日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
103 巻, 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
総説
  • 乾 和郎
    2006 年 103 巻 5 号 p. 495-500
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/08
    ジャーナル フリー
    胆癌と胆管癌における早期診断と治療の現状を文献的に検討した.早期胆癌は集団検診での発見が23.0%から32%に増加し,術前診断率が69.7%から89.5%と改善した.早期胆管癌も同様に無黄疸で発見される症例が増加し,術前診断率が71.3%から81.3%とやや改善された.画像診断としてはMD-CTやMRIに加え,造影超音波検査,管腔内超音波検査などに目覚ましい進歩がみられている.日本における外科治療成績は欧米と比べ優れている.肝移植などまだ今後議論されなければならない問題もあり,診断·治療とも成績向上に向けてさらなる努力が必要である.
今月のテーマ;食生活と消化器癌
  • 志方 健太郎, 清原 裕, 飯田 三雄
    2006 年 103 巻 5 号 p. 501-507
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/08
    ジャーナル フリー
    食事因子が胃癌発症に与える影響について疫学研究の成績を中心に概説した.高食塩摂取は胃癌の危険因子として認識されている.久山町住民の追跡調査では,高食塩摂取が胃癌の有意な危険因子であり,この関係はHelicobacter pylori陽性で萎縮性胃炎を有する者で認められた.多くの疫学研究において野菜·果物の摂取は胃発癌を抑制することが示されているが,抗酸化ビタミンのサプリメントによる胃癌予防効果はほとんど実証されていない.緑茶による胃癌予防に関する疫学研究の成績は一致しておらず,今後の検討課題である.近年,栄養過多によって生じる肥満や糖尿病が胃癌発症の危険因子として注目されている.一方,アルコール摂取は胃癌の危険因子とはなりがたい.
  • 藤瀬 剛弘, 岩切 龍一, 藤本 一眞
    2006 年 103 巻 5 号 p. 508-514
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/08
    ジャーナル フリー
    大腸癌の発生において環境因子,とりわけ食生活は非常に重要な役割を果たしている。日本における食生活の変化は、油脂類·動物性食品の摂取増加と穀類の摂取減少が特徴である。食生活の欧米化にともない、大腸癌の罹患率、死亡率は顕著に増加している。肥満や肉類,アルコール,脂肪摂取,食物繊維,ビタミン·ミネラルなどさまざまな因子が大腸癌の発生や進展に関与しているとされている。しかし疫学的研究において一定の見解が得られないものや動物実験などでの結果との乖離などの問題がある。将来増加が予想される大腸癌において一次予防は非常に重要な課題であり,食生活との関連の検討は必須である。
原著
症例報告
  • 梶川 真樹, 近藤 建, 片岡 政人, 初野 剛, 木下 水信, 堀澤 増雅, 森谷 鈴子, 市原 周
    2006 年 103 巻 5 号 p. 523-528
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/08
    ジャーナル フリー
    65歳女性.心窩部痛,食欲低下,嘔吐を主訴に来院.腹部CTで十二指腸および膵頭部の腫瘤を疑われ入院.上部消化管内視鏡で十二指腸下行脚に,ほぼ全周性の腫瘍がみられ,生検で小細胞癌と診断.さらに免疫染色にてsynaptophysinが陽性で,内分泌細胞癌と診断.横行結腸部分切除をともなう幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行.術中腹腔洗浄細胞診は陽性,退院後早期に多発肝転移をきたし,悪性度の高い癌と思われた.
  • 赤坂 理, 岩瀬 滋, 金子 卓, 中西 美穂, 阿南 英明, 松枝 利恵, 中村 三郎
    2006 年 103 巻 5 号 p. 529-536
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/08
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性.全身痙攣を主訴に当院救急外来に搬送された.来院時は出血性ショック状態であった.全身状態が安定した後腹部血管造影検査,computed tomography during arterial portography(CTAP)を施行し,上腸間膜静脈を流入路,左卵巣静脈を流出路とする異常拡張血管を認めた.上部消化管内視鏡検査を施行して十二指腸水平部静脈瘤を確認した.経皮経肝門脈側副血行路塞栓術,内視鏡的cyanoacrylate局注療法を行い,異常血管は消失した.
  • 荒金 英樹, 藤井 秀樹, 楊 孝治, 盛田 篤広, 宮崎 守成, 森田 聖, 大川原 徹, 福光 眞二, 澤 美彦, 大川原 康夫
    2006 年 103 巻 5 号 p. 537-542
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性.Groove pancreatitisの診断のもとで保存的治療により,一旦軽快するが,半年後再燃を認めた.その後発見された胃癌の治療に合わせて迷走神経切除を施行,以来Groove pancreatitisの再燃を認めなくなった.本症例の経過はGroove pancreatitisの病因,治療に示唆を与えるものと考えられた.
  • 林 忠毅, 中村 利夫, 倉地 清隆, 浅井 陽介, 柏原 貴之, 中島 昭人, 鈴木 昌八, 今野 弘之
    2006 年 103 巻 5 号 p. 543-550
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/08
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.右下腹部に腫瘤を触知し近医を受診.右下腹部に鶏卵大の腫瘤を触知されたが大腸内視鏡検査では粘膜面に異常を認めず,腹部CT, MRIにて回盲部腸間膜側に腸管との連続を認めない約7cm大の楔状の腫瘤が認められた.回盲部腸間膜腫瘍の診断にて回盲部切除術を施行した.病理組織学的には悪性所見は認めず,炎症細胞浸潤と高度のfibrosisが認められ,退縮性腸間膜炎と診断された.
  • 成井 一隆, 池 秀之, 藤井 正一, 野尻 和典, 辰巳 健志, 山岸 茂, 齋藤 修治, 国崎 主税, 今田 敏夫, 野澤 昭典, 大木 ...
    2006 年 103 巻 5 号 p. 551-557
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/08
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.42歳時に子宮頸癌術後に放射線療法を受けた.72歳時の2004年1月下部消化管内視鏡で直腸Rsにcontact bleedingをともなう発赤を認めた.生検では高度異型をともなうadenomaと診断され経過観察としていたが,2004年12月同部に潰瘍性病変を認め,生検で中分化腺癌であったため,2005年1月直腸切除術を施行した.組織学的には腫瘍はss, n(-)であり,腫瘍中心部の中分化腺癌の周囲や放射線照射範囲内の非癌部にdysplasiaを認めた.放射線腸炎にともなうdysplasiaが放射線誘発大腸癌の発生に関与したと思われた1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
feedback
Top