日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
117 巻, 8 号
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今月のテーマ(総論):良性胆道狭窄に対する診断と治療―PSC,IgG4関連疾患を除く
今月のテーマ(総説):良性胆道狭窄に対する診断と治療―PSC,IgG4関連疾患を除く
  • 全 陽
    2020 年 117 巻 8 号 p. 667-673
    発行日: 2020/08/10
    公開日: 2020/08/10
    ジャーナル フリー

    良性胆道狭窄をきたす病態は多様で,その一部は特徴的な組織像を呈する.原発性硬化性胆管炎は古くから認識されている狭窄性胆道病変である.IgG4硬化性胆管炎は2002年から認識が広がり,現在では外科的切除される症例は大幅に減ったと考えられる.それ以外の病態として濾胞性胆管炎,虚血性胆管炎,好酸球性胆管炎,黄色肉芽腫性胆管炎がある.しかし,多くの症例は切除しても特定の診断がつかず非特異的な胆管炎といわざるを得ない.胆管狭窄の診断に,今後は遺伝子診断が用いられる可能性が高く,その診断プロセスの変化が良性胆道狭窄で外科的切除される症例をどの程度減少させるのか興味が持たれる.

  • 植木 敏晴, 丸尾 達
    2020 年 117 巻 8 号 p. 674-678
    発行日: 2020/08/10
    公開日: 2020/08/10
    ジャーナル フリー

    悪性との鑑別が問題となる良性胆道狭窄として,さまざまな病態・疾患がある.悪性診断のつかない胆道狭窄に対して胆道内視鏡が用いられている.胆道内視鏡には内視鏡的逆行性胆管造影(ERC),超音波内視鏡(EUS),管腔内超音波(IDUS),経口胆道鏡(POCS),経皮経肝胆道鏡(PTCS)がある.それらの画像検査に加えて,病理学的診断のためにERC,EUS,POCSやPTCS下に,あるいはEUS-FNAで生検や細胞診がなされているが,良悪性の鑑別に苦慮する症例を経験する.悪性診断のつかない胆道狭窄の診断には,胆道内視鏡所見と病理所見を加味して行い,今後の方針を決定すべきである.

  • 梛野 正人, 江畑 智希, 大塚 新平
    2020 年 117 巻 8 号 p. 679-688
    発行日: 2020/08/10
    公開日: 2020/08/10
    ジャーナル フリー

    肝門部胆管狭窄をおこす病態の大部分は癌であるが,一部良性の病変も含まれる.両者の鑑別は難しく,時に良性病変が癌として切除されるのは珍しいことではない.2001~2016年の16年間に当科で肝門部領域胆管癌の診断で切除を行った707例中,22例(3.1%)が良性病変であった.この22例に手術関連死亡はなく,長期予後も良好であった.画像診断で癌が否定できない場合,組織学的に癌が証明されなくとも肝機能および全身状態に問題がなければ癌として手術を選択することは十分許容される.

  • 高屋敷 吏, 古川 勝規, 大塚 将之
    2020 年 117 巻 8 号 p. 689-694
    発行日: 2020/08/10
    公開日: 2020/08/10
    ジャーナル フリー

    PSC,IgG4-SCを除いた非特異的硬化性胆管炎は,先天性,結石,感染,手術損傷,薬物,虚血などを契機とするとされ,濾胞性胆管炎や好酸球性胆管炎などは,病理学的に胆管壁でのリンパ濾胞形成や好酸球浸潤などの特徴的な所見を認める.術前診断として,生検,細胞診などが行われるが,その良悪性鑑別には限界がある.また,術後再燃の報告もあることから,良性疾患であっても術後十分な経過観察が必要である.確実な診断を得られる検査は現時点では存在せず,現行の診断手技の精度を高くすることが現実的な対応であり,悪性疾患との鑑別困難な病態を念頭に置いた十分な患者説明を行い,胆道疾患診療に臨むことが重要である.

原著
症例報告
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