日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
106 巻, 7 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
総説
  • 松本 誉之
    2009 年 106 巻 7 号 p. 969-977
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎は病因不明の難治性疾患で再燃と寛解を繰り返す.一般に発症時に重症や全大腸に病変のある症例をのぞくと長期経過とともに病勢が安定する症例が多い.一方で,ステロイド治療に抵抗したり依存したりする難治例では,経過にともない手術を必要とする症例や炎症性発癌への注意が必要なケースが多いとされる.難治例や重症例では免疫調節療法や白血球除去療法などの治療を要することが多いが,これらの治療後の長期経過で手術の回避が可能かどうかは,まだ十分なデータがない.潰瘍性大腸炎にも応用が始まった生物学的製剤などにより粘膜治癒を得ることは長期予後改善に役立つ可能性が高いがなお検討が必要である.
今月のテーマ:潰瘍性大腸炎治療の新展開
  • 長沼 誠, 日比 紀文
    2009 年 106 巻 7 号 p. 978-988
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    近年重症潰瘍性大腸炎に対する治療法のガイドラインとして,エビデンスと専門医をコンセンサスが融合されたガイドラインが発表された.治療の中心は従来ステロイドであったが,近年血球成分除去吸着療法,シクロスポリン持続静注などにより緩解導入可能な症例が増えている.さらにタクロリムスやインフリキシマブなどの新規治療法の臨床試験が行われており,海外では病態に関与したサイトカイン,接着分子,T細胞をターゲットとした治療法が行われている.一方長期予後を改善するための緩解維持療法の開発は進んでいない.重症例では外科医や他の医療従事者との密な連携が重要であると考えられる.
  • 池内 浩基, 内野 基, 松岡 宏樹, 坂東 俊宏, 冨田 尚裕, 松本 誉之
    2009 年 106 巻 7 号 p. 989-995
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に対する術式は確立され術後の早期pouch機能率は98%と良好な結果である.また,長期予後も確定診断が変更にならなかった症例では術後20年の累積pouch機能率が92%と良好であるが,潰瘍性大腸炎からクローン病に確定診断が変更となった症例では,術後20年でpouch機能率が18%と極めて不良であった.Pouch機能が維持できなくなる要因は肛門周囲の瘻孔形成が最も多く,長期予後を左右する要因として,回腸嚢炎がある.病態の解明と慢性持続型や再燃緩解型の回腸嚢炎に対する治療法の確立が今後の検討課題である.Pouch機能が維持できなくなった症例に対する再手術の報告も見られるが,再手術後の排便機能は十分とはいえないのが現状である.
  • 小川 仁, 福島 浩平, 佐々木 巖
    2009 年 106 巻 7 号 p. 996-1002
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    回腸嚢炎(pouchitis)は,潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘·回腸嚢肛門(管)吻合術後に発症する回腸嚢粘膜の非特異的炎症である.発症頻度は欧米では60%に上るとされているが本邦では20%前後と考えられ,潰瘍性大腸炎術後の合併症のなかで最も頻度の高い長期合併症である.半数以上は術後2年以内に発症する.診断には問診と内視鏡検査が必須であり,可能なかぎり病理組織検査も加えるべきである.治療は抗菌剤内服が第一選択であり,大部分の症例に対して有効である.しかし一部の症例は短期間に再燃し,また抗菌剤治療に抵抗するものもある.これら難治性回腸嚢炎に対する治療法は確立しておらず,今後の研究課題である.
  • 渡邉 聡明
    2009 年 106 巻 7 号 p. 1003-1010
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎合併大腸癌の早期発見のために定期的に内視鏡検査を行うサーベイランスが重要とされている.しかし,サーベイランスの,行うべき対象,生検採取方法,生検組織の病理検査結果に基づく治療方針,などに関しては必ずしも統一された基準はなく問題点も存在する.特に,生検採取方法に関しては,step biopsyと,有所見部からのみ生検を行う狙撃生検のどちらが有用かは重要な問題であり,これを明らかにするために現在本邦で臨床試験が行われている.また,最近はサーベイランスの効率化を目指して拡大内視鏡,NBI,AFIなどを用いたサーベイランスや,遺伝子マーカーによる癌化ハイリスク例の選別なども検討されている.
座談会:潰瘍性大腸炎治療の新展開
症例報告
feedback
Top