日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
116 巻, 1 号
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特別寄稿―第104回総会会長講演―
  • 小池 和彦
    2019 年 116 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル フリー

    ウイルス肝炎における肝発癌機序解明を中心とする研究を,主に実験的な方法を用いて検討してきたが,出発点は自身の経験した症例であった.炎症や肝線維化のない若いB型肝炎患者での肝癌発生,早期C型慢性肝炎における肝脂肪化の高率な発生という臨床的観察から,肝発癌や代謝において肝炎ウイルスがもつ病原性発生の機序を明らかにした.また,「C型肝炎は代謝性疾患である」という新たなパラダイム提出から,増加する代謝関連肝癌の病態解明へと進むことができた.肝炎,肝癌との戦いの中で勝利を感じている肝臓医は多いと思われるが,肝炎ウイルスという外敵に勝利しても,代謝関連肝癌という内なる敵が待ち受けている.戦いは終わらない.

今月のテーマ(総論):新しい時代を迎える肝細胞癌の薬物治療と展望
  • 工藤 正俊
    2019 年 116 巻 1 号 p. 8-17
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル フリー

    2007年に分子標的薬ソラフェニブが登場して以来,肝細胞癌に対する薬物療法は大きく変化した.遠隔転移,脈管浸潤に対する治療選択肢が増え,肝癌の進行状態でもある程度長期生存が得られるようになったが,縮小効果が乏しいことや手足症候群などの比較的強い毒性から,ソラフェニブに代わる新規分子標的薬やソラフェニブ治療に進行性の二次治療薬の開発が精力的に進められてきた.しかし多くの臨床試験が10年間失敗し続けた後,2017年と2018年の2年間で立て続けに4剤(レゴラフェニブ,レンバチニブ,カボザンチニブ,ラムシルマブ)が臨床試験に成功した.また,免疫チェックポイント阻害薬も単剤,コンビネーションともに治験が進行中である.

今月のテーマ(総説):新しい時代を迎える肝細胞癌の薬物治療と展望
  • 海堀 昌樹, 石崎 守彦, 松井 康輔
    2019 年 116 巻 1 号 p. 18-27
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル フリー

    本邦で進行肝細胞癌治療に対するソラフェニブ登場後9年が経過し,その使用経験から高齢者での忍容性,開始用量,予後予測因子,導入タイミングなど多岐にわたる検討がなされてきた.その後,レゴラフェニブやレンバチニブが承認され,今後もさらなる薬剤の承認が見込まれているが,予後延長のための各薬剤の明確な投与順序はまだ定まっていない.これまでのエビデンスを基に考慮するとソラフェニブの後治療にはレゴラフェニブや今後承認される薬剤などがあり,使用経験が豊富なソラフェニブを基軸とした集学的治療を開始し,適切なタイミングで次治療へ移行することが進行肝癌の予後延長につながると期待される.

  • 小笠原 定久, 大岡 美彦, 加藤 直也
    2019 年 116 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル フリー

    進行肝細胞癌においてソラフェニブの有効性が示されて以降,複数の有望な化合物の開発治験が不成功に終わった.ほぼ10年間の“進行肝細胞癌に対する薬物治療開発の不毛時代”の後,進行肝細胞癌に対する2剤目の有効性を示したチロシンキナーゼ阻害薬がレゴラフェニブである.適正使用の啓蒙により,当初懸念されていた有害事象のマネージメントも難渋することは多くない.進行肝細胞癌において複数のチロシンキナーゼ阻害薬が使用できる“マルチ・チロシンキナーゼ阻害薬時代”が到来したといえる.今後,より適切な症例にレゴラフェニブを使うべく,チロシンキナーゼ阻害薬の選択の根拠となり得るリアルワールドデータが求められている.

  • 小林 正宏
    2019 年 116 巻 1 号 p. 36-44
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル フリー

    肝細胞癌に対する分子標的治療は長らくソラフェニブのみであった.2017年6月に二次治療としてレゴラフェニブが登場し,2018年3月にはレンバチニブが一次治療として使用可能となった.レンバチニブは受容体型チロシンキナーゼ阻害薬でVEGFRやFGFRに対して強い阻害活性があり,血管新生阻害,腫瘍増殖抑制の効果を有する.レンバチニブは,国際共同第3相試験(REFLECT試験)で対照薬であるソラフェニブに対して主要評価項目である全生存期間(OS)の非劣性と,副次評価項目である無増悪生存期間(PFS),無増悪期間(TTP),奏効率において優位性を証明した.2017年に改訂された肝癌診療ガイドラインでも肝癌薬物療法の重要性が増しており,その中でレンバチニブは中心的役割を担っている.有害事象のプロファイルはソラフェニブと異なる特徴があり,高血圧,蛋白尿,甲状腺機能異常,肝性脳症などに注意が必要である.

  • 奥坂 拓志, 池田 公史
    2019 年 116 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/01/10
    ジャーナル フリー

    免疫チェックポイント機構の発見は最近のがん治療の発展に大きな貢献を果たしている.2011年に米国において抗CTLA-4抗体Ipilimumabが悪性黒色腫に対して承認されたのを皮切りに,抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体が複数の癌種においてすでに承認され,臨床導入されている.肝細胞がんに対しても数多くの臨床試験が行われており,その成果が大きな期待とともに待たれている.免疫チェックポイント阻害剤は分子標的治療薬や局所療法との相乗効果も示唆されており,肝細胞がんに対する既存の標準治療への併用も期待されている.免疫チェックポイント阻害剤の登場により肝細胞がんの治療はいま大きな変革期を迎えようとしている.

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