薬剤アレルギー性肝障害の発生機序に, 生体の細胞性免疫が関与する可能性が示唆されてからかなりの年月が過ぎた. この薬剤アレルギーの起因薬剤を同定する方法としては, 以前から疑わしい薬剤による in vivoの challenge test や末梢血リンパ球の薬剤刺激による幼若化現象をしらべる方法が用いられている
1~4).
In vitro でリンパ球の幼若化を検索するには, 感作リンパ球の抗原刺激による幼若化を形態学的に観察してその比率を算定する方法がある. また, 幼若化に伴うRNAまたはDNAの合成促進を放射能標識前駆物質のとり込みで推定する方法がとられる. さらに, 細胞性免疫の指標としてMIFなどの chemical mediator 産生を測定する場合がある5).
これらの in vitro の細胞性免疫検索には, 通常末梢血からリンパ球を分離して, 培養しなければならないので, 比較的大量の血液が必要である. 従つて, 臨床的には患者への負担が重く, 臨床検査の面から一定の限度があり, くりかえし頻繁に検討することは必ずしも容易ではない. より少ない採血量で, しかも正確に細胞性免疫を評価できる方法があれば, 薬剤アレルギー性肝障害の起因薬剤の同定に大きな貢献をもたらすと考えられる.
我々は, 約1mlの採血で再現性よく, リンパ球幼若化反応を測定できる方法を確立し, その方法を用いて薬剤による遅延型アレルギーの関与が考えられる肝障害の起因薬剤を同定した. これらについて詳細に記述する.
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