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胃潰瘍のNatural Historyに関する臨床的ならびに実験的研究
大原 毅, 尾崎 徳, 藤間 弘行, 青野 義一, 鵜川 四郎
1981 年 78 巻 6 号 p.
1177-1184
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
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胃の急性病変がなぜ慢性化するのか,すなわち慢性胃潰瘍がどのようにして発生するのか,まだよくわかつてはいない.そこでわれわれは,臨床的にヒトの急性胃病変を内視鏡的に追跡し,さらに2種類の新しい実験胃潰瘍作成法を創案して,胃潰瘍のNatural historyを追求してみた.臨床的に集積した急性胃病変397コを3ヵ月から1年9ヵ月まで追跡した.急性胃病変のなかには,出血性びらん,Trence ulcer,前庭部対称性潰瘍が含まれている.発生部位は噴門部17コ(4.3%),胃体部123コ(31.0%),胃角部77コ(19.4%)前庭部180コ(45.3%)である.急性胃病変の臨床的経過は,大多数の急性胃病変はきわめて急速に治癒し,慢性開放性潰瘍とはならないが,その経過中,胃底腺•幽門腺境界部(腺境界部)の治癒が遷延したり,まれには再発することがわかつた.実験的には,実験Iとして,胃粘膜面から,場所•大きさ•深さの異なる欠損を作ると,Ul-Iは全く潰瘍化しないが,腺境界部における7×7mm以上のUI-IIの欠損は,100%慢性化した(最長540日).次に実験IIとしてカセイソーダを胃粘膜面に均等に作用させ,胃粘膜を脱落させたところ,腺境界部のみに多発または線状潰瘍(搬痕)として限局してくる傾向があり,他の胃粘膜には潰瘍はできなかつた.以上から,急性胃病変が慢性胃潰瘍となるためには,(1) ある程度以上の大きさ,(2) UI-II以上の深さ,(3) 腺境界部に発生する.の3条件が必要と思われる.
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磯野 晴一, 武田 鉄太郎, 甘 糟仁, 浅川 洋, 山田 章吾, 石岡 国春
1981 年 78 巻 6 号 p.
1185-1190
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
フリー
放射線治療を施行した胃癌患者74例を対象として,照射前後の生検および切除標本擦過塗抹標本の癌細胞の変化を検討した.照射により,塗抹標本上の壊死物質と好中球はいずれも増加し,癌細胞量は線量増加とほぼ平行して減少の傾向が認められた.癌細胞集団は小型化し,平面状に配列する傾向があつた.細胞質は膨化,空胞形成,染色性の変化が顕著であつた.細胞質の膨化は3,000rad未満の時点でほぼ全例に観察された.核の変化は,腫大,多核,濃染,淡染などが観察された.核の腫大は分化型癌でより著明であつた.
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馬場 都, 竜田 正晴, 奥田 茂, 田村 宏, 伊藤 忠雄
1981 年 78 巻 6 号 p.
1191-1197
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
フリー
交感神経末端の刺激伝達物質である微量のカテコールアミンを高速液体クロマトグラフィーを用い測定し得る方法を考案し,ガストリンによるラット胃酸分泌刺激時の胃液および胃組織内カテコールアミンの変動を測定した.テトラガストリンによる酸分泌刺激によりShayの方法により採取した胃液中へのノルアドレナリン分泌量および胃体部胃壁全層内のノルアドレナリン濃度は,基礎分泌時に比しそれぞれ42%,29%減少した(p<0.05).しかし,胃液アドレナリン分泌量には変動は認められなかつた.ノルアドレナリンは交感神経末端の主たる刺激伝達物質と考えられており,テトラガストリンによる酸分泌刺激時にはテトラガストリンが胃の交感神経系に何らかの影響をおよぼしていることが示唆された.
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消化性潰瘍の経過に伴う粘膜内immunoreactive gastrin量の変動とその意義
山田 直行, 熊田 博光, 福地 創太郎, 柳下 正樹, 紫芝 良昌, 山崎 ゆう子, 原 満
1981 年 78 巻 6 号 p.
1198-1208
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
フリー
胃粘膜内immunoreactive gastrin (IRG)量,G細胞数,空腹時血中ガストリン値を測定し,消化性潰瘍におけるガストリン分泌動:態について検討した.幽門洞粘膜内IRG量は,潰瘍の急性期では十二指腸潰瘍>胃角部潰瘍>胃体部潰瘍の順に高値を示した.一方G細胞数は,潰瘍の部位による差は認められなかった.また,十二指腸潰瘍と胃角部潰瘍では,同一症例において,急性期の粘膜内IRG量は,治癒期と比して有意の高値を示すとともに,急性期では,粘膜内IRG量と空腹時血中ガストリン値は正の相関を示した以上の結果から,十二指腸潰瘍と胃角部潰瘍の急性期には,G細胞の機能亢進状態があり,ガストリンが潰瘍発生の成因に関与している可能性が示唆された.
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大谷 理智子, 大河内 寿一, 東野 一彌, 伊藤 文雄
1981 年 78 巻 6 号 p.
1209-1215
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
フリー
同胞交配により,家族性に上行結腸癌を多発するWistar-Furth (WF)系ラットの自然発生腸癌アルカリホスファターゼ(癌AP)を,同系の発癌しなかったラットの結腸粘膜AP(非癌AP),さらにWF系の原系のWistar系正常ラット結腸粘膜AP(正常AP)と比較検討した.癌APの比活性は他の二者に比し約10倍高く,非癌APと正常APはほぼ等しかった.ザイモグラムでは,癌APは他の二者に比して易動度の遅いneuraminidase感受性の1本のバンドで,他の二者は易動度の速いneuraminidase抵抗性の2~3本のバンドを示した.他の酵素学的性質は非癌APと正常APとの間に有意差は認め難いが,癌APとこれら二者とは明瞭に異なり,発癌による酵素偏僑が示唆された.
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渡辺 勇四郎
1981 年 78 巻 6 号 p.
1216-1225
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
フリー
肝硬変の血小板減少の機序を明らかにしようと試みた.肝硬変の血小板減少の原因は骨髄における血小板生成障害と血小板寿命の短縮によることが明らかにされた.血小板寿命の短縮は血小板膜のシアロ糖蛋白の減少の結果,血小板が網内系で貧食され易くなることに帰因する.
肝硬変の血小板ではシアル酸の減少の他,ADPおよびリストセチンによる凝集能も低下し,さらに血小板膜蛋白,125 I結合膜表面蛋白および膜糖蛋白の異常も認められる.これらの諸点で肝硬変の血小板異常は同じく血小板減少を来すBernard-Soulier症候群のそれに良く類似していることが判明した.
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小林 衛, 嶋田 紘, 新明 紘一郎, 鬼頭 文彦, 阿部 哲男, 呉 宏幸, 土屋 周二
1981 年 78 巻 6 号 p.
1226-1231
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
フリー
閉塞性黄疸例では,ブドウ糖刺激によるいわゆるインシュリン初期反応はなかったが,グルカゴン刺激による初期反応はかなりみられ,ブドウ糖とグルカゴンのインシュリン刺激分泌作用機構が異なると推定された.次に閉塞性黄疸犬を用いて,両刺激による門脈血インシュリン動態とそのhePatic extractionを調べた.黄疸犬のブドウ糖刺激による門脈血と末梢静脈血のインシュリン初期反応はなかったが,グルカゴン刺激による門脈血インシュリン初期反応は対照犬より高く,末梢静脈血では逆に低かった.すなわち黄疸犬のグルカゴン刺激時のインシュリンhepatic extractionは亢進していることが示され,hepatotrophic factorとの関連性がうかがわれた.
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Endotoxinに対する胆汁酸の作用について
岩崎 正高
1981 年 78 巻 6 号 p.
1232-1240
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
フリー
各種胆汁酸溶液にEndotoxinを加え,Limulus Amoebocyte Lysate Testを行い,胆汁酸がPregelの凝固にいかなる阻害作用を与えるかを検討し,併せてその凝固阻害の機序についても推測を加えた.胆汁酸6種類(Deoxycholic Acid,Chenodeoxycholic Acid, Glycochenodeoxycholic Acid, Taurochenodeoxy-cholic Acid,Taurocholic Acid, Taurolithocholic Acidは,1%の濃度で,Endotoxinが1mg/mlもの高濃度でもPregelの凝固反応を完全に阻害した.この内Deoxycholic Acidは他の胆汁酸よりも凝固阻害作用が強く,この作用は106倍希釈することにより完全に消失した.またさらに,カブトガニと人間の凝固系を比較検討し,胆汁酸によるPregelの凝固阻害作用は,胆汁酸のEndotoxinへの活性低下作用により生じると推測した.
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その1,胆石症
柴田 久雄, 山田 伸夫, 幾世 橋篤, 小田切 研一, 岡部 治弥, 石井 勝己
1981 年 78 巻 6 号 p.
1241-1247
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
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胆石症を主とした肝胆道疾患に血清immunoreactive Cholylglyciue (CG) Sulfolithocholylglycine(S:LCG)の測定をRadioimmunoassay法を用いて行った.その結果正常人で CG 20.4±11.5ug/dl, SLCG 32.6±14.3μg/dl に対し非石灰化胆石症では CG 24.1±17.oμg/dl, SLOG 87.3±57.4μg/dl と sLCG の上昇が見られた.しかし石灰化胆石症では変化が見られなかった. Ursodeoxycholicacid (UDCA) の2週間投与によりSLOG は著しく上昇したが石灰化胆石症および UDCA 治療に抵抗する胆石症では上昇を示さなかった.以上の結果より血清CG, SLCGの測定は胆石症の診断,治療の方針決定に有用である.
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第二編 胆石症およびその関連疾患の研究
浦岡 正義
1981 年 78 巻 6 号 p.
1248-1257
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
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胆道内結石例における胆道系の運動機能異常を解明する目的で,胆道結石およびその関連疾患89例と健常例12例を対象に胆道シンチグラフィーを施行し,以下の結論を得た.1)胆道内結石は胆嚢,オッディ筋両者に重大な影響を及ぼしており,とくに胆嚢収縮異常が顕著であつた.2)胆嚢結石では結石が大きくなると,胆嚢,オッディ筋共トーヌスは亢進した.3)総胆管結石では,結石の増大,病悩期間の延長により胆管末端部狭窄を来たす傾向がみられた.4)胆嚢炎では急性期に胆嚢収縮不良,胆管末端部抵抗の増強がみられるが,慢性期にはこの影響も消失した.5)胆嚢とオッディ筋のトーヌスは,結石およびその関連疾患において平行する傾向がみられた.
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相沢 孝夫
1981 年 78 巻 6 号 p.
1258-1267
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
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慢性膵炎の成因における遺伝的素因の関与について検討する目的で,慢性アルコール性膵炎(CAP) 28例,慢性特発性膵炎(CIP)18例,正常対照120例を対象としてH: LA-A, B, C抗原をtypingし,その出現頻度を比較検討した.CAP例全体では検索したHLA抗原との間に強い相関はみられなかったが,40歳以上で発症した膵石(-)の症例では,HLIA-B7との間にx2=13.061,Pc<0.05と強い相関がみられた.CIPではHLA-B5との間にx2=10.666,Pc<0.05と.強い相関がみとめられ,B5の分析を行なうとHLA-BW51との間にx2=10.788,Pc<0.05と有意の相関がみられた.以上の成績より,CAPの特殊な症例およびCIPの発症にHLA抗原と関連する遺伝因子の関与が示唆された.
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第1編ribonuclease測定法と検体保存の影響および純粋膵液中の ribonucleaseの分離について
河合 公三
1981 年 78 巻 6 号 p.
1268-1274
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
フリー
Pancreozymin-secretin(PS)10)試験後の十二指腸液中のribonuclease(RNase)活性測定法と検体保存の影響について検討した.さらに,純粋膵液中のRNaseをhoshocellulose column chromatograhyにて分析した.十二指腸液中のRNase活性測定のための反応液の至適Hは,基質としてpoly C およびpoly Uを使用した場合,おのおの6.0と5.5であ.十二指腸液中のRNase活性は,80°Cに30分以上かあるいは,室温で1日以上放置すると完全に失活した.同酵素活性は,たとえ,-20°Cにて保存しても,3ヵ月後には78%に低下した.一方,検体にarotininを加えて-20°Cにて保存すると,少なくとも3ヵ月間は100%の活性が保たれた.だから,検体は-70°Cに保存し,1週間以内に測定すべきである.hoshocellulose columnchromatograhyによる純粋膵液中の蛋白の分析により,RNase活性の3つのピークが認められ,これらのRNaseはすべてpoly UよりもpolyCに高い基質選択性を示した.poly Aやpoly Gは,これらの分画では加水分解されなか.この方法により,純粋液中のRNaseはimmunoreactive trysin (IRT)と分離された.
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洲脇 謹一郎
1981 年 78 巻 6 号 p.
1275-1281
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
フリー
膵,胆道疾患における免疫学的機序を検討することを目的とし,ヒト膵液,胆汁中のsecretory component(SC)および免疫グロブリン(Ig)に関する基礎的検討を行.SCはRIA 2抗体法で,IgはSRID法で測定した.材料は-70°Cの保存で少なくとも10週間は安定であ.材料中に含まれるtrypsin等のタンパク分解酵素による分解を防ぐためにprotease inhibitorを加えた場合,SCおよびIgはcontrolにくらべて低値の傾向を示した.Sephadex G-200ゲル濾過法およびMO法による検討では,正常ヒト膵液,胆汁中のSCは大部分はIgA dimerと結合したsIgA(lls)であり,free SCおよびsIgMの存在を示唆する結果は得られなか.
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とくに血管系とラ氏島•小葉との関係について
柳沼 信久, 高橋 徹, 斎藤 謙, 京極 方久
1981 年 78 巻 6 号 p.
1282-1292
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
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連続切片からの三次元復構により,正常膵の「小葉」,動•静脈,ラ氏島等の構築関係を解明した.「小葉」は三次元的には相互に連結してネットワーグを成しているため,膵臓の構造単位とみなし得るものではなく,むしろ動脈終枝をもつて循環単位とし,これの積み上げによつて膵の構造を理解するのが合理的であることを明らかにした.われわれはさらに,動脈終末はラ氏島との関係で3種を区別しうること,ラ氏島は動脈終末との関係で「動脈性」,「非動脈性」の2種を区別しうることを見出し,それぞれの機能的意義について考察を行つた.
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山中 若樹, 岡本 英三, 桑田 圭司, 豊坂 昭弘, 大橋 秀一, 飛田 忠之, 岡空 達夫, 國井 優子, 下山 孝, 里見 匡迫
1981 年 78 巻 6 号 p.
1293-1297
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
フリー
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小島 孝雄, 中村 俊之, 吉田 貴, 青木 泰然, 冨田 栄一, 西尾 碩人, 清水 勝, 高井 哲, 武藤 泰敏, 高橋 善弥太, 小林 ...
1981 年 78 巻 6 号 p.
1298-1302
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
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宮川 英喜, 亀山 仁一, 佐々木 巌, 今村 幹雄, 乾 秀, 今野 喜郎
1981 年 78 巻 6 号 p.
1303-1306
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
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平松 紘一, 寺田 昭, 鎌田 武信, 阿部 裕
1981 年 78 巻 6 号 p.
1307
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
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戸沢 辰雄, 里見 匡迪, 下山 孝
1981 年 78 巻 6 号 p.
1308
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
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中沼 安二, 杉浦 仁, 太田 五六, 小林 健一
1981 年 78 巻 6 号 p.
1309
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
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矢部 秀樹, 須田 都三男, 佐藤 春喜, 西野 晴夫, 宇井 忠公, 衛藤 公治, 牛尾 剛雄, 森本 晉, 田中 照二, 堀口 正晴
1981 年 78 巻 6 号 p.
1310
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
ジャーナル
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小坂 義種, 明田 昌三, 近藤 功, 荻原 正芳, 藤田 光次
1981 年 78 巻 6 号 p.
1311
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
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西里 卓次, 荒谷 英二, 竹内 秀一, 池田 晃, 文屋 学, 北慎 一郎, 佐藤 鉄典, 石谷 邦彦, 漆崎 一朗
1981 年 78 巻 6 号 p.
1312
発行日: 1981/06/05
公開日: 2007/12/26
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