日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
97 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 樋渡 信夫
    2000 年 97 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 2000/02/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    クローン病に対する内科的治療の最近の進歩について解説した.活動期の治療として,本邦では栄養療法が第1選択になっているが,欧米ではRCTの成績よりステロイド療法が主体である.この差異は治療期間,経腸栄養剤の組成,QOL,保険制度などの違いによると考えられる.以前から用いられてきたサラゾピリン®やプレドニゾロンに変わって,より副作用の少ない製剤が開発されてきた.また病態に応じた,抗CD4抗体,抗TNF-α抗体,IL-10,抗接着分子療法,白血球除去療法,免疫統御療法,ヘパリン,EPAなどで臨床治験が進んでおり,一部は有用性が確認され日常臨床で施行されている.
  • 平岡 武久
    2000 年 97 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 2000/02/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    膵癌治療の現況について,本邦では拡大郭清手術が推進されてきたにもかかわらず,飛躍的治療成績向上に結びつかず,また欧米の標準郭清手術の成績に比較しても差がない理由がどこにあるのか言及した.両者の比較は単純には出来ないが,本邦では切除率は高いものの進行癌を対象としており,一方欧米では切除率が低く,症例が選択されている可能性があるが,進行膵癌に対し局所制御を求めても主に血行性転移による死亡のため,局所制御の効果が成績に反映されていないことによると思われる.それゆえ,今後の膵癌治療における外科治療は,有効な血行性転移対策がない現状では,いたずらに拡大郭清手術を適応することなく,進行度に応じて症例を選択し,その適応を適正化していくことが肝要である.
  • 日高 道生, 須藤 一郎, 宮岡 正明, 斎藤 利彦
    2000 年 97 巻 2 号 p. 161-169
    発行日: 2000/02/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    炎症性腸疾患患者の糞便α1-アンチトリプシン(α1-AT),α2-マクログロブリン(α2-M).リゾチーム(Lz),ラクトフェリン(Lf)濃度を健常対照26症例41検体,潰瘍性大腸炎(UC)32症例73検体,クローン病(CD)21症例52検体で測定し,腸管内の活動度をUC4群,CD2群に分け比較した.測定法はα1-ATがラテックス凝集比濁法,それ以外はELISA法で行った.糞便蛋白濃度はUCにおけるα1-ATを除き活動度の増加にともない高値となった.α2-M,LzおよびLfは中等度,強度群のUCで,α2-M,Lfは,潰瘍(+)群のCDで血液炎症マーカーやactivity indexに比べ有意に陽性率が高かった.以上より活動性指標としてUCではα2-M,LzおよびLfが,CDではα2-MとLfの濃度測定は有用と思われた.
  • 小川 明子, 渡辺 心, 大橋 薫, 児島 邦明, 深澤 正樹, 別府 倫兄, 二川 俊二, 松本 俊治
    2000 年 97 巻 2 号 p. 170-174
    発行日: 2000/02/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性.平成8年より慢性C型肝炎と診断される.平成9年には食道および十二指腸に静脈瘤が出現.平成10年に入り黒色便が出現し入院となる.明らかな出血点は不明であったが,LmF2RC(-)の食道静脈瘤と,十二指腸下行脚にもF2RC(-)の静脈瘤を認めた.血管造影で十二指腸静脈瘤の流入路・流出路が造影され,手術所見でも確認できたため,Hassab手術に加え,十二指腸静脈瘤結紮術を施行した.経過は良好であった.
  • 吉井 貴子, 吉川 貴己, 小林 理, 西連寺 意勲, 亀田 陽一
    2000 年 97 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 2000/02/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    胃癌では副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)に関する報告は少ない.今回我々は,胃癌根治術後早期に高Ca血症,高PTHrP血症をともなって再発し,治療に抵抗した1例を経験した.経過中血中Ca値はLDHと同様に上下し,血中PTHrPは著増した.免疫組織染色では胃癌細胞がPTHrPを産生し,転移巣で数が増えていることが証明された.以上より,胃癌で組織中のPTHrP発現が胃癌の予後因子となる可能性について検討,報告する.
  • 伊東 祐一, 小暮 洋暉, 田島 充, 近藤 智雄, 山口 英見, 北 順二, 大井田 宗継, 門馬 公経, 平林 かおる, 藤盛 孝博
    2000 年 97 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 2000/02/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    大腸憩室の中で横行結腸憩室穿孔の報告は非常にまれで,文献的考察を加えて報告する.症例は45歳の女性.主訴は左下腹部痛.腹部理学的所見で,左下腹部に熱感をともなった手拳大の腫瘤を触知し,同部位に限局性の腹膜刺激所見を認めた.腹部CTでは,左下腹部に径約4cmで円形の高吸収域と周囲に低吸収域をともなう腸管腫瘤像を認めた.閉塞症状が出現したため,イレウス管を挿入して造影を行ったが小腸の通過は良好であった.ガストログラフィンを使用した注腸造影では,横行結腸の完全閉塞像が認められ,腫瘍による限局性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.手術は腫瘤を含む横行結腸部分切除術を行った.病理組織学的には真性憩室による穿孔と診断された.
  • 高橋 浩, 藤原 隆雄, 野呂 明弘, 折居 正之, 佐藤 邦夫, 佐藤 俊一, 鈴木 一幸, 樋口 太郎, 上杉 憲幸, 菅井 有, 中村 ...
    2000 年 97 巻 2 号 p. 186-190
    発行日: 2000/02/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    患者は61歳,女性,便潜血反応陽性のため近医受診し回盲部に腫瘤を認めたため精査目的で紹介となった.大腸内視鏡検査で回盲部に表面平滑なドーム状の腫瘤を認めた.CT上low densityで一部にhigh densityの索状な部位を認め,腫瘤の一部は上行結腸内腔に突出していた.MRIではT1強調像でlow,T2強調像ではhigh signal intensityで,内部に隔壁様の所見を認めた.切除標本では腫瘍の本体は回腸腸間膜より発生し回盲部に浸潤していた.回盲部に突出した部分はほとんどが腫瘍に置き換わっていたが,一部に上皮の残存を認めた.組織は短紡錘型ないし紡錘型の腫瘍細胞が束状に配列し,大型の核異型の強い細胞,多形性に富んだ細胞あるいは多核の細胞がびまん性に多数認められた.一部にstriform patternを認め,免疫組織化学染色の結果と合わせて,悪性線維性組織球腫(MFH)と診断した.その後,回腸腸間膜に複数の再発を認め追加切除を施行したが,11月29日死亡した.
  • 渡邉 泰樹, 平野 雅弘, 喜多嶋 和晃, 沖田 敬, 鎗水 隆, 秋月 真一郎
    2000 年 97 巻 2 号 p. 191-194
    発行日: 2000/02/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は,68歳,男性.脳梗塞後遺症,心房細動の既往あり.下腹部痛,悪心,嘔吐にて入院.腹部CT造影検査にて回腸末端部より口側回腸に壁肥厚を認め,小腸X線造影検査では約40cmにおよぶ管状狭窄を認めた.下部消化管内視鏡検査で,回腸末端に全周狭窄性潰瘍病変を認めた.狭窄が高度であったため,開腹手術を施行し,切除標本の病理組織所見より,狭窄型の虚血性小腸炎と診断した.
  • 中村 俊幸, 岸本 恭, 下澤 信彦, 小池 祥一郎, 清水 忠博, 久米田 茂喜, 渡辺 豊昭, 中澤 功, 重松 秀一
    2000 年 97 巻 2 号 p. 195-198
    発行日: 2000/02/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    梅毒性直腸炎は報告が少なく,非常にまれな疾患である.今回われわれは同性愛者の梅毒性直腸炎の1例を経験したので若干の文献的考察を含めて報告する.患者は40歳の男性,同性愛者で過去に肛門性交歴があった.主訴は肛門からの出血と疼痛で,内視鏡で下部直腸に潰瘍性の病変を認めた.生検で病変部のTreponema pallidumが証明され,梅毒性直腸炎と診断された.
  • 飯村 光年, 飯塚 文瑛, 岸野 真衣子, 篠崎 幸子, 山岸 直子, 本間 直子, 中村 哲夫, 鈴木 忠, 鈴木 茂, 林 直諒
    2000 年 97 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 2000/02/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    特発性慢性偽性腸閉塞(CIIP)は消化器に器質的狭窄がなく,基礎疾患もないにもかかわらず長期に渡ってイレウス症状を繰り返す病態の総称である.また,腸管嚢腫様気腫(PCI)は腸管壁内に気腫を形成し,しばしば腹腔内遊離ガスの出現をみる疾患である.今回われわれは,薬物治療に抵抗性であった,気腹を伴うPCIを合併したCIIPに高圧酸素療法(HBO)が著効した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 山内 希美, 尾関 豊, 角 泰廣, 山田 卓也, 小山 洋
    2000 年 97 巻 2 号 p. 204-208
    発行日: 2000/02/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    膵管胆道合流異常をともなった原発性胆嚢印環細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は38歳,女性.右季肋部痛で発症し,急性胆嚢炎と診断され当院を紹介された.右季肋部に圧痛を認め,血液検査でWBC12200/mm3と上昇を認めた.超音波検査で胆嚢は腫大し,壁は肥厚していたが胆石は認めなかった.ERCPで三管合流部が右側から圧排され,経皮経肝胆嚢造影では胆嚢管は開存していたが,不整に狭窄していた.また膵管胆道合流異常を認めた.胆嚢管癌の疑いで手術を施行した.開腹所見で胆嚢は全体に腫瘍性病変を呈し,胆嚢管から肝十二指腸間膜に至るまで白色硬化していた.胆嚢壁の術中迅速組織診は印環細胞癌で,胆管胆汁中のアミラーゼ値は27万単位であった.胆嚢に原発する印環細胞癌は本邦報告11例とまれである.
  • 樋口 良太, 渡邊 文利, 堀尾 嘉昭, 景岡 正信, 岩崎 央彦, 杉本 健, 本田 聡, 北山 康彦
    2000 年 97 巻 2 号 p. 209-212
    発行日: 2000/02/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    46歳の女性が,腹部超音波検査で最大径40mmの胆嚢隆起性病変を指摘され,精査のため入院した.病変は,CTでは不均一に造影された.EUSで,内部は実質エコーで,表面は小結節状であり外側エコーは保たれていた.また,近傍に丈の低い隆起をともなっていた.腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.病理学的に乳頭状腺癌と診断した.全割切片による検索では,胆嚢全体に粘膜内進展しており,一部で固有筋層に浸潤していた.
  • 宮西 浩嗣, 渡辺 秀樹, 林 修也, 潘 紀良, 堀本 正禎, 乾 典明, 小野寺 義光, 佐藤 康裕, 林 毅, 藤田 朋紀, 小田 一 ...
    2000 年 97 巻 2 号 p. 213-217
    発行日: 2000/02/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.総胆管結石による黄疸と肝機能障害を契機に発見された膵仮性嚢胞が経過観察中に総胆管と瘻孔を形成し自然消失した.膵仮性嚢胞の合併症としては感染,出血および穿破が挙げられ,穿破した臓器として胃,十二指腸および大腸の報告例が散見される.しかし総胆管との瘻孔形成は極めてまれであり,その臨床経過に文献的考察を加え報告する.
feedback
Top