画像診断,医療機器の進歩にもかかわらず胆道狭窄の診断・ドレナージは困難であることが多く,解決すべき問題が山積している.鑑別診断・進展範囲診断は生検病理診断に頼ることが多いが,感度が低いことが問題である.膵炎など偶発症の観点からも,肉眼型,想定術式など症例に応じて生検すべき場所・個数・方法などメリハリをつけた検査施行が必要である.ドレナージは,従来の経乳頭的アプローチに加え,超音波内視鏡ガイド下でのアプローチも導入されてきた.播種の可能性や患者の生命予後,苦痛などを考慮して方法を選択する必要がある.患者の生活の質と予後を改善するために,内視鏡医はさまざまな内視鏡検査法を理解し使いこなす必要がある.
胆管狭窄は胆管もしくは胆管外病変で生じ,それぞれ悪性と良性疾患がある.画像診断はこれらの鑑別が重要で,悪性疾患と診断した際は病期診断も必要となる.胆管癌では,CTとMRIで胆管狭窄部に壁肥厚と濃染を認め,上流胆管の拡張をともなっている.MRCPは胆管狭窄部の部位と形状の評価が容易で,MRIの拡散強調像は異常部位の同定に優れている.胆管癌と鑑別を要する疾患にIgG4関連硬化性胆管炎がある.両者は類似した画像所見を呈するため,複数の画像所見から総合的に鑑別を進める必要がある.またPET-CTはリンパ節転移や遠隔転移の診断能がCTやMRIよりも優れており,進行した癌病変では考慮される検査である.
胆道狭窄をきたす疾患は多岐にわたり,悪性では胆管癌,良性ではIgG4関連硬化性胆管炎や原発性硬化性胆管炎が代表的疾患である.胆道狭窄病変に対する内視鏡的診断方法としては,内視鏡的逆行性胆管造影(ERC)関連と超音波内視鏡(EUS)関連の大きく2つの検査法に分けられる.これらの疾患の鑑別においては,ERC関連である胆管腔内超音波,ERC下胆管細胞診・生検,経口胆道鏡などの検査法が中心となる.胆道狭窄病変の確定診断には病理組織学的診断が重要であるが,ERC下胆管生検を中心としたその診断能は十分とはいえず,EUS関連も含めた検査法を組み合わせて診断を行う必要がある.
胆道狭窄病変は閉塞性黄疸・胆管炎の原因となるため胆道ドレナージが必要で,経乳頭的ドレナージが果たす役割が大きい.根治術の実現性,狭窄部位により治療ストラテジーが異なる.術前の場合は,周術期の偶発症を減らすことが重要であり,ドレナージの必要性自体の議論も重要となる.非切除では,安全に薬物治療が行え,生活の質が維持できることが重要であるが,再治療時の簡便さにも気を配る必要がある.経乳頭的ドレナージには,外瘻法である内視鏡的経鼻胆管ドレナージ,内瘻法である内視鏡的胆管ステント留置術があり,さらにステントには太さや材質などさまざまな種類が存在する.各々の治療ストラテジーにより適切に使い分ける必要がある.
EUS-guided biliary drainage(EUS-BD)の軌跡と今後の展望について述べる.EUS-BDの開発当初は,ERCP不成功例に対してPTBDよりもメリットが大きいことから注目されてきたが,偶発症も多かった.現在では手技の改良および処置具の開発により偶発症は減少し,普及にも成功している.ERCP施行前だが困難が予測される症例や,良性疾患にも応用が始まっている.処置具の開発は今後も継続して行われる見通しであり,EUS-BDのさらなる安全性の担保および適応拡大が予想される.
症例は60歳代女性.35歳時潰瘍性大腸炎を発症,47歳時回腸囊肛門管吻合術.49歳時に関節リウマチと診断されメトトレキサート開始.術後回腸囊炎に対し長期ステロイドを投与され,中等症の状態が持続.64歳時ステロイドを漸減し,アザチオプリンを開始してステロイドは中止したところ赤沈の亢進を認め,ウステキヌマブ投与を開始して,著効,寛解に至った.潰瘍性大腸炎術後回腸囊炎に対しウステキヌマブで寛解導入した報告は本邦初である.
症例は89歳男性.粘膜下腫瘍の経過観察中に腫瘍の増大と形態変化をきたし,上行結腸癌が判明した.腹腔鏡補助下結腸右半切除,D3リンパ節郭清を施行し,切除標本で大腸癌がlipohyperplasiaの基部に発生し,下方に潜り込む形態で発育することで粘膜下腫瘍様の肉眼的形態変化を呈した.大腸癌と脂肪組織由来腫瘤の合併に関する報告例は散見されるが,本症例のような発育形態はまれであった.
76歳女性.急性胆管炎の治療時にMRCPで胆管結石と重複胆管が疑われた.ERCPで膵・胆管合流異常が併存する重複胆管および胆管結石と診断し,重複胆管切除術および胆管空腸吻合を行った.重複胆管は,治療方針決定のために型分類や胆管結石の有無を確認するだけでなく,膵・胆管合流異常や悪性腫瘍の合併の可能性を念頭におき診療に臨む必要がある.
症例は83歳男性.17年前に胆囊結石症に対して腹腔鏡下胆囊摘出術の既往あり.今回,総胆管結石に対する内視鏡治療の際,胆管内に可動性のない透亮像を認めたため胆汁細胞診を行ったが,診断に有用な病理検体は得られなかった.後日EUSを行ったところ,一部総胆管に突出する胆囊管の腫瘤を認めたため,EUS-FNAを施行し,adenocarcinomaの病理診断を得た.遺残胆囊管癌と診断し,肝外胆管・胆囊管切除が行われ,診断が確定した.