超音波内視鏡下穿刺術 (EUS-FNAB/l=endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration biopsy/injection) は, 消化管を介して観察可能な病変の病理診断を, 高い診断能と安全性をもって行える手技として欧米を中心に発展してきた. 最近では診断のみならず, 治療にも応用されている. EUS-FNABの適応は, その施行が治療方針決定に有用な情報を与える場合である. 主として, 1) 腫瘤の鑑別診断, 2) 腫瘍の進展度診断, 3) 腫瘍の組織学的確診, が挙げられる. 膵腫瘤の診断に関しては90%前後の感度と正診率が報告されており, 偶発症発生率も1%程度と, その高い有用性が示されている. しかし, これまでにEUS-FNABによる腫瘍播種の可能性といった観点から, 腹腔を介する穿刺となる経胃的穿刺や, 内容液の漏出が懸念される嚢胞性腫瘍に対する穿刺は, その適応を厳密に考えなくてはならない. 膵癌に関連した治療に関しては, 癌性痙痛に対してEUS-FNlによる腹腔神経叢ブロックが行われている. また, 膵癌への直接穿刺による治療はこれからの研究課題である. 本法は, 膵癌診療において様々な可能性を持つ診療手技である.
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