日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
118 巻, 6 号
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特別寄稿
今月のテーマ(総論):肥満と消化管
  • 藤本 一眞, 山内 康平, 岸 拓弥
    2021 年 118 巻 6 号 p. 500-504
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

    日本で肥満症の治療に本格的に関心がもたれるようになったのは1980年代であり,当初は消化管と関連づけての治療方法が中心であった.薬剤としては消化吸収抑制薬,食欲抑制薬などが中心に開発され,食事療法に関してもさまざまなアプローチがなされた.今回は,開発当初から現時点にいたるまでの薬物療法や食事療法(+行動療法)を中心に,肥満症治療と消化管との関連についてまとめた.

今月のテーマ(総説):肥満と消化管
  • 大島 忠之, 三輪 洋人
    2021 年 118 巻 6 号 p. 505-516
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

    世界では,人口の30%が肥満であるといわれ,本邦における肥満の割合は,男性で増加傾向にある.また胃食道逆流症(GERD)は,2000年以降急激に増加している.GERDの増加には,食生活の欧米化,肥満の増加,高齢化などが関与していると考えられ,肥満と食道症状の発生には正の相関がある.最近では内臓脂肪型肥満が,体格指数(BMI)とは独立してBarrett食道やBarrett食道腺癌の発生に寄与するといわれている.肥満によるGERDの発生には,腹腔内圧上昇,一過性下部食道括約筋弛緩の増加,食道裂孔ヘルニア,食生活など多くの要因が関与している.GERDは,薬物治療および減量で改善するため,保存的加療で改善が得られない場合には肥満とGERDの治療として肥満外科手術も考慮する.

  • 乾 明夫, 榊 弥香, 宇都(鮫島) 奈々美
    2021 年 118 巻 6 号 p. 517-524
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

    肥満病態における上部消化管の関与は重要であり,空腹因子,満腹因子の両者の産生場所でもある.これらは視床下部に作用し,脳腸相関の中で食欲や体重調節を行う.グレリンは胃から同定された空腹ホルモンであり,肥満や痩せ病態に深く関わると考えられている.本稿ではグレリンを中心に,肥満症および肥満病態へのトランスレーショナルな応用研究の進歩を述べる.グレリンシグナリング遮断手段としては,グレリンやその受容体(GHSR-1a),グレリンアシル化酵素(ghrelin O-acyltransferase;GOAT),グレリンに拮抗するLEAP2(liver-expressed antimicrobial peptide 2)などが検討されている.グレリンシグナリング遮断により,肥満モデル動物では食欲・体重の減少効果が見られ,ヒトでの更なる解析が待たれる.

  • 内藤 裕二, 髙木 智久, 井上 亮
    2021 年 118 巻 6 号 p. 525-531
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

    肥満は重要な医学的課題であり,遺伝的因子と環境要因との複雑な相互作用により発症する代表的な多因子疾患である.肥満は必ずしも疾患とは限らないが,体脂肪量が過剰に蓄積した状態であり,脂肪組織由来ホルモン(アディポサイトカイン)やエネルギー代謝調節関連分子が同定され,肥満発症機構が急速に解明されてきている.この研究の流れの中で,腸内細菌叢の分析技術,その代謝物の質量分析計を中心にした同定技術などの進歩とともに,肥満と腸内細菌叢との密接な関連が明らかとなってきた.肥満の理解に腸内細菌とその代謝物の理解が重要である.健康な腸内細菌叢のためには健康な生活習慣が重要であり,最終的に下部消化管疾患の中でも便秘症と大腸癌について解説した.

  • 田中 達也, 小川 了, 瀧口 修司
    2021 年 118 巻 6 号 p. 532-540
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

    高度肥満者に対する外科治療は,2000年代に入り本邦でも普及してきた.術式には歴史的変遷があるが,現在は腹腔鏡下スリーブ状胃切除術がもっとも一般的である.手術の効果は海外で長期予後を含むエビデンスが発表されており,本邦でもこれに追随している.本邦では健康保険での手術が多いため,手術適応は保険の条件が一般的であるが,BMIが32.5未満の症例では手術適応がない点やスリーブ状胃切除術以外の術式が認められていない点に問題がある.肥満治療の重要性は増してきており,必要な患者に対して外科治療が安全に提供できるようにする必要がある.

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