日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
109 巻, 2 号
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総説
  • 田中 雅夫
    2012 年 109 巻 2 号 p. 165-172
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/06
    ジャーナル フリー
    IPMNの認識と理解は深まったが問題はいくつかある.混合型の分類を画像診断でするのか組織学的にするのかが曖昧であるが,手術適応に影響するから術前に画像診断で行うのが望ましい.IPMNと非粘液性嚢胞との鑑別は手術適応を左右するが不確実な例もある.EUS-FNAで得た内容液の分析が有用であるが適応拡大して悪性度診断に使う場合の安全性は未確認である.分枝型IPMNの悪性度診断は壁在結節が最良因子であるが他は信頼度が低く,嚢胞径3cm以上を切除すると約80%が良性で,組織学的亜型を含め,より精度の高い悪性指標を要する.経過観察の目標は悪性化,併存癌および切除後再発の診断であるが,方法と間隔と期間は未解決である.
今月のテーマ:IPMNをめぐる諸問題
  • 福嶋 敬宜
    2012 年 109 巻 2 号 p. 173-177
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/06
    ジャーナル フリー
    膵管内腫瘍は,膵管内に増殖する上皮性腫瘍の総称でありいくつかに亜分類できる.まず,粘液産生の有無と組織構築によって膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と膵管内管状乳頭腫瘍(ITPN)に分けられる.次にIPMNは,腫瘍発生部位や異型度による分類の他,細胞分化をもとにした組織亜型分類が提唱されてきており,WHO分類にも採用されている.それぞれの亜分類は臨床病理学的にもそれらの意義が明らかになりつつあり,病変に応じたきめ細かい診断,治療に向けて,今後ますます重要性が増すと考えられる.
  • 多田 稔, 小池 和彦
    2012 年 109 巻 2 号 p. 178-182
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/06
    ジャーナル フリー
    膵嚢胞性膵腫瘍で最も多いintraductal papillary mucinous neoplasm(IPMN)は,嚢胞状の上皮に占める腫瘍部分から上皮内癌を経て浸潤癌化するのみならず,通常の膵癌発生の合併をともなうことがある.したがって,IPMN自体が前癌病変であるが,さらに通常の膵癌も発生する,膵癌の高危険群の目印となる病変と認識した対応が必要である.
  • 山口 幸二, 皆川 紀剛, 金光 秀一, 田村 利尚
    2012 年 109 巻 2 号 p. 183-189
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/06
    ジャーナル フリー
    IPMNは主膵管型(+混合型),分枝型に分けられる.主膵管型は悪性例が多く,全例手術の適応となる.一方,分枝型は良性例が多く,嚢胞径(>3cm),壁在結節,有症状,主膵管拡張,膵液細胞診陽性などで悪性度を評価し,手術適応と経過観察に分かれる.分枝型IPMN自体の経過観察においては,以上のような因子をどのような画像診断で,どのような間隔で観察していくかが,問題となる.分枝型IPMNでは離れた膵臓に通常型膵癌の併存が報告され,IPMN自体とともに周辺の膵臓にも注意を要する.また,IPMNでは同時性,異時性に膵臓以外の臓器に悪性腫瘍が併存することも報告され,こうした点にも分枝型IPMNの経過観察では注意する必要がある.
  • 藤田 直孝, 野田 裕, 小林 剛, 伊藤 啓, 尾花 貴志, 洞口 淳, 越田 真介, 菅野 良秀, 小川 貴大, 枡 かおり
    2012 年 109 巻 2 号 p. 190-197
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/06
    ジャーナル フリー
    IPMN診療上の内視鏡の果たす役割と問題点について,国際診療コンセンサスガイドライン(以下,ガイドライン)にも言及しながら述べた.内視鏡はERCPとEUSが両輪となってIPMN診断の中心的役割を果たしている.症例に応じてIDUS,POPSによる検索が追加される.特に分枝型IPMN例の多くは経過観察が可能である.ガイドラインでは嚢胞径を分岐点として診療方針が示されているが,30mm以上を切除することは特異度の点で問題がある.手術適応決定には壁在結節(乳頭状隆起)の評価が最も重要で,主膵管拡張も参考になる.これらの検索にはEUS,IDUSが有用である.併存浸潤癌の発生,サブタイプと予後の関連なども知られるようになり,今後さらなる研究の展開が興味深い.
原著
症例報告
Letters to the Editor
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