犬に Heidenhain pouch を作成し, 膵管結紮を行なつた後, とくに膵酵素投与時と非投与時の食餌刺激による胃酸分泌, 血清ガストリン値, 血清グルカゴン値, 血清インスリン値の変動について検討した.
食餌刺激による酸分泌量は膵管結紮後1週より増加を示し, 4週で peak に達したのち, 漸減する傾向を示した. しかし, 2週以降では膵酵素投与時の酸分泌量は非投与時のそれに比して有意に抑制された(P<0.02). 血清ガストリン値は2週より上昇を示し, 以後6週まで上昇する傾向がみられ, 膵酵素投与の影響は認められなかつた. 血清グルカゴン値は膵管結紮後1週より上昇し, 膵酵素投与時では非投与時に比して有意に高値を示した(P<0.02). 血清インスリン値は膵管結紮後2週以降では低値を示した. IVGTTでは膵管結紮後, 耐糖能の明らかな低下がみられた. また, 膵管結紮後8週では膵は著明に硬化萎縮し, 胃には多発性びらんがみられたが, 潰瘍形成は認められなかつた. 以上の成績から, 膵機能障害時の胃酸分泌亢進には, 幽門洞のガストリンのほかに, 膵グルカゴン, 胃分泌抑制ホルモン (GIP) などが複雑に関与していることが推定された.
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