日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
97 巻, 10 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 本郷 道夫, 菅原 隆
    2000 年 97 巻 10 号 p. 1225-1232
    発行日: 2000/10/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    逆流性食道炎は,下部食道に過剰な酸性胃内容物の逆流あるいは接触でおこる酸消化性のびらん・潰瘍性病変である.食道内pHモニタリングでは,健常者でも食後にわずかの,逆流性食道炎患者では食後に顕著な食道内酸逆流が観察され,夜間の逆流は日中ほどではない.食道内酸逆流防止機構として下部食道括約筋(LES)が重要な役割を果たすのは明らかであるが,酸逆流動態から考えると安静時のLES圧だけでは逆流防止機構を説明することが困難である.したがって,食道粘膜の病変ではあるものの,その病態の根底には逆流を誘発する要因,あるいは逆流内容物排除障害の要因など,胃食道運動機能障害に注目すべきことが明らかとなる.
  • 幕内 博康
    2000 年 97 巻 10 号 p. 1233-1242
    発行日: 2000/10/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    本邦でもBarrett食道やBarrett食道癌の報告例が増加している.Barrett食道の発生はGERから逆流性食道炎を経ると考えられるが,発生のための至適条件は.また,GERからの直接発生は.伸展速度,発生頻度は.Barrett食道の診断は以下に行うべきか,食道と胃の境界はどこか. Barrett食道のmalignant potential,Barrett食道癌のサーベイランスはいかに行うべきか, Barrett食道癌の治療方針はどうあるべきか,内視鏡的治療の現況と問題点は,などにつき述べた.今後増加すると思われるBarrett食道について疑問点を1つずつ解明していく努力が必要である.
  • 木下 芳一, 足立 経一, 河村 朗
    2000 年 97 巻 10 号 p. 1243-1251
    発行日: 2000/10/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    逆流性食道炎の分類と治療法について概説した.逆流性食道炎は,症状によってその診断が疑われ,内視鏡検査によって確定診断と重症度の分類が行われていることが多い疾患であり,多くの内視鏡分類が用いられてきた.これらの中で最近では重症度を判定し,予後を推定し,治療法の選択に有用な情報を提供しうるLos Angeles分類やその改良型が多く用いられている.逆流性食道炎の治療法には薬物療法が主力となるが,その中でも酸分泌抑制剤が主に用いられている.H2RAは夜間の酸分泌を強力に抑制するが,食後の酸分泌抑制力は弱く,PPIは日中の酸分泌の抑制は強力であるが,夜間はH2RAに比べてその作用は弱い.特にH. pylori感染陰性者ではPPIの夜間胃内pH上昇作用は,あまり強力ではない.逆流性食道炎のうち軽症のものは主に日中の食後に胃食道逆流がおこるが,gradeが高くなると日中に加えて夜間にも逆流が高頻度におこるようになる.また,gradeの高い逆流性食道炎は,H. pylori陰性者が多いことが明らかとなっているため,PPIのみでは夜間の胃内pHの低下が持続し,夜間酸逆流のため難治性となり,H2RAの追加投与が必要となる場合もある.
  • 吉田 寛, 鈴木 正徳, 海野 倫明, 松野 正紀, 小笠原 鉄郎, 山崎 日出雄
    2000 年 97 巻 10 号 p. 1252-1260
    発行日: 2000/10/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    肝動注癌化学療法によるdown sizingの後,肝切除術を施行した大腸癌肝転移5症例について治療効果を組織学的に検討した.原発巣はS状結腸2例,盲腸1例,下行結腸1例,直腸1例で,5-FU単独もしくはcisplatin,epirubicin,calcium folinate併用の動注療法が選択され,5-FUの総投与量は10~81gに達した.動注療法による腫瘍縮小率は76.7~87.5%でPRと判定されたが,固有肝動脈の閉塞や副作用の出現から肝切除術が選択された.術後経過は良好で17~61病日に退院し全例無再発生存中である,腫瘍は組織学的に著明な線維化に陥り一部に石灰化をともなうが,全例に明らかなviable cellの残存を認めた.動注療法によりPRを達成した場合においてもviableな癌組織が残存することが示され,積極的に肝切除術を併施することで,癌の進展制御をめざす戦略も大腸癌を原発とする転移性肝腫瘍の合理的な選択肢の1つと考えられた.
  • 長又 博之, 島居 明, 和泉 元喜, 穴見 美佳, 山下 伸子, 稲玉 英輔, 戸田 剛太郎
    2000 年 97 巻 10 号 p. 1261-1266
    発行日: 2000/10/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,男性.小腸クローン病にて経過観察中に胃内に多発するアフタ様病変,幽門狭窄を認めた.病理組織学的にもRobertらの報告するクローン病の胃病変の特徴と一致したため,本症の胃病変をクローン病と診断した.5-aminosalicylic acid(5-ASA)の胃病変への直接作用を期待してMesalazine錠を粉末化投与することにより,胃病変の改善を認めた.本法は,外科的治療に比べ侵襲が少なく,有効な治療法と考えられた.
  • 宮川 明子, 安岡 貴志, 坂部 秀明, 松田 博, 中島 滋美, 青山 英久, 九嶋 亮治, 藤山 佳秀, 馬場 忠雄
    2000 年 97 巻 10 号 p. 1267-1271
    発行日: 2000/10/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    広範な大腸狭窄を呈したまれな潰瘍性大腸炎症例を報告する.42歳女性,腸閉塞で入院.大腸内視鏡検査で肛門から10cm口側に多数の斑状発赤とS状結腸に全周性狭窄を,注腸造影でS状結腸から盲腸に短縮と狭小を認めた.結腸亜全摘術を施行,S状結腸から盲腸まで腸管は硬く肥厚し粘膜は萎縮していた.病理標本で粘膜に炎症細胞の浸潤や腺管再生像・萎縮を認め,緩解期潰瘍性大腸炎と診断した.狭窄の原因は病理学的検討から粘膜筋板と粘膜下層の強い線維化によるものであった.
  • 田中 剛史, 我山 秀孝, 大内 由雄, 一色 教幸, 山際 裕史
    2000 年 97 巻 10 号 p. 1272-1277
    発行日: 2000/10/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    hepatoid adenocarcinoma(肝様腺癌)は,その多くは胃において発生し,十二指腸における報告例はまれである.今回我々はAFP高値をともなった十二指腸肝様腺癌の1例を経験した.腫瘍は十二指腸球部原発と考えられ,組織学的にtrabecular patternを認め,抗AFP染色陽性であった.肝への遠隔転移は認めなかったが,膵および肝門部への浸潤を認め,急速に全身状態が悪化した一因と考えられた.
  • 金木 利通, 川嶋 彰, 林田 美江, 山口 伸二, 小笠原 仁, 津島 健司, 小泉 知展, 久保 恵嗣, 本田 孝行
    2000 年 97 巻 10 号 p. 1278-1282
    発行日: 2000/10/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    肺化膿症経過中,Methicillin resistant Staphylococcus aureus(MRSA)腸炎を合併しバンコマイシン内服でMRSA消失したが,腹痛持続し,両下肢に紫斑が出現.内視鏡検査で十二指腸にびらん,終末回腸に多発潰瘍,その他CRP高値,IgA高値,尿潜血陽性,などを認めた.皮膚生検でHenoch-Schönlein purpura(HSP)と診断しプレドニゾロン投与で,腹部症状と内視鏡所見は改善.HSP発症時には肺感染症は軽快しておりMRSA腸炎との関連が疑われた.
  • 中牟田 浩治, 城野 健児, 松永 圭一郎, 村田 育夫, 早川 友一郎, 村瀬 邦彦, 河野 茂
    2000 年 97 巻 10 号 p. 1283-1287
    発行日: 2000/10/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は,68歳男性で,大腸内視鏡検査翌日より血性下痢と腹痛が出現し,第2病日に入院した.入院時の注腸X線検査と,腹部CT検査,腹部超音波検査にて上行結腸と下行結腸に拇指圧痕像や壁肥厚像が認められた.以上より,大腸内視鏡検査が誘因と考えられた虚血性大腸炎と診断した.保存的治療にて速やかに症状は消失し,第14病日の内視鏡検査では,治癒していた.大腸内視鏡検査が誘因でskip lesionを呈する虚血性大腸炎は極めてまれであり報告した.
feedback
Top