日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
102 巻, 8 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
総説
  • 井廻 道夫
    2005 年 102 巻 8 号 p. 981-985
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/05
    ジャーナル フリー
    専門医制度は,専門領域の高度な知識と技能を有する医師を養成し,専門的医療の向上を図り,国民の福祉に貢献することを目的とする制度である.日本における専門医制度を担う各学会は,専門医の質を維持すべく研修カリキュラム,研修施設の認定基準,専門医更新基準の改善に取り組む必要がある.専門医を目指す医師は研修体制が十分に整った研修施設で研修を受けるべきであり,研修施設は必要な環境作りを行うことが重要である.各学会は協力してよりよい専門医制度のシステム作りを行い,専門医のレベル向上に努め,専門医の地位向上を社会にアピールする必要がある.
今月のテーマ:転写因子と消化管癌
  • 武藤 弘行
    2005 年 102 巻 8 号 p. 986-993
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/05
    ジャーナル フリー
    慢性胃炎と関連して生じることがSchmidtによって記載されてから100年以上の研究の歴史がある腸上皮化生は,H. pyloriの発見によって単なる加齢現象ではないことがわかった.また,腸上皮化生は分化型胃癌の前癌病変として位置づけられてきたが,分化型胃癌の形質を粘液からみると腸型ではなく胃型の分化型胃癌が少なからず存在することがわかり,腸上皮化生は前癌病変ではなく傍癌病変ではないかとの見方もでてきた.本稿では転写因子Cdx2が腸上皮化生を引きおこし,この腸上皮化生粘膜から分化型胃癌が発生することを述べながら,多彩な像を呈する分化型胃癌の発生過程は単一なストーリーでは論じきれないことを考えたい.
  • 藤澤 信隆, 藤澤 聡郎, 藤田 浩司, 高橋 宏和, 中島 淳
    2005 年 102 巻 8 号 p. 994-1003
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/05
    ジャーナル フリー
    Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ(PPARγ)は核内受容体のひとつであり,リガンド依存的に標的遺伝子の転写活性を調節している.PPARγの生理的な役割は未だ不明であるが,脂肪組織と並び,消化管,特に大腸の上皮に多量に存在することが知られている.さらにPPARγは大腸癌をはじめとした種々の癌細胞にも多く発現しており,発癌メカニズムの解明にとどまらず,PPARγを分子標的とした新たな治療法の開発が進められている.PPARγと大腸癌に関するこれまでの知見を紹介するとともに,現在われわれが行っている研究も含めた最新の知見と,大腸癌の治療や化学予防に向けた臨床応用の現況を概説した.
原著
  • 泉田 さゆり, 加藤 秀章, 橋本 政治, 中村 誠
    2005 年 102 巻 8 号 p. 1004-1009
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/05
    ジャーナル フリー
    Clostridium difficileは,抗菌薬関連下痢症(AAD)の主要な原因菌の一つで,偽膜性腸炎の起因菌である.C. difficile関連下痢症の診断は,通常糞便中のC. difficileの検出によりなされ,C. difficileの検出には,現在C. difficileの産生するトキシンAやD1抗原を検出する迅速法が広く用いられている.今回われわれは,一般臨床病院におけるそれら迅速法と培養法によるC. difficile検出結果を比較検討した.対象は,当院にてAADと診断された148例の患者から採取された糞便232検体で,各検体につきトキシンA検出キット(ユニクイック),D1抗原検出キット(CDチェック)および培養法にてC. difficileの検出を行った.結果は,ユニクイック,CDチェック,培養法いずれかでC. difficile陽性となったものは,232例中100例(43.1%)で,各検査法による陽性率は,ユニクイック55例(23.7%),CDチェック56例(24.1%),培養法93例(40.1%)であった.培養法で陽性であった93例に基づいたユニクイック,CDチェックの感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率はそれぞれ,53%,96%,90%,75%および56%,99%,98%,78%であった.AAD患者においてC. difficile検出のために迅速診断法を用いる場合には,検査法の感度に十分留意し,その結果の解釈には注意が必要である.
  • 大原 秀一, 神津 照雄, 河野 辰幸, 草野 元康
    2005 年 102 巻 8 号 p. 1010-1024
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/05
    ジャーナル フリー
    医療機関を受診した初診外来患者および初回内視鏡施行患者に対する患者アンケートと内視鏡検査により,胸やけ・逆流性食道炎に関する全国規模の調査を実施した.胸やけは4723例中42.2%にみられ,このうち内視鏡検査を施行した3608例中16.7%にgrade A以上の逆流性食道炎を認めた.胸やけの誘因は脂肪や甘味食摂取および消炎鎮痛薬,喘息薬の服用が示された.胸やけの頻度と食道炎の重症度は必ずしも一致しなかったが,弱い相関がみられた.一方,胸やけ症状がありながら内視鏡所見のない内視鏡陰性GERDの存在も示唆された.今回の胸やけ・逆流性食道炎の頻度は欧米の報告と同様に高いことが示され,今後も定期的にGERDの実態に関する調査を継続する必要があると考えられた.
症例報告
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