日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
119 巻, 3 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
今月のテーマ(総論):消化管の希少な炎症性疾患を考える
  • 松本 主之
    2022 年119 巻3 号 p. 183-190
    発行日: 2022/03/10
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

    消化管希少疾患の臨床研究の進歩について,特に炎症性腸疾患と消化管ポリポーシスを中心に概説した.遺伝子解析技術の進歩により炎症性腸疾患の遺伝的背景に関する研究が進み,250領域を超える疾患関連遺伝子が同定された.それらのなかで,単一遺伝子のバリアントが腸管の炎症を惹起する希少な疾患群が存在し,monogenic IBDと総称されている.一方,遺伝性消化管ポリポーシスは1960年代から特徴的な臨床像を呈する疾患群として知られ,腺腫性ポリポーシスと過誤腫性ポリポーシスに大別されてきたが,近年新たな原因遺伝子の存在が示されている.消化管専門医としては,これらの希少疾患の臨床像の特徴を熟知しておくことが重要である.

今月のテーマ(総説):消化管の希少な炎症性疾患を考える
  • 穂苅 量太, 東山 正明, 八月朔日 秀明
    2022 年119 巻3 号 p. 191-200
    発行日: 2022/03/10
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

    クロンカイトカナダ症候群は,胃・大腸にポリポーシスが分布し,高率に蛋白漏出性胃腸症を合併する「発病の機構が明らかでない」疾患であり,指定難病である.蛋白漏出性胃腸症にともなう低ガンマグロブリン血症状のために免疫不全状態となるため,「長期の療養を必要とする」.現在までに世界で約500症例の報告に留まる「希少な疾病である」が,症例の4分の3以上が本邦からの報告であり,風土病の側面がある.胃癌,大腸癌の発生率は明らかに高率である.ステロイドが治療の主体だが,しばしばステロイド不応性の症例に遭遇し,代替治療法は確立していない.厚労省「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)で,全国レジストリーの準備中である.

  • 梅野 淳嗣, 内田 恵一, 松本 主之
    2022 年119 巻3 号 p. 201-209
    発行日: 2022/03/10
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

    非特異性多発性小腸潰瘍症(CEAS)は,病理学的に肉芽腫などの特異的所見の見られない潰瘍が小腸を中心に多発するまれな疾患である.プロスタグランジン輸送体をコードするSLCO2A1遺伝子の変異を原因とする.男女比は約1:2と女性に多く,胃や十二指腸にも病変をきたすことがあり,ばち指,骨膜症や皮膚肥厚所見などの消化管外徴候をともなうことがある.小腸病変は回腸に好発し,輪走,斜走する浅い潰瘍や多発狭窄という特徴を有し,約半数の症例で腸管切除が必要となる.診断には家族歴,臨床経過,小腸病変の病理・形態的評価の他,上部消化管病変や消化管外徴候の有無が参考となり,確定診断にはSLCO2A1遺伝子検査が有用である.

  • 仲瀬 裕志
    2022 年119 巻3 号 p. 210-216
    発行日: 2022/03/10
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

    インフラマソームの活性化異常は種々の疾患発症に関与し,その1つに家族性地中海熱(familial Mediterranean fever;FMF)が存在する.FMFは周期性発熱と漿膜炎を特徴とする自己炎症性疾患(責任遺伝子:MEFVMEditerranean FeVer)遺伝子)である.現在までの研究結果から,MEFV遺伝子変異を有する分類不能腸炎(IBDU)患者の約40%が現行のFMF診断基準に合致していた.MEFV遺伝子変異陽性腸炎患者に対するコルヒチン投与後の腹部症状改善率は77%と良好な反応を示し,本疾患を既存のIBD群から分類する重要性が示唆された.

  • 渡辺 憲治, 河合 幹夫, 横山 陽子
    2022 年119 巻3 号 p. 217-226
    発行日: 2022/03/10
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

    腸管型ベーチェット病は,本邦の診断基準ではベーチェット病の特殊型とされているが,診断基準を満たさない疑い例が多く,非専門医が診断に困惑する場合もある.その病態は近年のゲノムワイド関連解析などにより徐々に解明されつつあるが,trisomy 8をともなう骨髄異形成症候群合併例など,今後,疾患概念の整理が必要になるかもしれない領域が残されている.従来,術後の高い累積再手術率など,治療に難渋する場合が多かったが,世界で初めて抗TNF-α抗体製剤による治療が保険承認され,以前より治療の有効性は向上している.本稿ではベーチェット病診療ガイドライン2020の記載内容をベースに,臨床でのポイントを述べる.

症例報告
feedback
Top