日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
120 巻, 6 号
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特別寄稿
今月のテーマ(総論):胃癌に対する胃切除術の進歩
  • 宇山 一朗, 柴崎 晋, 須田 康一
    2023 年 120 巻 6 号 p. 456-461
    発行日: 2023/06/10
    公開日: 2023/06/12
    ジャーナル 認証あり

    本邦において胃癌手術は減少傾向にあるが,罹患率,死亡率ともに高い疾患である.外科的治療は拡大手術が主流であったが,化学療法の進歩にともない,集学的治療が中心となっている.補助化学療法のコンプライアンスを向上させるためにも,腹腔鏡手術のような低侵襲手術が開発され普及してきている.また従来型腹腔鏡手術の欠点を補完する内視鏡手術支援ロボットも出現し,遠隔操作も可能な時代となってきた.総論では胃癌手術の歴史と現状,そして将来展望について述べ,総説では各術式において第一線の先生方に詳細な解説をお願いした.

今月のテーマ(総説):胃癌に対する胃切除術の進歩
  • 中川 正敏, 小嶋 一幸
    2023 年 120 巻 6 号 p. 462-467
    発行日: 2023/06/10
    公開日: 2023/06/12
    ジャーナル 認証あり

    胃癌手術はBillrothによる幽門側胃切除術の成功に始まり,Mikuliczによるリンパ節郭清の体系化を受け,切除郭清範囲が拡大した.わが国では胃癌研究会による全国胃癌登録の膨大なデータ解析を経て,D2郭清手技が確立した.1980年代以降,胃癌手術のRCTが欧州と日本で展開され,経験を積んだ外科医によるD2リンパ節郭清が,早期癌を除く胃癌に対して標準術式となった.腹腔鏡下手術は開腹手術とのRCTにおいて,低侵襲性,安全性,根治性が示された.ロボット支援手術は,開腹・腹腔鏡下手術との臨床試験でエビデンスが構築されつつある.今後ロボット支援手術の優越性が示されることが期待されている.

  • 河口 賀彦, 赤池 英憲, 市川 大輔
    2023 年 120 巻 6 号 p. 468-474
    発行日: 2023/06/10
    公開日: 2023/06/12
    ジャーナル 認証あり

    噴門側胃切除術は,胃上部の早期胃癌に対して行われる縮小手術である.胃を1/2以上残すことにより貯留能を維持し,食物が残胃から十二指腸,空腸へと通過することにより胃全摘術に比較して体重減少,ダンピング症候群,間食の頻度,仕事や日常生活への不満,貧血の程度を軽減させるなど利点も多い術式である.しかし食道と残胃をそのまま吻合した場合,高率に逆流性食道炎を発症することから,さまざまな工夫がなされている.代表的なものとして,逆流防止機構を付加した食道残胃吻合,空腸間置法,ダブルトラクト法がある.また残胃癌の発生率も比較的高いことが報告されているため,術後の残胃の観察も長期的に必要である.

  • 鳥海 哲郎, 櫻本 信一
    2023 年 120 巻 6 号 p. 475-481
    発行日: 2023/06/10
    公開日: 2023/06/12
    ジャーナル 認証あり

    胃癌に対する胃全摘術はわが国では1902年に報告された.1940年代から1980年代には切除範囲を拡大した手術が実施されたが,1990年代にD2リンパ節郭清をともなった胃切除術が標準となった.低侵襲手術として開発された腹腔鏡下手術は2000年代に全国に普及し,2010年代後半からロボット支援下手術も導入された.近年手術関連機器の開発が目覚ましく,縫合不全の減少や手術時間の短縮と出血の少ない手術に寄与し,術式も術後QOLを重視するように変遷している.また,映像システムの進歩により微細な外科解剖のもとに精緻な手術が実施可能となった.本稿では胃全摘術の進歩について代表的な臨床試験を踏まえて概説する.

  • 篠原 尚, 倉橋 康典, 石田 善敬
    2023 年 120 巻 6 号 p. 482-491
    発行日: 2023/06/10
    公開日: 2023/06/12
    ジャーナル 認証あり

    胃癌手術におけるリンパ節郭清に関しては,「転移があり得るリンパ節を徹底的に郭清することで癌を治癒させる」とする本邦の拡大路線と,乳癌に倣って「リンパ節転移をきたした癌はすでに全身病であり,郭清は無意味である」とする欧米の縮小路線が相容れない時代が長らく続いたが,現時点ではD2郭清が,その長期予後の優位性をもって推奨術式とされている.大腸癌で提唱された腸間膜切除の概念を胃癌にあてはめることによって,D2郭清に理論的根拠が与えられた.ただし,著しい薬物療法の進歩は今後,手術の役割さえも変化させる可能性があり,D2郭清が最適な術式であるかどうかは検証し続ける必要がある.

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