総胆管結石は無症状であっても治療対象であり,存在が疑われた場合にはUS,CT,MRI(MRCP),EUSなどの画像検査を施設や症例の状況に応じて選択し,診断を進める.治療は現在,ESTを主とした内視鏡治療が多くの施設において第一選択とされており,胆囊結石合併例に対しては内視鏡的総胆管結石除去術ののち腹腔鏡下胆囊摘出術を行う方針が主流であるが,外科的一期的手術(胆囊摘出+総胆管結石除去)を行っている施設もある.また,術後再建腸管例や大結石,合流部胆石など従来内視鏡治療が困難とされてきた症例に対しても,近年,バルーン内視鏡,経口胆道鏡,EUSなどを用いた手技の開発によって治療が可能となり,内視鏡治療の適応範囲が広がっている.
総胆管結石の診療においては,結石の存在診断と病態診断を行う必要がある.存在診断では,各modalityの利点,欠点,侵襲度を考慮して診断につなげていく.以前よりもMRCPと,診断困難例における超音波内視鏡の重要性が増していることを銘記されたい.CTではX線透過結石は描出されないこと,MRCPでは4mm以下の小結石の診断能は70%前後にとどまること,などが注意すべき点である.ERCPは侵襲度も高いので治療手技として施行すべきであり,できるだけ他のmodalityで診断を確定させるように努力する.病態診断では,胆管炎,胆石膵炎,胆囊結石が併存すると治療戦略が変わるので,注意する.
総胆管結石症の治療は外科治療からはじまったが,現在は内視鏡による治療が主である.胆囊結石を合併する場合,本邦では主に内視鏡による総胆管結石除去後に外科的胆囊摘出術を行ういわゆる二期的治療が施行されている.しかし急性胆管炎や急性膵炎が合併していたり,胆囊結石の有無など,さまざまな因子が関与し治療方針の決定は非常に複雑で,治療方法は個々の施設の状況に依存することが多い.また最近EUS-guided biliary drainage(EUS-BD)などの技術が進歩し,これまで外科治療の適応であった大結石なども内視鏡による治療が可能なことがあり,内視鏡的治療の適応がさらに広まりつつある.ここでは,現在行われている治療方法のエビデンスを再評価し,標準的な治療方法を解説することとする.
総胆管結石に対する内視鏡治療は低侵襲,確実で安全な治療法であり,多くの施設で第1選択の方法として行われている.内視鏡的乳頭切開術に続くバスケットやバルーンカテーテルを用いた結石除去が標準的な治療であるが,解剖,症例の状態,結石性状や位置により時に内視鏡治療に難渋する.治療困難総胆管結石に対しては,その治療困難な要因に対してさまざまな対処方法が報告されており,多くの総胆管結石に対して対応が可能となっている.本稿では,治療困難総胆管結石に対する内視鏡治療の現状について解説する.
総胆管結石症に対する治療戦略には,1期的治療と2期的治療がある.1期的治療は胆囊摘出術と総胆管切開切石術を同時に施行することであり,近年は腹腔鏡手術で行うことが多い.2期的治療はERCPでESTを施行し,内視鏡的に胆管結石の切石を行った後に,待機的に胆囊摘出術を行う.1期的治療は経胆囊管法と胆管切開法があるが,経胆囊管法は腹腔鏡下胆囊摘出術と術後経過はほぼ同様であるため,患者への負担や医療コスト面からも有用である.またESTによる乳頭機能低下を予防できるため,胆汁の細菌感染がなく結石再発率も低率である.1期的治療である腹腔鏡下総胆管切開切石術は,胆管結石に対し有用な治療戦略である.
プレドニゾロン(PSL)・アザチオプリン(AZA)による既存治療に不耐・不応の自己免疫性肝炎7例に対して,ミコフェノール酸モフェチル(MMF)を投与した.MMF投与開始時のALT中央値は84U/L(28~254),PSL投与量中央値は15.0mg/日(0~45),PSLの副作用として糖尿病が4例,大腿骨頭壊死が2例にみられ,AZAの副作用は6例に存在し,5例が非投与であった.MMF投与開始24週でALT中央値は16U/L(6~41)へ低下,PSL投与量中央値も7.0mg/日へと減量,糖尿病も改善した.肝硬変へ進展していた1例では難治性下痢が出現したが,他の6例では副作用はなかった.
65歳女性.胃穹窿部に増大傾向をともなう30mm大の有茎性ポリープを認め,表面は正常粘膜に覆われていた.腹部造影CTでは内部に不均一な造影効果をともなう多房性の腫瘤であり,超音波内視鏡では第2~3層を主座とし,内部は無エコーから低エコーの囊胞様構造を複数認めた.Hamartomatous inverted polyp(HIP)の術前診断のもとポリペクトミーを施行した.粘膜下層に多房性囊胞状の拡張腺管の増生,筋板の錯走を認め,組織学的にもHIPと診断された.
症例は57歳女性.膵尾部に30mm大のぶどうの房状の多房性囊胞性病変を認め,定期的に画像検査を行ったところ,経時的に囊胞の数が増加・増大し,最終的に直径約50mmのcyst in cyst構造を呈する単房性囊胞へ形態変化した.腹腔鏡下脾合併膵尾部切除術を施行し,摘出標本では粘液性囊胞腺腫の診断となった.本症例の形態変化は非常にまれであり,その発生機序について病理学的考察をふまえて報告する.
症例は20歳代男性で腹痛を主訴に入院した.AFP,PIVKA-IIは上昇し,肝炎ウイルスマーカー,自己抗体は陰性であった.肝腫瘍,多発肺転移を認め,dynamic造影CTでは腫瘤は早期濃染,平衡相で造影不良を呈した.生検で中分化型肝細胞癌,非癌部は非障害肝であった.若年非B非C非肝硬変症に発生した肝細胞癌と診断し,分子標的薬を投与した.同様の症例は本邦で本例を含め13件報告があり,まれと考え報告する.
症例は66歳男性.主訴は心窩部痛.腹部超音波にて膵体部腫瘤を指摘され,当科へ紹介された.各種画像検査にて同腫瘤は,出血壊死をともなう22mm径の囊胞性腫瘤と診断した.1カ月の経過で腫瘍径は11mmに縮小したが,腫瘤辺縁が初診時よりも不整像となり遅延性濃染所見も顕著となった.出血壊死をともなう膵管癌と診断し,脾合併膵体尾部切除術を施行した.膵低分化腺癌と最終病理診断したが,奇異な画像経過を呈した症例であった.
68歳男性.急性胆囊炎で胆囊摘出術を施行し,胆囊管癌の診断で当院紹介となった.CTで中部から下部胆管の壁肥厚を認めたが,腫瘍性病変は認めなかった.ERCPで下部胆管の不整な壁肥厚と胆囊管腫瘍の胆管浸潤を疑う所見があり,手術を施行した.胆囊管に乳頭腺癌と管状腺癌の2病変と遠位胆管にBilIN-3病変を認め,多発癌の診断となった.今回,胆道同時性多発癌の1例を経験したので報告する.