正常58例, 急性膵炎4例, 慢性膵炎27例, 膵癌6例, その他の疾患88例について血清 total trypsin inhibitor (以後TTI), stable trypsin inhibitor (以後STI), trypsin binding protein (以後TBP) を検討し, 膵疾患におけるこれらの臨床的意義を検討した. TTIは, 膵よりの trypsin 逸脱現象にのみ起因するものでなく, 組織破壊, 炎症機転により上昇する. TTIは急性膵炎で発病後速やかに著明な高値をとり, 病態の回復と共に徐々に低下する. 慢性膵炎ではほぼ正常値にあるが, 外分泌機能の強度に低下した症例で低値の傾向がみられる. また, 慢性膵炎の増悪, 緩解期に平行しTTIは変動した. TBPは急性膵炎全例で症状の強さに比例し, 低値を示した. しかし, 慢性膵炎および膵以外の疾患では低値を示したものはなく, 膵における急性炎症性変化に対し特異的に低値をとつた.
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