日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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72 巻, 4 号
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  • 吉羽 宣男, 須藤 宏
    1975 年 72 巻 4 号 p. 339-354
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    胃粘膜が障害された場合, どのような反応を生じるかを細胞増殖の面から検索した. ラット胃粘膜に欠損 (びらんおよび潰瘍) を手術的に作成し, その治癒過程を3H-thymidine antoradiograph および連続切片で組織学的に検索した. I. ラットの胃底腺領域に粘膜の表面側半層が欠損したびらんを作成した. 2日後にびらん部に標識腺細胞が出現し, 成熟腺細胞が増殖細胞化することを示した. 5日後に幽門腺様組織を形成し, 10日後に腺窩上皮が出現した. II. ラット胃に粘膜欠損を手術的に作成した. 潰瘍辺縁の未分化細胞が多数標識されるのみでなく, 2日後では潰瘍辺縁の腺底部に標識腺細胞が独立的に出現した. すなわち, 辺縁の成熟腺細胞も増殖細胞化することを示した. この腺細胞から新生腺管が形成され (3日以後), ついで潰瘍底へ侵入した. III. ラット胃潰瘍を連続切片で観察し, 再生粘膜を立体的に検索した. その結果, 胃粘膜の再生は, 潰瘍辺縁に既存する未分化細胞が増殖するのみでなく, 辺縁の腺底部から再生腺組織が形成された.
    従来, 一般的に, 胃粘膜の再生は腺頚部付近にある未分化細胞 (幹細胞) のみが行うと考えられてきたが, 本研究により, 腺底部の成熟腺細胞も増殖細胞化し, 再生に関与することが明らかとなつた.
  • II. 蛋白漏出性胃腸症
    近藤 元治, 中西 和夫, 田中 弘伸, 馬場 忠雄, 細川 計明, 川井 啓市, 増田 正典
    1975 年 72 巻 4 号 p. 355-364
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    実験的蛋白漏出性胃腸症における消化管局所線溶と蛋白漏出の関連を検討し, 放射線照射並に5FU投与による蛋白漏出についても, 局所線溶の推移と蛋白漏出のパターンの類似性, 更には蛋白漏出が抗プラスミン剤により阻止されたことから, 両者の関連を確認し, すでに報告した臨床的考察の裏づけを得た. 他方, 胸管結紮に基く蛋白漏出は, 局所線容の亢進と関係なく, 漏出機序を異にすると思われた.
    これらにより, 蛋白漏出性胃腸症の多くのものに, その病因に基礎疾患に伴う局所線溶亢進が関与するという新しい考え方に対し, 確信を深めた.
  • 第1編 先天性総胆管拡張症の分類とその臨床像
    松本 由朗, 内由 耕太郎, 中瀬 明, 本庄 一夫
    1975 年 72 巻 4 号 p. 365-375
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    胆管結石症の中でも, 原発性胆管結石の成因として, 胆汁うつ滞が重要な役割を果たしていることは古くから知られている.
    先天性総胆管拡張症46例の分析から, 本症の中に胆管結石を合併する症例が多いことを見出し, かかる症例の形態学的特徴を検討した. 本症は拡張範囲により, 巨大な嚢胞を形成する小児型と胆管結石を合併する成人型の二つに分類されることと, 拡張部につづく胆道末端部は, 膵管と総胆管の共通管となり, 長い狭窄部を形成し, 小児型と成人型ではその程度に違いがあり, 臨床症状発現の上に大きな役割を果たしていることを見出した.
    また, 組織学的には, 拡張部胆道壁は厚い結合織より成り, 筋層が落している所見を得た.
  • 第2編 先天性総胆管拡張症の成人型と胆管結石
    松本 由朗, 内田 耕太郎, 中瀬 明, 本庄 一夫, 柏原 貞夫, 増田 道彦, 植木 稠雄, 犬塚 俊史
    1975 年 72 巻 4 号 p. 376-384
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    第一編において先天性総胆管拡張症を分析し, その成人型に胆管結石が高率に合併している結果を得たので, 教室例の他に, 天理病院, 豊岡病院の5年間における本症成人型67例を分析し, 原発性胆管結石症の大部分に本症が関与している結果を得た. すなわち本症による結石は, 胆嚢より胆管に多く, 年令的には, 16才から30才ではその半数に, 30才以上では殆んど全例に結石が認められた. 全胆管結石の17%から43%が本症によるもので, 難治性胆管結石の大部分が本症によるものであつた.
    本症成人型による胆管結石の治療は, 小児型と同様, 総胆管空腸吻合術または総胆管十二指腸吻合術が最も良好な成績であつた.
  • 関 英雄, 高邑 裕太郎, 河野 智之, 神代 明雄, 村井 哲夫
    1975 年 72 巻 4 号 p. 385-391
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
  • 山内 英生, 小山 研二, 松尾 靖司, 柏村 征一, 高木 靖, 武藤 功, 大和田 康夫, 音羽 剛, 大内 清昭, 姉崎 巧, 伊藤 ...
    1975 年 72 巻 4 号 p. 392-406
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    ラットの総胆管を結紮, 切離し, 経週的に7週群まで肝生検を行ない, 光顕, 電顕標本を作成した. 形態計測的に, 肝細胞容積比, 平均核断面積, 核•細胞質容積比, 核分裂指数,推定肝実質重量, 糸粒体容積比, 大きさ, 数, ライソゾーム出現数の推定を行なつた.
    閉塞持続期間に一致して, 次第に肝細胞容積比は減少するが, 核分裂指数, 核容積, 推定肝実質重量からみると, 肝の再生によつて, この容積比の減少は補なわれている. 糸粒体は, 黄疸群で一般に膨化し, cristae の curling がみられ, 経週的にその数と容積比の増加が認められる. 再生肝との比較検討から, このような糸粒体の態度は機能低下を補う代償的適応現象と考えられた. 小胞体は一般に拡張し, しばしば滑面小胞体の増生がみられた. ライソゾームは, 閉塞群では持続期間に伴つて次第に増加するが6~7週群では下降しはじめる傾向がみられた.
  • 植田 昌敏, 藤井 信, 中島 行正, 平田 弘昭, 伊藤 慈秀
    1975 年 72 巻 4 号 p. 407-413
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    著明な高アミラーゼ血症が持続した2症例につき検討を加えた. 第1例は18才女, 腹痛と最高1,143 Somogyi 単位の高アミラーゼ血症により4年間に5回の入退院をくりかえし, Sephadex G-100小カラムによる screening test による marcoamylasemia と診断された. 第2例は79才女, 原発性肺癌の全身転移により死亡した例で, 入院約4カ月の最高7,546 Somogyi 単位の高アミラーゼ血症が持続し, 血清及び肝腫瘍組織中のアイソザイムはDEAE-Sephadex A-50 column chromatography による salivary type であること及び血清に比し腫瘍中酵素活性の高さから腫瘍細胞によるアミラーゼ産生が考えられた. さらに macroamylasemia screening test 及びイオン交換カラムの amylase research に対する有用性を論じた.
  • 続報 内視鏡的検討を中心に
    丸山 正隆, 大坪 千秋, 田中 三千雄, 大井 至, 上地 六男, 竹本 忠良, 鈴木 博孝
    1975 年 72 巻 4 号 p. 414-427
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    1971年11月から1974年2月までの間に単一の検者により前方直視鏡で内視鏡検査を施行された475例中, 130例に潰瘍あるいはその瘢痕以外の何らかの変化を十二指腸球部に観察した. これらの全てが十二指腸炎の所見であるか, あるいは, 所見を認めなかつた例を正常としてよいかどうかはまだ不明であるが, これらの変化の多くは前回の病理組織学的検討と照合して考えた時, 原発性十二指腸炎の種々の所見の反応と考えられる. このうち, 発赤, びらんなどは表在性十二指腸炎の所見といえるが, 生検的には間質性十二指腸炎を獲え難いため, これがどの程度含まれてくるかは不明である. 萎縮性十二指腸炎は日本では稀とされ, 生検でこれを獲えることは困難もあるが, 血管透見, Liver area の出現, 絨毛の萎縮などはこれを示す可能性のある所見として考慮し得る. このほか種々の小陥凹や小隆起は十二指腸炎との関連性を考慮し得る所見である.
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