近藤 哲
    2010 年 107 巻 7 号 p. 1096-1101
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    肝門部胆管癌に対する手術術式は,約30年前黎明期の胆管ボーリング手術,約20年前の肝区域切除・尾状葉切除の導入,約10年前の肝葉切除による標準化,最近の癌手術の原点に戻ったen bloc手術と進化を遂げてきている.それにともない手術成績も向上してきており,胆管癌全体の5年生存率は胆道癌全国登録調査2002年報告では26%であったのが,2009年報告では33%にまで改善されている.国際的にみても日本の専門施設では手術死亡率が5%未満であるのに対し,残念ながら欧米からの報告では5~10%以上の死亡率が依然として続いている.胆道ドレナージ,門脈塞栓術などのきめ細やかな周術期管理の有用性を高いレベルのエビデンスとして発信することがのぞまれる.
  • 古瀬 純司, 鈴木 英一郎, 廣川 智, 北村 浩, 長島 文夫
    2010 年 107 巻 7 号 p. 1102-1108
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    胆管癌に対する化学療法は,通常,胆道癌の一部として胆嚢癌や乳頭部癌と同様の方法で行われ,わが国ではgemcitabineとS-1が広く用いられている.最近,gemcitabine単独治療とgemcitabine+cisplatin併用療法(GC療法)によるランダム化比較試験が行われ,GC療法が胆道癌に対する標準治療と位置づけられている.さらにbevacizumabやcetuximabなどの分子標的薬を用いて上乗せ効果を狙った試みも行われている.一方,gemcitabine+S-1併用療法でも良好な成績が報告されつつあり,ランダム化比較試験による検証が進められている.胆道癌の術後補助療法については現在まで標準的治療法は確立していない.わが国ではgemcitabineあるいはS-1を中心にいくつかの臨床試験が行われており,今後標準術後補助療法の確立が期待される.
座談会:胆管癌の進展度診断と治療戦略
原著
  • 平峯 靖也, 今村 也寸志, 宇都 浩文, 馬場 芳郎, 樋脇 卓也, 庄 幸彦, 田原 憲治, 坪内 博仁
    2010 年 107 巻 7 号 p. 1127-1138
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    遠隔転移のない高度進行肝細胞癌に対して肝動脈化学療法(TAI)を施行した62例と,無治療症例18例を比較し,TAIは有意な生存期間の延長を認め,多変量解析では最も重要な予後規定因子であった.さらに,動注レジメン別にA群:3剤(Cisplatin,Mitomycin-C,Epirubicin)one shot肝動注+low dose FP併用,B群:low dose FP単独,C群:3剤one shot肝動注単独の治療法で比較検討した.3群間の比較ではA群はBもしくはC群よりも生存率は高く,奏効率は41.6%,CR(著効)率20.8%であった.また,動注レジメン(A群)は有意な予後規定因子であった.以上より,高度進行肝細胞癌に対してTAIは有効な治療法であり,one shot肝動注とlow dose FP療法を併用することで進行肝細胞癌の予後を改善する可能性が示唆された.
症例報告
  • 井上 隆, 成清 道博, 庄 雅之, 上野 正闘, 榎本 泰典, 野々村 昭孝, 中島 祥介
    2010 年 107 巻 7 号 p. 1139-1145
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    68歳男性.平成14年9月胃癌にて腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行した.術後11カ月の内視鏡検査で,平坦陥凹型病変を指摘された.3カ月後,腫瘍は急速に増大,残胃内分泌細胞癌と診断した.平成15年12月残胃全摘術を施行した.術後補助化学療法施行も,術後13カ月で多発肝転移,リンパ節再発を認めた.化学療法を変更したが,術後18カ月で死亡した.残胃に発生した内分泌細胞癌の1切除例を経験したので報告する.
  • 新井 修, 竹内 健, 飯田 貴之, 渡邊 文利, 阿部 仁郎, 中村 眞一, 花井 洋行
    2010 年 107 巻 7 号 p. 1146-1150
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    症例は30歳男性.潰瘍性大腸炎(遠位型)発症後,ステロイドで寛解導入され,免疫調節剤にて寛解維持されていた.発症約2年後の下部消化管内視鏡検査にて上行結腸から肝彎曲部にかけて弾性軟の半球状の多発性粘膜下腫瘍様隆起を認め,直腸にはびらんと血管透見性消失を認めた.内視鏡像およびCT検査より潰瘍性大腸炎に合併した腸管嚢胞状気腫症と診断した.潰瘍性大腸炎の寛解期に併発した腸管嚢胞状気腫症の1例を経験したので報告する.
  • 野中 健太郎, 車 清悟, 伊東 通裕, 野中 一彦, 山中 若樹
    2010 年 107 巻 7 号 p. 1151-1158
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    症例は45歳女性.腰痛,下血の精査で播種性骨髄癌症をともなう直腸低分化型腺癌と診断された.Disseminated intravascular coagulation syndrome(以下DIC)を併発しており,DIC治療と並行しmFOLFOX-6の投与を2コース施行した.DICの改善を確認しBevacizumabを追加併用した.治療前CEA 314.4ng/mlであったが計6コース施行後CEA 4.6ng/mlまで低下した.計10コース施行後の下部内視鏡検査で原発巣の消失を認めた.計5コース施行後に外来通院が可能となり,発症後約7カ月時点で外来治療中である.
  • 橋本 章, 小田 裕靖, 稲垣 悠二, 井口 正士, 脇田 喜弘, 清水 敦哉, 村田 泰洋, 田中 穣, 長沼 達史, 中野 洋
    2010 年 107 巻 7 号 p. 1159-1166
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    92歳,女性.脳梗塞にて入院となった.軽度の発熱あるも腹痛なし.採血にて貧血を指摘された.腹部超音波検査にて小腸に不均一な低エコー腫瘤とともに門脈内にガスを認めた.CTでは左外腸骨動脈近傍に不規則に造影される腫瘤を認めた.手術では空腸に中央に潰瘍形成をともなう5cm大の腫瘍を認め,空腸部分切除を施行した.組織所見,免疫染色より小腸原発平滑筋肉腫と診断した.まれな症例と考え報告する.
  • 名和 誉敏, 望月 圭, 藥師神 崇行, 濱野 美奈, 糸瀬 一陽, 柄川 悟志, 西田 勉, 筒井 秀作, 平松 直樹, 考藤 達哉, 竹 ...
    2010 年 107 巻 7 号 p. 1167-1174
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代,男性.B型肝硬変のため当科通院中に肝S8に径2.2cmの肝細胞癌を認めたため,超音波ガイド下にラジオ波焼灼術(RFA)を施行した.術後20カ月に右季肋部痛と呼吸困難感が出現し,当院に救急搬送された.腹部CTにて結腸の右胸腔内への逸脱を認め横隔膜ヘルニアと診断し,緊急手術が施行された.術中所見にて,右横隔膜頂部に筋膜欠損部を認め,逸脱腸管は壊死・穿孔をきたしていた.このため拡大右半結腸切除術,大網切除術ならびに回腸瘻造設術が施行された.また本症例は右半結腸の後腹膜への固定が緩い,Chilaiditi症候群を有していた.本症例においてCT所見を経時的に検討すると,RFA施行後に肝右葉の萎縮・変形をきたしており,横隔膜と肝臓の空隙に腸管が入り込みやすい状態となっていたことが,ヘルニア発症の誘因と考えられた.RFAの遅発性合併症として横隔膜ヘルニアがあることを念頭に置いて,経過観察することが必要と思われた.
  • 松居 剛志, 辻 邦彦, 一箭 珠貴, 駒場 福雄, 姜 貞憲, 児玉 芳尚, 桜井 康雄, 加藤 新, 青木 敬則, 志田 勇人, 三井 ...
    2010 年 107 巻 7 号 p. 1175-1183
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.腹部違和感を主訴に当院を受診し,腹部超音波検査で肝右葉に9cm大の巨大腫瘤を認め,精査加療目的に入院となった.基盤肝病変は正常肝で,全身検索ならびに各種画像診断の結果,他臓器に原発巣はないことから,肝右葉の単発の肝内胆管癌と診断し肝右葉切除術を施行した.病理学的には腫瘍の大部分が紡錘形腫瘍細胞で占められ,免疫染色も併せて,肝原発のSarcomatoid carcinomaと最終診断した.2年5カ月前に他疾患のために施行された腹部CTでは同部位に約10mm大の低吸収域として描出されており,腫瘍容積倍加時間は約95日であった.
  • 濱田 康彦, 井上 宏之, 野田 知宏, 青木 雅俊, 葛原 正樹, 小坂 良, 田中 匡介, 井本 一郎, 伊佐地 秀司, 竹井 謙之
    2010 年 107 巻 7 号 p. 1184-1191
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.肝門部胆管狭窄による閉塞性黄疸の精査加療目的で当院へ入院となった.血液検査では高IgG血症,高IgG4血症を認めた.胆管造影では肝門部より上部胆管にかけ狭小化像を,膵管造影では馬尾状の腹側膵管を認め膵管癒合不全と診断した.胆管生検および超音波内視鏡下による肝門部リンパ節生検で悪性所見を認めず,IgG4関連硬化性胆管炎と診断した.プレドニゾロンにて加療したところ胆管狭窄像は改善した.
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