日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
117 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
今月のテーマ(総論):上部消化管腫瘍の内視鏡診断・治療Up to date
  • 上山 浩也, 永原 章仁
    2020 年 117 巻 2 号 p. 105-116
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    上部消化管腫瘍(咽頭・食道・胃・十二指腸)に対する内視鏡診断は先進的診断内視鏡の開発により飛躍的に向上し,特に本邦で開発されたnarrow-band imaging(NBI)やBlue LASER Imaging(BLI),Linked Color Imaging(LCI)などのシステムにより早期発見・早期治療が可能となり,近年ではAIによる内視鏡診断の報告も散見される.さらに内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)や腹腔鏡内視鏡合同手術(laparoscopy and endoscopy cooperative surgery;LECS)などの低侵襲治療も本邦から開発され,安全かつ先進的な内視鏡診断と治療方法が確立されてきている.ただし,各々の臓器において内視鏡診断と治療方法の選択に関してはいまだ課題は残されており,今後の更なる臨床研究の成果が期待される.

今月のテーマ(総説):上部消化管腫瘍の内視鏡診断・治療Up to date
  • 小田島 慎也, 阿部 浩一郎, 山本 貴嗣
    2020 年 117 巻 2 号 p. 117-125
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    本邦における食道癌の多くは食道扁平上皮癌である一方,胃食道逆流症によって生じるBarrett食道を発生母地とするBarrett食道腺癌も近年増加傾向にあるといわれている.これらの疾患に対する内視鏡診断の進歩は著しく,特にNBI,BLIなどの画像強調機能の開発にともない,それらの機能を用いた内視鏡診断が確立してきている.一方,内視鏡治療の進歩も目覚ましく,ESDの登場により理論上リンパ節転移がないと判断される病変はすべて内視鏡で切除が可能な時代となった.しかし患者の状態や病変の状況次第ではより簡便なEMRによる切除や,APC,PDTなどの切除以外の内視鏡治療を行うことも検討するべきである.

  • 小野 尚子, 小野 雄司, 坂本 直哉
    2020 年 117 巻 2 号 p. 126-134
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    2013年Helicobacter pyloriH. pylori)の除菌治療適応が拡大され,除菌治療数は急激に増加した.またH. pyloriの感染率低下もあいまり,胃癌は近い将来急激に減少するといわれている.今現在,胃癌による死亡数は減少が見られるものの,胃癌の罹患数は高齢化にともない減っていない.胃癌の内視鏡診断はまず見つけることに始まる.拾い上げには画像強調観察の有効性について報告されるようになっており,背景粘膜と発生する胃癌の特徴を踏まえてスクリーニングを行うことが効率的である.治療はESDが主体であり,その手技は完成しているが,さまざまな工夫や低侵襲の縮小手術が試みられている.

  • 布袋屋 修, 菊池 大輔
    2020 年 117 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    近年の内視鏡検診の普及や内視鏡機器の進歩により日常診療にて十二指腸腫瘍に遭遇する機会が増加しているが,いまだにその診断・治療に関する基準は確立されていない.しかし症例数の増加にともない,内視鏡診断,特に画像強調内視鏡による質的診断は整備されつつあり,十二指腸腫瘍の特有の特徴を捉え,生検せずに治療適応病変を判断するoptical biopsyも普及してきた.病理組織学的には,経験的に得られていた特徴的細胞像に加え,粘液形質発現の解析結果を踏まえた病理診断アルゴリズムも完成しつつある.同時に最難関である内視鏡治療も地道な工夫と努力の蓄積が結集し,数年前よりも格段に安全性の高い内視鏡治療が可能となってきた.

  • 平澤 俊明, 由雄 敏之, 多田 智裕
    2020 年 117 巻 2 号 p. 141-149
    発行日: 2020/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    「第4次産業革命」とも称される人工知能(AI)革命がディープラーニング技術と高性能なGPU,そして大量のデジタル化されたデータの組み合わせにより進んでいる.上部消化管においてもAIは高精度の胃癌拾い上げ,食道癌拾い上げ診断が可能であることが示唆されている.また,ピロリ菌胃炎の診断や胃の部位の網羅性チェックをするAIも可能なことが,食道癌においては深達度診断をAIが診断支援可能であることも示唆されている.胃癌拾い上げ,食道癌拾い上げにおいてはAIが医師の補助として診断をサポートし,医師がAIとともにより高精度の内視鏡医療を提供するのが当たり前になるのも,そう遠くない未来のことと思われる.

原著
症例報告
feedback
Top