日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
75 巻, 5 号
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  • 特に漿膜側, 粘膜側焼灼の対比
    辻 薫
    1978 年 75 巻 5 号 p. 607-620
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    胃潰瘍の成因究明を目的として, ラット胃の漿膜面及び粘膜面に, 同温度同時間の焼灼を加えてその肉眼的, 組織学的, また微小循環について両群を経時的に比較検討した. 漿膜焼灼群は最初に固有筋層の血行杜絶, 次に粘膜筋板直上の横走りの血管の血行杜絶, 粘膜筋板の変化, そして粘膜の上行柵状血管の血行杜絶がおこり, 組織障害が起つて1日目以後Ul-II以上の潰瘍が100%形成される. 粘膜焼灼群では粘膜上行柵状血管の血行杜絶で始まり, 粘膜筋板直上の血管には血行杜絶はなく, 粘膜筋板も脱落せず16.7%にのみUl-II以上の潰瘍がみられた. この事より粘膜筋板及びその直上の横走りの血管叢が潰瘍成立に重要な役割を演じているものと考える.
  • M蛋白成立の背景に関する考察
    山口 希, 川井 啓市, 藤山 佳秀
    1978 年 75 巻 5 号 p. 621-627
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    骨髄腫や原発性マクログロブリン血症にみられるM蛋白は B cell 腫瘍由来の単クローン性免疫グロブリンである. M蛋白はそのほかに癌, 炎症性疾患, ときには健常人血清中にもしばしば検出される. M蛋白と骨髄の plasmocytosis が癌患者において観察されることは稀なことではなく Isobe らは806例のM蛋白血症を分析し128例に non-reticular neoplasm の合併を認めており, その筆頭はS状結腸直腸癌が, ついで前立腺癌, 乳癌が占めていたと報告している. 著者らはM蛋白と癌の合併51例のうち胃癌16例を経験したので組織学的分析の十分な胃癌例についてM蛋白成立の背景に関する考察を, 癌周辺にみられる局所免疫反応の立場から述べた.
  • 宮上 寛之
    1978 年 75 巻 5 号 p. 628-638
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    十二指腸潰瘍に対して行われるSV+Pを評価するために術前と術後に胃液酸度, 血清ガストリンの測定ならびに幽門洞 G cell の電顕観察を行つた.術後のMAOは術前に比べていずれも有意に減少した. 空腹時血清ガストリンならびに肉汁エキスおよびインスリン負荷後のIGRは術後で著明に増加した. G cell は術後に機能亢進像と G cell hyperplasia を呈した. また, denervated G cell は肉汁エキスおよびインスリンに反応することが分つた.したがつて, SV+P後には G cell の機能亢進と G cell hyperplasia により高ガストリン血症を呈するので, 手術に際しては, 壁細胞領域の完全迷切が要求される.
  • 河村 奨, 青山 栄, 飯田 洋三, 浜田 義之, 富士 匡, 清水 道彦, 小田原 満, 榊 信広, 平田 牧三, 渡辺 正俊, 有山 重 ...
    1978 年 75 巻 5 号 p. 639-649
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    われわれは今回, 胃壁動脈硬化と各種胃疾患•胃粘膜の萎縮性変化との関係について組織学的検討を行つたので報告する. 研究材料は山大で手術された60歳以上の切除胃で, 無病変胃14例, 胃潰瘍16例, 十二指腸潰瘍12例, 陥凹性早期癌16例, 隆起性早期癌13例, 計71例で各疾患群で平均年齢に殆ど差がなかつた. これ等の切除胃を小弯•前壁•後壁で縦軸にそつて切り出し, 平均1切除胃から9枚の標本を作成し, H•E染色と Weigert 弾力センイ染色を行い, 総数約1200枚の標本を作製し検討を行つた. 胃壁動脈硬化の判定は, 出口の分類を参照して独自のものを使用した. 粘膜の萎縮性変化については, 平福の分類を採用した, 各要素の変化を3段階の指数で表現した. その他剖検によつた無病変胃壁動脈硬化と Gore の肉眼的分類を参考にした大動脈硬化度との関係を対比した. また術前検査から全身動脈硬化度を20症例につき調査し, 胃壁動脈硬化とも比較検討を行つた. 以上の検討事項から次のような結果を得た.
    1) 胃壁動脈硬化度は, 胃潰瘍において高度であり, 早期胃癌で軽度であつた.
    2) 胃壁動脈硬化は, 大動脈硬化と相関がうかがえた.
    3) 胃壁動脈硬化と, 全身性の臨床的動脈硬化との間には, 密接な相関は見出せなかつた.
    4) 粘膜上皮の変化は, 胃壁動脈硬化の程度には余り相関がなく, むしろ疾患との関係が濃厚のようであつた.
    5) 胃壁動脈硬化度と胃底腺萎縮との間に, 相関が推定された.
  • 第5報 問診による大腸癌の早期診断の可能性について
    多田 正大, 林 恭平, 三崎 文夫, 奥田 宗久, 島本 和彦, 木下 俊昭, 川崎 栄明, 谷沢 義弘, 白木 東洋彦, 川井 啓市
    1978 年 75 巻 5 号 p. 650-655
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    大腸疾患のスクリーニング法の1つとして, 問診は重要なステップである. 304人の年齢と25項目の問診事項に対する回答を数量化理論を用いた統計処理によつて分析した結果, 大腸癌は93%の判別適中率で健常者と鑑別できた. しかしポリープと健常者を鑑別することはできなかつた. 大腸癌を早期に発見するためには, ポリープの発見に努めることが重要であろうが, 問診ではポリープ, 早期癌のスクリーニングは不可能であり, 愁訴の有無にかかわらず, 積極的にX線, 内視鏡検査による疾患の見つけ出しが必要と思われる.
  • 西岡 幹夫, 原田 俊則, 菅 大三, 福本 陽平, 児玉 隆浩, 竹本 忠良
    1978 年 75 巻 5 号 p. 656-663
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    慢性肝疾患の成立や進展と宿主の免疫異常との関連性を明らかにするため, 慢性肝疾患患者の細胞性免疫機能について検索した.
    慢性肝疾患, とくに慢性活動性肝炎患者には, ツベルクリンや phytohemagglutinin (PHA) に対する遅延型皮膚反応の低下, PHA刺激による末梢血リンパ球の芽球化率の低下, 末梢血の羊赤血球ロゼット形成細胞 (T細胞) の減少, T細胞やB細胞などのマーカーを持たない Null 細胞の末梢血中への増加, さらにT細胞特異障害性自己抗体の末梢血への出現が認められた. このような免疫異常は肝疾患の慢性化と関連性のあることを推定せしめる. 末梢血のPHA芽球化リンパ球数の低下は, 肝疾患の重症度と関連性があつた.
    16例の慢性肝疾患患者の肝生検組織について, T細胞やB細胞を抗ヒト胸腺細胞抗体や抗ヒト免疫グロブリン抗体によつて蛍光抗体法を用いて検索した. 肝組織や浸潤リンパ球様細胞には, T細胞は意外と少なく, B細胞や Null 細胞が多い. 従つて, 本症の成立や進展には, 抗体分子のFC領域に対するレセプターをもつ Killer 細胞も重要な意義をもつことが推定される.
  • 第3報 アルギニン負荷に対する血中グルカゴンならびにインスリン反応について
    小笠原 徹也, 鬼原 彰
    1978 年 75 巻 5 号 p. 664-673
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    肝疾患におけるアルギニン (Arg) 負荷時の膵内分泌機能を病態別に検討した. その結果以下の知見を得た. (1) 血漿グルカゴン(IRG)は種々の肝病態で共通的に対照群よりも高値を示したが, 最高値は肝硬変症のさいに, また急性肝炎よりも慢性肝炎でより高反応を呈した. (2) インスリン(IRI)も同様に肝疾患群でArg負荷後に高反応を示した. しかし急性肝炎で最も高反応を示し, 慢性肝炎では肝硬変症よりも高い反応を示した. (3) したがつてこれをIRI(I)/IRG(G)のモル比でみると, 急性肝炎は対照群より上昇し, 慢性肝炎では低下, 肝硬変症で最も低値を示した. (4) IRGは活動型慢性肝炎が非活動型に比べて, 非代償型肝硬変症は代償型に比べてそれぞれ有意の高反応を示し, I/Gモル比はいずれも前者で低下を認めた.
    以上よりArg刺激に対するIRG, IRIおよびI/Gモル比の変化は病態によつて異なる態度を示し, これは障害肝細胞の機能•病態と密接な関連性をもつことが推測された.
  • 特に胆嚢粘膜の十二指腸化について
    松峯 敬夫, 久保田 芳郎, 岩崎 甫, 山岡 郁雄, 佐々木 仁也, 青木 幹雄
    1978 年 75 巻 5 号 p. 674-685
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    手術により別除された356例の慢性胆嚢炎標本について, 異所性粘膜組織の組織学的ならびに組織化学的検索を行つた. その結果, 234例 (65.7%) に粘液腺 (偽幽門腺), 97例 (27.2%) に杯細胞, 41例 (11.5%) に腸クローム親和細胞, 4例 (1.1%) に Paneth 細胞が見出された. また稀れに, 粘液腺の表層側に胃型上皮が, 杯細胞と共に腸型吸収上皮が観察された. これらはいずれも再生分化異常 (間接化生) に由来することが明らかであつた. おそらく胆嚢粘膜は, 炎症に続く再生機転を介し, 次第に十二指腸に似た形態に推移 (十二指腸化 duodenalization, 十二指腸化生 duodenal metaplasia) して行くものと理解される.
  • (II) 膵疾患ならびに各種疾患者における血清リパーゼ
    森下 玲児, 内野 治人
    1978 年 75 巻 5 号 p. 686-697
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    膵疾患の鑑別診断のため最近開発された合成基質BALBによる比色定量法によつて, 159名の健常者男女ならびに各種疾患患者173例で, 血清リパーゼ値を測定した. 正常血清リパーゼ値は74.61±34.12BALB単位で男女差なく, 再現性に優れ, またリパーゼは凍結融解に対し安定であつた. 膵疾患確診例では血清リパーゼ値は高値を示し, 診断的価値が高かつた. 膵全摘例では低値であつた. 肝•胆道系疾患29例のうち11例で高値がみられたが, これらの患者は何らかの膵障害の合併が推定された. 腹部手術患者のいくらかに, 一過性の高リパーゼ血症がみられ, アミラーゼと異なり速やかに正常化した. その機序として膵への侵襲が考えられた. 急性耳下腺炎では全例高アミラーゼ血症を示したが, リパーゼは正常であつた. 腎不全のため透析治療中の20症例のうち16例と, 慢性腎炎5例の全てに血清リパーゼの異常高値が認められたが, その機序に関しては現在のところ不明である.
  • 豚膵 elastase の radioimmunoassay
    中嶋 康之, 斉藤 洋一, 能登 陞, 松野 正紀, 西里 弘二
    1978 年 75 巻 5 号 p. 698-706
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    従来問題の残されていた elastase の血中濃度測定法を radioimmunoassay で検討した. 豚膵 elastase を抗原として, 家兎を感作して抗血清を得た. elastase のヨード化は131I(or 125I) を用いてクロラミンT法により標識し, そのspecific activity は200~300mci/mg であつた. BF分難は2抗体法でおこなつた. 通常の assay の方法では満足すべき成績は得られなかつたが, セリン酵素阻害剤である diisopropyl fluorophosphate (DFP) を用いる事により, 血清中の inhibitor (α1-ATとα2-M) の影響を除外でき, 満足すべき結果が得られた. すなわち標準曲線と豚血清希釈曲線は統計学的に有意の相関を示し, 精度および回収率も満足すべき結果が得られ, Trypsin や Chymosrypsin との交叉も0.001%以下であつた. この assay 系の最小感度は5ng/mlで, 通常の豚血清中の elastase 濃度は70~100ng/mlであつた.
  • 実験的豚急性出血性膵炎時の immunoreactive elastase の変動
    中嶋 康之, 斉藤 洋一, 能登 陞, 松野 正紀, 西里 弘二
    1978 年 75 巻 5 号 p. 707-713
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    子豚を用いて急性出血性膵炎を作成して, elastase の分泌動態, 役割について検討した. 膵炎の作成は主膵管に自家感染胆汁 (0.5ml/kg) を高圧および100cmH2Oの圧で注入し, 末梢血, 門脈血胸管リンパ液を経時的に採取した. いずれの部位でも immunoreactive elastase の前値は90ng/ml前後であつたが, 胆汁注入後15分より有意に上昇し, 胸管リンパ液で末梢, 門脈血より高値を示した. また膵組織の elastase 含有量を膵炎前後で比較してみると, 膵炎膵では Total および Free elastase とも有意に減少した. また腹水中にも immunoreactive elastase は規に出現し, immunoreactive elastase の変動は amylase のそれと類似しており, 膵炎の重症度判定をおこなうことは困難と思われた.
  • 橋平 成章, 斎藤 振二, 佐伯 正彦, 西井 正, 竹田 喜信, 森 立輔, 若林 明
    1978 年 75 巻 5 号 p. 714-719
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    長期アルコール摂取ラットの膵外分泌の変化について検討するため, 水の代りに20%エタノールを8カ月にわたり経口投与した. ウレタン麻酔下, caerulein-secretin 刺激前後の純粋膵液を採取した. アルコールラットは対照ラットに比べて, 液量, 蛋白 アミラーゼ, 重炭酸塩, カルシウム排出量は刺激前後で低値を, カルシウム濃度では高い傾向をみたが, 蛋白, アミラーゼ濃度では変化がなかつた. 組織学的に, 膵管上皮の扁平化, 膵管の拡張, 時に膵管内に protein plug を認めたが, 腺房細胞の変化はみられなかつた.
  • とくに重症度判定を中心として
    中野 哲, 武田 功, 綿引 元, 早川 哲夫, 野田 愛司
    1978 年 75 巻 5 号 p. 720-730
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    剖検あるいは開腹により急性膵炎と確診された63例の retrospective な検討から, 急性膵炎の重症度判定の指標設定を試みた.
    入院後48時間以内に, ショック, 呼吸困難, 精神症状, 消化管出血等の一般臨床症状の出現や, 700U//dl1以上の血液 amylase 値 (Caraway 法), 50%以上のHt値, 130mg/dl以上の血糖値, 28mg/dl以上の尿素窒素値, 5.1mEq/l以上の血清K値, 3.8mEq/l以下の血清Ca値の臨床検査成績の出現に注目し, ショックがあれば, この異常臨床検査成績が2つ以上, ショック以外の臨床症状があれば, 少くとも4つ以上, 上記臨床症状がない場来は, 少くとも5つ以上のこれらの検査成績がえられた場合は重症と考えられる.
  • 正宗 研, 岩渕 仁寿, 斎藤 行世, 伊藤 正一郎, 渡部 茂, 高橋 恒男, 五味 朝男, 涌井 和夫, 後藤 由夫, 山形 敞一
    1978 年 75 巻 5 号 p. 731-737
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
  • その1例と文献的考察
    別府 眞琴, 左近 賢人, 藤本 憲一, 疋田 邦彦, 栗田 清, 平井 健清, 村井 紳浩, 谷口 積三, 北井 明, 進士 義剛, 土居 ...
    1978 年 75 巻 5 号 p. 738-745
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
  • 大熊 誠太郎, 小笠原 孟史, 川村 治雄, 加嶋 敬, 高橋 示人, 瀧野 辰郎, 服部 隆則
    1978 年 75 巻 5 号 p. 746-751
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
  • 福井 由紀子, 渡辺 誠, 武田 和久, 島田 宜浩, 戸部 和夫, 遠藤 浩, 長島 秀夫, 万波 徹也, 岡島 邦雄, 田中 早苗, 山 ...
    1978 年 75 巻 5 号 p. 752-759
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
  • 武田 功, 中野 哲, 北村 公男, 綿引 元, 竹中 正隆, 永井 賢司, 中神 一人, 蜂須賀 喜多男
    1978 年 75 巻 5 号 p. 760-763
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
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