肝癌に対する肝移植は, 癌病変を取り除くと同時にその背景にある原疾患に対する治療も行える理想的な治療法である. 欧米での脳死肝移植における適応としてはミラノ基準 (3cm 3個まで, 単発5cmまで) が広く受け入れられているが, 特定のドナーから特定のレシピエントに移植が行われる生体肝移植では, 欧米での脳死移植における臓器の有効利用を第一としたミラノ基準とは異なる適応基準が必要である. よってわが国における生体肝移植の適応基準は, 施設間に差があるものの脳死移植に比べて拡大される方向にあり, 腫瘍の数や径にかかわらず, 遠隔転移や血管浸潤のない場合を適応としている施設が多い. しかし一方で, 生体移植では健康人であるドナーにメスを入れる危険性を考慮すると, その適応の拡大にはおのずと制限が必要である. 現在多くの施設で症例が蓄積されつつあり, これらの詳細なる検討による適応基準の確立が待たれる所である.
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