日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
106 巻, 11 号
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総説
  • 岩切 龍一
    2009 年 106 巻 11 号 p. 1575-1581
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/05
    ジャーナル フリー
    本邦では,H.Pyloriによる潰瘍は将来減少していくと考えられているが,高齢人口の増加とともにNSAIDs起因性消化管障害は今後も増加すると考えられる.低用量アスピリンは血栓予防に効果があり,近年処方数が増加している.しかしアスピリンは低用量であっても消化管粘膜障害作用をきたす.本邦での研究でもNSAIDsおよび低用量アスピリンが消化管障害の危険因子であり増加傾向にあることが明らかとなってきた.COXの選択性や併存するH.Pylori感染,他の抗血栓薬·抗凝固薬の併用なども考慮し,日本人に適した予防·治療法を構築する必要がある.NSAIDs·低用量アスピリンによる下部消化管障害について病態の解明が待たれる.
今月のテーマ:消化器以外の診療科からみた低用量アスピリンの必要性と消化器障害
  • 掃本 誠治, 小川 久雄
    2009 年 106 巻 11 号 p. 1582-1588
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/05
    ジャーナル フリー
    冠動脈ステント挿入患者では,内視鏡生検などのため,不用意な抗血小板薬の中断によりステント血栓症のリスクがあり,循環器医へのコンサルトをすすめたい.アスピリンとチエノピリジン系の二剤併用療法はステント挿入後数カ月間必須だが,アスピリン単独に比し消化管障害のリスクが増大する.二剤併用療法時に,米国ではPPIが推奨されているがクロピドグレルの血小板凝集能抑制効果を減弱させ,心血管イベントを増大させるリスクが報告されている.しかし,われわれのデータでは,PPIは二剤併用療法時の消化管障害発症を抑制し,併用によりチエノピリジン系の抗血小板効果をex vivoでは減弱させるものの臨床転帰には有意差を認めなかった.
  • 荒木 信一, 柏木 厚典
    2009 年 106 巻 11 号 p. 1589-1595
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/05
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者は,冠動脈疾患や脳血管障害などの動脈硬化性疾患を合併することが多く,また,糖尿病自体が動脈硬化疾患の重要な危険因子の1つである.そのため,動脈硬化疾患の発症を阻止するために,血糖·血圧·脂質異常などの包括的管理に加え,低用量アスピリンの投与が二次予防のみならず一次予防に対して多くのガイドラインで推奨されている.しかしながら,低用量アスピリンの一次予防効果に関しては,そのエビデンスが十分とはいえず,最近の臨床試験やメタ解析の結果ではその有用性は示されていない.一次予防のための低用量アスピリン投与は,リスク評価と副作用を考慮し個々の症例でその適応を検討することが必要である.
  • 北園 孝成, 飯田 三雄
    2009 年 106 巻 11 号 p. 1596-1602
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/05
    ジャーナル フリー
    脳血管障害の中で一過性脳虚血発作と非心原性脳梗塞の多くの症例の発症予防に低用量アスピリンは使用されている.低用量アスピリンは虚血性脳血管障害の再発予防に有効であるばかりでなく,脳梗塞急性期の治療薬としても汎用されている.一方,消化性潰瘍を中心とした消化器障害が問題となっているが,その頻度についての正確なデータはなく,また,予防法についてもコンセンサスが得られていない.新たなエビデンスをもとに低用量アスピリンの有効性と安全性を勘案した治療戦略の構築が望まれる.
原著
  • 尹 錦鉉, 小田 一郎, 鈴木 晴久, 後藤田 卓志, 下田 忠和, 斉藤 大三
    2009 年 106 巻 11 号 p. 1603-1609
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/05
    ジャーナル フリー
    胃癌の治療方針決定には正確な深達度診断が要求される.深達度診断の今後の検討課題を明らかにするために,2001年から2003年に当院で外科切除あるいは内視鏡切除された単発胃癌1846例を対象に,通常内視鏡による深達度診断正診率および肉眼型,ULの有無,部位,腫瘍径,組織型別の早期癌誤診例の検討を行った.早期癌,進行癌の正診率は95%,86%,早期癌1258例のM,SMの正診率は85%,46%であった.早期癌誤診例はII a+II c型,UL+,21 mm以上,未分化型でそれぞれ他の因子に比し有意に高率であった.胃癌の深達度診断は,特にSMの正診率が低く,今後さらなる診断精度の向上が望まれる.
症例報告
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