日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
119 巻, 8 号
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今月のテーマ(特別寄稿):急性膵炎診療の最前線
  • 高田 忠敬
    2022 年 119 巻 8 号 p. 695-696
    発行日: 2022/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    急性膵炎診療ガイドライン2021は,2016年の全国調査結果から,①致命率の改善が見られない症候群の存在と,②ガイドラインの推奨が実践されていない治療法があることがわかり,それらを明示し対応策を記載した.致命率が高い症例に絞り対応としてPancreatitis Bundlesの実施と遵守が効果的であることを強調した.経腸栄養の必要性,予防的抗菌薬投与の不要を示した.ガイドラインが広く普及することとともに理解が深まることを祈念して,世界で初めての試みである“やさしい解説”を取り入れ,さらに,QRコードを参考資料の理解を得るためにまんべんなく用いた.担当医師のみならず,医療従事者,患者・家族にも容易に理解できるガイドライン作成を行った.

今月のテーマ(総論):急性膵炎診療の最前線
  • 真弓 俊彦, 高田 忠敬, 吉田 雅博
    2022 年 119 巻 8 号 p. 697-703
    発行日: 2022/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    本邦初のEBMの手法を用いて作成され,2003年に刊行された急性膵炎診療ガイドラインは,その後も常に最新の手法に則って作成されてきた.第5版は全国調査で明らかになった知見を基に2021年に改訂された.早期経腸栄養の促進,予防的抗菌薬の投与不要が強調され,ステップアップ・アプローチの内容がより具体的に記述されたPancreatitis bundlesも改訂され,モバイルアプリもup dateされた.参考資料はQRコードで閲覧できるようにし,冊子を薄くした.特筆すべき点は,「やさしい解説」を新設し,コメディカルや患者・家族にも理解していただけるようにしたことである.

今月のテーマ(総説):急性膵炎診療の最前線
  • 井上 大, 小森 隆弘, 蒲田 敏文
    2022 年 119 巻 8 号 p. 704-711
    発行日: 2022/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    急性膵炎は発症から数日で病態が急激に変化することがあること,重症膵炎では急性期以降も合併症の把握,治療介入が必要であることから常に変化する病態を正確に把握するために画像診断によってもたらされる情報が重要である.特にその主力をなすのがダイナミックCTであり,時間分解能,空間分解能の高さや腸管ガスなどによる死角がないといったアドバンテージを有し,膵臓の形態学的な評価に加え,壊死の有無や周囲への炎症波及の程度,範囲,血管系の合併症などの把握に威力を発揮する.急性膵炎診療においてはダイナミックCT所見を中心に急性膵炎で生じ得る膵実質の変化,局所合併症(ANC,WONなど)の画像所見を熟知しておくことが重要である.

  • 岡本 好司
    2022 年 119 巻 8 号 p. 712-720
    発行日: 2022/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    ガイドラインが普及するにつれ,急性膵炎の診療成績は向上した.しかし,致命率の高い重症例も一定数ある.臨床の現場では,慣習に囚われて,ガイドラインで実践すべきとされたことを行わなかったり,逆に行ってはいけないことを漫然と行ったりする事例がいまだに多い.発症48時間以内の早期経腸栄養が開始されなかったり,不要な予防的抗菌薬が高頻度に使用されたりしている.診療で行うべき検査や治療を,Pancreatitis Bundles 2021として作成した.Pancreatitis Bundles 2010や2015の項目を遵守するほど予後が改善されるとのエビデンスがあり,今後の急性膵炎診療に是非臨床指標として用いて欲しい.

  • 向井 俊太郎, 糸井 隆夫
    2022 年 119 巻 8 号 p. 721-732
    発行日: 2022/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    膵炎後の膵局所合併症に対して,感染合併例や有症状例は侵襲的治療を要する.まずはドレナージを行い,効果が不十分であればさらに侵襲が大きい治療を追加していくstep-up approachが推奨されている.中でも,超音波内視鏡下ドレナージと内視鏡的ネクロセクトミーによる経消化管的治療を主軸とした内視鏡的step-up approachの良好な治療成績が報告されている.専用大口径ステントが本邦でも保険収載され,さらなる治療成績の向上が期待されている.しかし,骨盤腔に及ぶような病変に対しては,内視鏡治療単独では限界もあり,経皮的治療や外科的治療の併用を検討すべきである.

  • 岩崎 栄典, 堀部 昌靖, 金井 隆典
    2022 年 119 巻 8 号 p. 733-743
    発行日: 2022/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)は,肝胆膵疾患の診断・治療に必須の内視鏡処置として日常臨床で広く行われている.その一方でERCP処置に関連した膵炎(ERCP後膵炎)は頻度が高く,重症化リスクのある深刻な偶発症である.臨床的に重要な課題であり,多くの臨床研究が行われ,有効な予防法として直腸内NSAIDs投与,予防的膵管ステント挿入,急速輸液療法などが実臨床で使用されている.本稿を通じてERCP後膵炎の発症を可能な限り予防し,迅速な診断と対処,初期治療を行うシステム作りについて言及したい.

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