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伊東 文生, 山本 博幸, 堀内 志奈, 今井 浩三
2002 年 99 巻 9 号 p.
1043-1049
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
ゲノムの単純繰り返し配列(マイクロサテライト領域)における遺伝子不安定性つまリマイクロサテライト不安定性(MSI)は,DNAミスマッチ修復遺伝子の異常によるもので,散発性胃癌の15%程度においてみられる発癌機構である.家族性胃癌の一部においてもMSIがみられる.MSI陽性胃癌は,前庭部,腸型胃癌に多く予後が比較的良好といわれている.
p53遺伝子の変異やCOX-2の過剰発現は少なく,
BAX遺伝子など蛋白質コード領域に単純繰り返し配列を有する標的遺伝子のフレームシフト変異や
hMLH1遺伝子など様々な遺伝子のメチル化の異常を高頻度に認める.多発癌,重複癌,抗癌剤感受性との関連も示唆され,臨床的に胃癌のMSIを決定することは重要である.
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小西 文雄
2002 年 99 巻 9 号 p.
1050-1056
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
HNPCCにおいては,DNAミスマッチ修復遺伝子の異常によって生じるマイクロサテライト不安定性(MSI)が高率に認められ,遺伝子不安定性が発癌をきたすものと考えられている.一方,散発性大腸癌においても,15~20%の症例においてMSIが認められる.近年,散発性大腸癌におけるMSIの発生機序が明らかとなってきており,Vogelsteinらが1980年後半に提唱した
APC,Ki-ras,p53,DCCなどの大腸発癌に関わる遺伝子変化に加えて,散発性大腸癌の発生にかかわるDNAミスマッチ修復遺伝子に関連したDNA methylationなどのepi-geneticな変化の重要性が明らかとなった.
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宮木 美知子
2002 年 99 巻 9 号 p.
1057-1062
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
遺伝性消化管ポリポーシスには,家族性大腸ポリポーシス,Turcot症候群,Peutz-Jeghers症候群,若年性ポリポーシス,Cowden病,過形成性ポリポーシスなどが知られ,遺伝性非ポリポーシス大腸癌と共に.遺伝性大腸癌に含まれる.これらのうちマイクロサテライト不安定性(MSI)が報告されているのは,Turcot症候群の一部と過形成性ポリポーシスの一部である.家族性大腸ポリポーシスに脳腫瘍が併発するTurcot症候群はMSIを示さない.むしろ,遺伝性非ポリポーシス大腸癌に脳腫瘍が併発するTurcot症候群や劣性型Turcot症候群の腫瘍にMSIが見られる.劣性型Turcot症候群の場合には正常組織もMSIを示す,また,過形成性ポリポーシス患者のポリープや癌の一部にもMSIが観察されている.
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河上 洋, 野村 昌史, 網塚 久人, 春山 恭子, 泉 信一, 渡辺 晴司, 小山内 学, 潟沼 朗生, 伊藤 英人, 高橋 邦幸, 吉田 ...
2002 年 99 巻 9 号 p.
1063-1068
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は56歳,男性.大量下血,ショック状態を呈し当センターへ搬送された.緊急上部消化管内視鏡検査では出血源を認めず,下部消化管内視鏡検査における終末回腸内の血液性状から空腸出血を強く疑った.引き続き腹部血管造影検査を施行したところ,上部空腸に血管外漏出像を認めた.緊急開腹下の術中内視鏡検査で,上部空腸に出血部位を確認し切除した.病理組織学的所見から小腸粘膜下動脈瘤破裂と診断した.本症に関する報告は少なく,かつ重篤で致死的経過をたどる症例も存在することから,迅速な診断・治療が必要と考えられ,ここに報告した.
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斉藤 哲彦, 名越 淳人, 坂本 伊知子, 白井 孝之, 三輪 剛, 峯 徹哉, 山本 壮一郎, 堂脇 昌一, 飛田 浩輔, 大谷 泰雄, ...
2002 年 99 巻 9 号 p.
1069-1074
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は58歳男性.主訴はタール便.上部消化管内視鏡検査にて,十二指腸下行部のファーター乳頭より1cm口側および3cm肛門側の2箇所に周囲に顆粒状隆起をともなう浅い陥凹性病変を認めた.生検所見は高分化型腺癌であった.幽門温存膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本にて病変は各々独立しており,いずれもwell differentiated adenocarcinoma,IIc,m,ly0, v0であった.陥凹型早期十二指腸癌の多発例の報告はまれで,m癌の多発例としては,本例は検索した範囲内で本邦2例目である.
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上平 晶一, 野尻 義文, 平川 隆一, 藤原 俊文, 井廻 道夫
2002 年 99 巻 9 号 p.
1075-1078
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は59歳女性,主訴は下腹部痛と下血.入院時大腸内視鏡検査にて下行結腸に縦走潰瘍と著明な浮腫を認め,虚血性大腸炎と診断された.症例は過去3回,同様の症状での入院歴があり,4回発症した虚血性大腸炎と考えられた.近年,再発例,再再発例の報告も増加しており,虚血性大腸炎は再発する疾患であるとの認識が必要と思われた.
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辻 宗史, 矢野 誠司, 高村 道生, 角 昭一郎, 仁尾 義則, 樋上 哲哉, 丸山 理留敬, 西川 睦彦
2002 年 99 巻 9 号 p.
1079-1084
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は65歳,女性.右下腹部腫瘤を自覚し,精査にて盲腸癌や粘膜下腫瘍が疑われた.術前,術中に確定診断は得られず,2群リンパ節郭清をともなう結腸右半切除術を施行.病理組織診断は盲腸原発MALTリンパ腫であった.本症の本邦報告は10例とまれで,標準的な治療法も確立していない.本症は術前,術中の確定診断が困難なことが多く,腫瘍周囲粘膜内に小病巣が残存する危険性があるため,現時点では,大腸癌に準じた術式が妥当と考えられた.
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高橋 祥, 高橋 稔, 高田 弘一, 河野 豊, 萩原 誠也, 秋山 剛英, 佐藤 勉, 土居 忠, 宮西 浩嗣, 佐藤 康史, 加藤 淳二 ...
2002 年 99 巻 9 号 p.
1085-1091
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は64歳,常習飲酒家男性.昭和60年よりアルコール性脂肪肝,平成9年よりアルコール性肝線維症と診断されていた,平成10年7月より著明な腹水貯留が出現し,各種保存的治療に抵抗性であった.静脈造影および血管内超音波検査にて肝部下大静脈および右・中・左肝静脈は,その各流出部において狭窄像を示し,静脈圧は,肝静脈と下大静脈の間に最大で68mmH
2Oの圧較差を認めた.また同狭窄部位からの静脈壁生検より,内膜の線維性肥厚を呈する血栓性静脈炎と診断された.以上より,本症例の門脈圧亢進の成因としては,アルコール性肝線維症に加えて肝静脈流出部の狭窄によるBudd-Chiari症候群が関与していると推察された.本症例の難治性腹水に対して,肝静脈流出部狭窄へのバルーン拡張術に加えて経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術を施行したところ,門脈圧は低下し,腹水は著明に減少した.
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澤田 傑, 尾関 豊, 角 泰広, 村瀬 勝俊, 吉田 直優, 松山 隆生, 大西 佳文
2002 年 99 巻 9 号 p.
1092-1096
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は78歳,男性.76歳時,腎細胞癌(淡明細胞癌)で右腎摘出術を受けた.経過観察のCTで肝右葉に約5×3cm大の高度に多血性の亜鈴型腫瘍を認めた.腎細胞癌の孤立性肝転移と診断し肝右葉切除術を施行した.病理組織学的に淡明細胞癌で,腎細胞癌肝転移と診断した.術後2年の現在,肺転移の治療中であるが肝再発は認めていない.切除が可能な腎細胞癌肝転移に対しては積極的な手術により予後の改善が期待される.
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今村 綱男, 吉田 仁, 石川 晶久, 片寄 耕蔵, 野津 史彦, 北村 勝哉, 池上 覚俊, 高橋 章, 新川 淳一, 田中 滋城, 石井 ...
2002 年 99 巻 9 号 p.
1097-1102
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は74歳,男性.腹部CTでgrade V,予後因子スコア11点でStage 3の重症急性膵炎(SAP)と診断.腹腔動脈および上腸間膜動脈より,nafamostat mesilate,imipenem/cilastatinの動注療法と持続的血液濾過透析を施行し,改善した.SAPに対する2経路からの動注療法の報告は少ないが,高齢のSAP症例を救命し得たことより,膵感染性合併症を回避し,有効な治療法として用いられるべきと考え報告した.
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柿木 嘉平太, 代田 幸博, 小浦 隆義, 岩田 章, 大原 弘隆
2002 年 99 巻 9 号 p.
1103-1107
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は15歳女性.原因不明の腹痛をくり返し当科入院となった.ERCP上主膵管は著明に拡張し,膵管内にB大径7mm大の膵石を多数認めた.膵石による腹痛と診断し,ESWLにて膵石除去を行った.遺伝子異常を疑いCationic trypsinogen (PRSS1) geneの解析を行ったところ,3rd exonにR122H mutationを認め,遺伝子異常による膵炎と診断した.若年発症膵炎の原因検索の際には遺伝子異常も考慮する必要があると考えられた.
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西脇 伸二, 小野木 啓人, 佐藤 寛之, 白木 亮, 岩下 雅秀, 黒田 剛仁, 林 隆夫, 前田 晃男, 飯田 辰美, 齋藤 公志郎
2002 年 99 巻 9 号 p.
1108-1113
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は50歳,男性,下血を繰り返し,精査加療目的で当科を紹介され受診した.腹腔動脈造影検査で膵頭部に胃十二指腸動脈によって早期に濃染される細小血管の増生と門脈の早期描出が認められ,動静脈奇形と診断した.また,上腸間膜動脈第一分枝起始部(空腸動脈)に動脈瘤が認められた.下血を繰り返し貧血が進行するため,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術および空腸動脈瘤切除術を施行し,根治し得た.
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藤原 圭, 加藤 秀章, 日下部 篤宣, 中村 中, 高井 弘之, 遠山 卓, 横江 正道, 根本 聴, 杉原 寛治, 林 勝男, 荻野 眞 ...
2002 年 99 巻 9 号 p.
1114-1118
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は,47歳,女性.主訴,腹部膨満,体重減少.腹水貯留のため当院入院となる.腹水は滲出性でヒアルロン酸が高値を示した.各種検査にて確定診断に至らず,腹膜中皮腫,結核性腹膜炎,癌性腹膜炎の鑑別診断のため試験開腹術を施行した.開腹所見では大網,腸間膜に無数の赤黄色調結節を認め,他臓器には異常を認めなかった.腹膜中皮腫が疑われたが,腺癌との鑑別のため電子顕微鏡での検討を行った.微絨毛の長さ/直径値(L/D ratio)の平均値が11を越え,腹膜中皮腫と診断した.腹水に対して腹腔内にシスプラチンの投与を繰り返し行ったが,3年10カ月後に死亡した.腹膜中皮腫の診断において電子顕微鏡像による検討は有用であると考えられた.
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神田 達郎, 横須賀 収, 千葉 哲博, 小島 広成, 深井 健一, 今関 文夫, 税所 宏光
2002 年 99 巻 9 号 p.
1119-1121
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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吉松 英輝, 高塚 健太郎, 岩渕 省吾
2002 年 99 巻 9 号 p.
1122
発行日: 2002/09/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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