日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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99 巻, 4 号
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  • 肝繊維化研究と治療の最前線
    岡崎 勲, 渡辺 哲, 稲垣 豊
    2002 年 99 巻 4 号 p. 353-364
    発行日: 2002/04/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    肝線維化の病態生理について,マトリックス産生担当細胞,細胞外シグナル伝達からマトリックス蛋白産生にいたる経路,マトリックス分解酵素産生担当細胞,マトリックスの産生と分解の調節機構などかなり明解になってきた.著者らは最近,コラゲナーゼ産生細胞が骨髄由来肝幹細胞であることを証明した.肝幹細胞の視点から線維化病態をみると,疑問点が容易に理解できるようになる.本論文では,臨床的視点から線維化改善を目指した機序の理解ができるよう,そして肝幹細胞が線維化に関与する可能性を述べる.
  • 肝繊維化研究と治療の最前線
    上野 隆登, 佐田 通夫
    2002 年 99 巻 4 号 p. 365-378
    発行日: 2002/04/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    肝線維化,殊に肝硬変は肝細胞癌や食道・胃静脈瘤などといった生命予後を左右する疾患と深く関わっている.したがって,肝硬変を含めた肝線維化の治療法の確立は極めて重要である.近年,肝線維化機序の解明が飛躍的に進み,概ねその機序が明らかにされ,さらに肝線維化の治療に関する研究も現在盛んに行われている,その戦略として,肝障害因子の排除,肝内炎症の抑制,肝での代表的な細胞外基質(ECM)産生細胞である肝星細胞の活性化抑制,ECM産生の抑制,ECM分解の促進,さらには遺伝子治療などの方法がある.現在,臨床で用いられているインターフェロンなどの慢性肝疾患の治療薬が肝線維化改善効果を持つことが明らかにされ,更に今後臨床で肝線維化の治療薬として期待される薬剤の報告もみられる.この領域の研究が更に発展することによってより優れた肝線維化の治療法が出現するものと思われる.
  • 藤田 きみゑ, 長谷川 美幸, 藤田 麻里, 小林 寅〓, 小笹 晃太郎, 渡辺 能行
    2002 年 99 巻 4 号 p. 379-385
    発行日: 2002/04/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは古くより民間薬として用いられてきた梅肉エキスのHelicobacter pylori(H.p.)に対する殺菌効果を検討した.梅肉工キスの主成分は約3296のクエン酸1196がリンゴ酸などで,pHは強酸性である,この梅肉エキスの0.156%,0.313%,0.625%,0.9%各濃度工キス剤溶液に対して,胃粘膜由来のH.p.臨床分離株10株を各々濃度溶液にて培養し,菌培養MIC(最小発育阻止濃度)測定を行った.その結果,H.p.10株のうちH.p.4株に対しては梅肉工キス剤濃度0.156%以下で,また,H.p.6株に対してはエキス剤濃度0313%で強い抗菌力を示した.さらに,梅肉エキス0.3%,0.9%濃度溶液に混和されたH.p.臨床分離株10株の生理的食塩水懸濁液は,5分後および15分後にてH.p.菌量の99.995%から99.999%が減少し強い殺菌効果を認めた.これ等結果より,梅肉エキスは安価で副作用のないH.p.を予防し得る食品と考えられた.
  • 藤堂 祐子, 赤木 盛久, 近松 そのこ, 三浦 敏夫, 渡邊 哲彦, 春間 賢, 嶋本 文雄, 吉田 和弘, 峠 哲哉
    2002 年 99 巻 4 号 p. 386-390
    発行日: 2002/04/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性.上部消化管内視鏡検査で多発性胃カルチノイドと診断した.血清ガストリンは2248.8pg/mlと著しい高値を示し,抗壁細胞抗体も陽性でA型胃炎に発生した胃カルチノイドであった.幽門側胃切除術を施行し,術後血清ガストリンは正常化した.残胃のECM(endocrine cell micronest)およびカルチノイドは消失し,術後26カ月再発を認めていない.A型胃炎に発生する多発性胃カルチノイドの治療として,幽門側胃切除術が標準的胃切除術式になりうる可能性を示唆した症例である.
  • 森田 宗孝, 谷 聡, 萩原 良輔, 劉 嘉忠, 八木 規夫, 山下 順平, 今西 築, 北澤 荘平
    2002 年 99 巻 4 号 p. 391-396
    発行日: 2002/04/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,女性.腹痛の精査中,CT,Caシンチで腸間膜悪性リンパ腫が疑われ開腹生検にて腸間膜原発のホジキン病と診断され化学療法を施行し完全寛解を得た.我が国において腸間膜原発のホジキン病は極めてまれな疾患である.しばしば巨大腫瘤を形成する腸間膜非ホジキンリンパ腫とは違い,治療可能な疾患として迅速な開腹生検が診断と治療のため肝要であると思われた.興味ある1例と考えられたので文献的考察を加えて報告した.
  • 前山 晋吾, 東 正祥, 入江 孝延, 山口 由美子, 東 哲明, 森田 久樹
    2002 年 99 巻 4 号 p. 397-400
    発行日: 2002/04/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は31歳,女性.腹痛,発熱を主訴に来院.腹部CT検査で上腸間膜動静脈周囲の脂肪組織の肥厚と濃度上昇を認めたため,小腸間膜脂肪織炎と診断し,保存的治療により軽快した.小腸間膜脂肪織炎は非特異的な炎症性疾患であるため,保存的治療が望ましいが,診断は一般に困難なため,試験開腹を含めた外科的治療を施行された症例が多い.腸間膜脂肪織炎は急性腹症の鑑別診断の1つとして念頭においておく必要がある.
  • 古川 浩一, 小林 良太, 黒田 兼, 五十嵐 健太郎, 畑 耕治郎, 何 汝朝, 月岡 恵
    2002 年 99 巻 4 号 p. 401-405
    発行日: 2002/04/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    50歳,男性.大酒家,受診前推定約6カ月間の過剰飲酒の後,下腿浮腫,皮膚黄染を自覚し当院入院.現症では意識清明,発熱と黄疸を認めた.検査成績では高ビリルビン血症,多核白血球優位の白血球増多を認め,プロトロンビン活性34.0%と凝固能は低下し,各種肝炎ウイルスマーカーは陰性であった.以上より重症型アルコール性肝炎と診断.新鮮凍結血漿の補充とともにDICに対しメシル酸ガベキサートを開始.血漿交換を3日間追加実施した.しかし,白血球増多は持続,黄疸は増悪,血中の炎症性サイトカイン,顆粒球エラスターゼは高値を示した.ウリナスタチン投与,ステロイドパルス療法,血液濾過,ビリルビン吸着療法を実施した.その後,高サイトカイン血症,高顆粒球エラスターゼ血症は抑制され,速やかに臨床症状および検査値は改善し,重篤な多臓器の合併症なく退院となった.
  • 上野 直嗣, 多田 修治, 藤本 貴久, 小貫 清美, 須古 博信, 神尾 多喜浩
    2002 年 99 巻 4 号 p. 406-411
    発行日: 2002/04/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,男性.健診での腹部超音波検査で胆嚢内に28mm大の腫瘤性病変を指摘され,当科を受診.食道にglycogenic acanthosisの多発,胃,直腸に過形成性ポリープの多発,十二指腸には炎症性の小隆起を認めた.また,歯肉の乳頭腫様肥厚,鼻根部周囲および両側手指に丘疹が散在し,両足底部には角化傾向のある丘疹が認められ,Cowden病と診断した.胆嚢病変は組織学的には線維性ポリープであり,胆嚢線維性ポリープを合併したCowden病の報告は過去にはみられず,貴重な症例と考えられた.
  • 山本 一仁, 羽尾 邦彦, 横山 滋彦, 小嶋 隆行, 永嶋 裕司, 吉田 寛, 田尻 孝, 恩田 昌彦
    2002 年 99 巻 4 号 p. 412-417
    発行日: 2002/04/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    38歳男性,アルコール依存症のため禁酒プログラム実施中に下血,転院となる.内視鏡所見で十二指腸上行脚の肉芽腫様病変を認め,同部からの出血を認めた.CTにて膵尾部に直径約6cm大の仮性動脈瘤を描出,部分的に強い造影効果を認めた.膵仮性動脈瘤からの十二指腸上行脚出血の診断にて止血目的で脾動脈塞栓術を施行.1回目の塞栓術は動脈瘤描出を認めず,塞栓不十分であったが,2回目に動脈瘤の描出を認め,動脈塞栓術を施行し,以後出血を認めず良好な結果を得た.
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