血漿VIPのラジオイムノアッセイを確立し,正常者および各種疾患患者におけるVIPの分泌動態と分泌機序について検討した.正常者(41例)の空腹時血漿VIP濃:度は86±26pg/ml(平均値±標準偏差)で,年齢および性による差はなかつた.今回測定しえた消化性潰瘍,慢性下痢症,肝硬変症.悪性腫瘍などの各種疾患患者41例は,正常者と同じ範囲内の値を示した.正常者に各種負荷試験を行ないVIPの分泌反応を検討すると,混合食(meat soup),タウロコール酸ナトリウム,ウルソデオキシコール酸の経口投与および十二指腸酸性化はVIPの放出を促進したが,ブドウ糖,脂肪,カルシウム,膵ホルモンなどの投与では影響はみられなかつた.一方,十二指腸潰瘍患者にウルソデオキシコール酸を経口投与すると,血漿VIP濃度は4例中1例に増加を認めたのみで,3例では不変もしくは減少した.ヒト十二指腸粘膜を用いた周辺灌流実験では,pH2溶液ならびにタウロコール酸ナトリウム溶液は,十二指腸粘膜よりのVIP放出を刺激した.
以上の成績は,食事摂取によりVIPの放出が刺激されるがその機序の少なくとも一部として,食後に分泌される胃酸および胆汁酸が直接十二指腸粘膜を刺激して,VIP分泌を促進することを示唆する.
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