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平坦・陥凹型大腸癌
工藤 進英, 原 栄志
2002 年 99 巻 5 号 p.
463-468
発行日: 2002/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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大腸早期癌の診断学は近年めざましい進歩をとげ,IIcを中心とした陥凹型早期癌や側方発育型腫瘍(LST)を主とする平坦型腫瘍の重要性が認識されている.これらの病変は,その存在を認識していなければ内視鏡検査を頻回に行っても見逃されているケースが多く内視鏡的診断が難しい.その存在と病理組織学的特徴を十分に把握して内視鏡検査を行うことは極めて重要である.従来は幻の癌といわれ,臨床的に診断されることの少なかった平坦・陥凹型の発見の経緯,概念,大腸癌の自然史における位置づけを含めその実体を明らかにするとともに,内視鏡的な発見の診断手順とその治療法について解説する.
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平坦・陥凹型大腸癌
福島 俊彦, 竹之下 誠一
2002 年 99 巻 5 号 p.
469-473
発行日: 2002/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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平坦・陥凹型大腸癌はde novo型発癌の候補病変として注目を集めてきた.その分子生物学的解析は本邦を中心に進められているが,全貌は未だ明らかではない.現時点までで報告のあった平坦・陥凹型大腸癌の分子生物学的特徴として,隆起型に比べてK-ras,APCの異常は低頻度,p53の異常は同程度,RERが高頻度に認められることが挙げられる.これらの特徴より,平坦・陥凹型大腸癌にはAPCとK-ras遺伝子異常を経ないでp53の異常が起こり,正常粘膜から直接癌が発生するというde novo経路,あるいはミスマッチ修復系の異常によるによる発癌経路が想定される.しかし,病理組織診断や肉眼分類の不統一などの問題点もあり,これらの点を解決した上で,今一度,平坦・陥凹型大腸癌における各種癌関連遺伝子の解析が必要である.
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楢原 義之, 金沢 秀典, 長田 祐二, 吉本 均, 坂本 長逸, 小林 正文
2002 年 99 巻 5 号 p.
474-482
発行日: 2002/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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独自に定めた診断基準に基づく難治性腹水18例(Child-Pugh score 9.9点)をTIPSにより治療し,その長期治療成績について検討した.腹水治療有効率は6カ月73%,1年90%,2年100%,累積生存率は6カ月89%,1年78%,2年48%であった,performance statusスコアは術前43%,3カ月62%,2年85%と有意(p<0.05)に改善し,Child-Pughスコアおよび肝機能検査は不変であった.術後14例に短絡路狭窄を認め短絡路拡張術を必要とした.短絡路狭窄合併例の70%では腹水増悪を認めたが拡張術後には改善した.術後肝性脳症は15例に認めた.TIPSは難治性腹水の改善およびQOL向上に有効であり,難治性腹水例の生存率向上をもたらすことが示唆されたが,術後に生じる短絡路狭窄,肝性脳症の治療を必要とした.
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尾形 隆, 嘉村 亜希子, 栗原 陽一, 海上 雅光
2002 年 99 巻 5 号 p.
483-488
発行日: 2002/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は27歳の男性.心窩部痛と発熱を主訴に来院した.上部消化管内視鏡検査で胃体下部から前庭部の小弯側を中心とする,島状に粘膜を残した地図状の広範囲なびらんを認めた.胃生検で上皮細胞の一部にサイトメガロウイルス感染に特徴的な核内封入体を認め,血清抗体価の上昇もあったため,サイトメガロウイルス胃炎と診断した.プロトンポンプ阻害薬と胃粘膜保護薬で治療し,軽快した.基礎疾患や輸血歴のない健常な若年成人の胃に発症した,きわめてまれな1例と考えられた.
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津村 愛, 田守 昭博, 中村 志郎, 武田 正, 西口 修平, 塩見 進, 関 守一, 荒川 哲男, 中村 健治
2002 年 99 巻 5 号 p.
489-492
発行日: 2002/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は72歳女性.主訴は腹部膨満感,多量の腹水を認めたが,肝予備能は良好であり,肝炎ウイルスマーカー・自己抗体は陰性であった.腹水は漏出性で悪性所見は認めなかった.胃・食道静脈瘤も認め門脈圧亢進と診断した.血管造影では腸間膜動静脈奇形を認め,TIPS・コイリングを施行することにより腹水の減少などの門脈圧亢進症状の改善にいたった.
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梅原 泰, 大崎 往夫, 国立 裕之, 高松 正剛, 木村 達, 喜多 竜一, 蜂谷 勉, 福山 隆之, 圓尾 隆典, 辻 賢太郎, 波多野 ...
2002 年 99 巻 5 号 p.
493-499
発行日: 2002/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は58歳女性.下腹部痛を主訴に入院.シリコンによる豊胸術と喘息の既往がある.(1)先行する気管支喘息(2)好酸球増加(3)血管炎症状を認めたことからアレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss症候群)と診断.プレドニゾロン40mg開始したが投与6日後,小腸穿孔来たし開腹術施行,術後35日目より心不全発症.シクロフォスファミド追加するも効果なく永眠された.剖検にて心臓に多発性の小梗塞とともに,多臓器に核内封入体を認め,単純ヘルペスウイルス感染症が示唆された.
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加藤 秀章, 林 勝男, 杉原 寛治, 根本 聴, 藤原 圭, 遠山 卓, 横江 正道, 高井 弘之, 中村 中, 日下部 篤宣, 荻野 眞 ...
2002 年 99 巻 5 号 p.
500-504
発行日: 2002/05/05
公開日: 2008/02/26
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治療を自己中断していた潰瘍性大腸炎の44歳の男性が腸閉塞にて入院した.注腸検査にて直腸と下行結腸に狭窄を認め外科的切除を施行した.病理組織学的に直腸病変は杯細胞カルチノイドで下行結腸病変は中分化型腺癌であった.虫垂以外に認められた杯細胞カルチノイドはまれである,潰瘍性大腸炎に合併した例は本邦での報告はなく,さらに腺癌と併発したことは,腫瘍の発生機序を考えるうえで興味深い.若干の文献的考察を加えて報告する.
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森園 周祐, 福富 真理恵, 横田 昌樹, 井口 東郎, 船越 顕博, 若杉 英之, 池田 泰治, 八反田 洋一
2002 年 99 巻 5 号 p.
505-510
発行日: 2002/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は61歳男性,C型慢性活動性肝炎に対して1992年インターフェロンの投与を受け,HCV-RNAの持続陰性化を認めた.以後毎年腹部超音波検査(US)にて経過観察されるも異常を認めなかったが,1999年3月,肝右葉S5に直径3cmの腫瘍を認め,原発性肝癌と診断された.肝S5S6の区域切除術を施行され,混合型肝癌と診断された.
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肱岡 範, 一二三 倫郎, 山根 隆明, 緒方 宏行, 川口 哲, 北田 英貴, 竹熊 与志, 中橋 栄太, 横溝 博, 藤田 博
2002 年 99 巻 5 号 p.
511-517
発行日: 2002/05/05
公開日: 2008/02/26
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脾原発悪性リンパ腫の3切除例を報告した.病巣は脾臓ないし脾門部リンパ節までに限局しており,病理組織検索にてnon-Hodgkin,diffuse,B-cell typeの悪性リンパ腫の診断を得た.3例は共にC型肝炎ウイルス抗体が陽性であり,C型肝炎ウイルスの量や亜型には一定の傾向は認めないものの,C型肝炎と脾病変との関連性が示唆され,脾原発悪性リンパ腫はC型肝炎の肝外病変と考えられた.
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齊藤 修治, 遠藤 格, 山岸 茂, 田中 邦哉, 市川 靖史, 渡会 伸治, 嶋田 紘, 天野 皓昭, 上田 倫夫, 河野 尚美
2002 年 99 巻 5 号 p.
518-522
発行日: 2002/05/05
公開日: 2008/02/26
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症例は台湾出身,71歳,男性.黄疸を主訴に入院.胆汁細胞診で肝吸虫々卵を認め,PTCD排液から虫体も確認した.胆道造影で総胆管の閉塞と壁不整像を認め,肝吸虫症に合併した総胆管癌と診断,切除術を施行した.組織学的には,中部胆管に腺扁平上皮癌とその乳頭側に非連続性に高分化腺癌を認め,他にも胆管粘膜の腺腫様過形成やdysplasiaがみられた.肝吸虫感染が肝外胆管癌発生に関与した1例を文献的考察も加え報告する.
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長谷川 繁生, 鈴木 晃, 坂井 庸祐, 大塚 聡, 鈴木 真彦, 高須 直樹, 亀山 仁一, 荒井 茂
2002 年 99 巻 5 号 p.
523-526
発行日: 2002/05/05
公開日: 2008/02/26
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35歳,男性.主訴:悪心・嘔吐.上部消化管x線検査,内視鏡検査,CT,腹部血管造影で十二指腸狭窄をともなうgroove pancreatitisが考えられた.ERCPが施行できなかったため,膵管の微小癌を否定できず,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.組織学的には十二指腸固有筋層の変性,消失とBrunner腺の過形成および十二指腸乳頭部,膵頭部からgrooveに広がる高度の線維性筋性増生がみられた.十二指腸狭窄の原因であると考えられた.
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今村 治男, 多田 修治, 廣田 和彦, 須古 博信, 神尾 多喜浩
2002 年 99 巻 5 号 p.
527-532
発行日: 2002/05/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は73歳,男性,大動脈解離の経過観察中に膵に接する長径4cmの嚢胞性病変を認めたが,良性病変と考えられ,心疾患治療後でもあったため経過観察となった,3年8カ月後のCTにて,同病変の長径は4.5cmと僅かに増大しており,CA19-9も上昇傾向にあったため,画像上粘液性嚢胞腫瘍を疑い,発見後3年10カ月を経て切除となった.病理学的には膵リンパ上皮性嚢胞と診断された.発生は膵周囲リンパ節への良性上皮組織迷入由来と考えられた.本症の画像診断と治療法につき文献的考察を行った.
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2002 年 99 巻 5 号 p.
535
発行日: 2002年
公開日: 2008/04/21
ジャーナル
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日消誌掲載論文(2002;99:397-400)のタイトルに校正上の誤りがありました. 訂正してお詫び申し上げます.
(誤)(誤) 腹部CT検査にて小腸間脂肪織炎と診断し, 保存的治療可能であった1例
(正)(正) 腹部CT検査にて小腸間膜脂肪織炎と診断し, 保存的治療可能であった1例
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