肝門部胆管癌は「肝門部での胆管閉塞」という特徴を呈する胆管癌である.肝内・肝外胆管の境界は臨床例では不明瞭なことがあるため,肝門部胆管癌には肝外胆管癌と肝門部胆管に浸潤した肝内胆管癌を含む可能性がある.特に,肝内胆管癌(腫瘤形成型)が肝門部胆管に浸潤した事例の扱い方には議論がある.胆道癌取扱い規約はかかる病変を肝門部胆管癌に含めるべきと考え,新たに肝門部領域胆管癌を提唱した.一方,肝癌取扱い規約では,明らかな肝腫瘤をともなうものはすべて肝内胆管癌とし,肝門部胆管癌とは独立した疾患であるという立場である.両者は視点の差により対立しているため,一部の病変は二重の病期分類が可能である.
鑑別が問題となるのは肝門に浸潤した肝内胆管癌と肝門部胆管癌であり,両者の比較では性別,症状などに差がみられるほか,肝内胆管癌ではリンパ節転移が多く,胆管内腫瘍栓を形成する例があるなど,臨床病理学的に差がある可能性がある.しかし,肝内胆管癌の診断に重視していた肝内腫瘤が肝実質かグリソン内かの判定が難しい例,病理学的にも区別困難な例が存在する.規約改訂により肝門部領域胆管が定義され,肝内腫瘤の有無にかかわらず肝門部領域胆管癌として広く扱うことになった.診断は容易となるが,2つの疾患の集合である可能性を考慮した症例集積は必要である.術前胆道ドレナージについては,両者とも残存予定肝へのENBDが第一選択に位置する.
肝内胆管癌は,肝内小型胆管から発生するいわゆる末梢型肝内胆管癌と,肝内大型胆管から発生してしばしば胆管周囲浸潤によって肝門部に浸潤する肝門浸潤型肝内胆管癌に分けられる.肝門部胆管癌は肝外胆管から発生した腫瘍であるがときに肝実質浸潤をきたすため,鑑別に苦慮することも多い.肝門部胆管癌と肝門浸潤型肝内胆管癌および末梢型肝内胆管癌には,臨床病理学的にも生物学的悪性度にも差異を認め,予後規定因子も異なる.将来,いくつかの遺伝子の変異パターンによって胆管癌の新たなsubtypeに再分類されると思われる.
胆道癌取扱い規約第6版に肝門部領域胆管癌の概念が導入されたため,原発性肝癌取扱い規約第6版が規定する肝内胆管癌との間に差異が生じている.両規約の境界に相当する,肝門付近に主座を置く胆管癌において,両者の鑑別は画像上容易ではなく,行われる術式も同じである.そのため,両者を区別する必要はないとの立場と,従来通り可能な限り区別すべきとの立場の両者が存在するのが現状である.一方,最近肝内胆管癌の側からは,発生母地となる胆管枝やリスクファクターの有無による発癌形式,進展形式の違いに関する遺伝子レベルの検討が進んでおり,将来的には肝外胆管・肝内胆管とは異なる新たな胆管癌の区分が見出される可能性がある.
症例は56歳,女性.胃前庭部前壁に20mm大の粘膜下腫瘍を認めた.超音波内視鏡検査では第4層を主座とする類円形腫瘤であり,内部エコーは高エコー腫瘤として描出された.造影CT検査では,動脈相で濃染し平衡相で造影が遷延する類円形結節として認識された.以上の所見より胃glomus腫瘍を疑い,腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除術にて切除した.免疫染色でα-SMAがびまん性に陽性となり,desmin,c-kit,CD34,S-100蛋白は陰性であり,胃glomus腫瘍と確定診断した.
症例は76歳,女性.主訴は食思不振.腹部CTで肝S4/5に110mm大の内部に石灰化をともなう腫瘤性病変を認め,胆囊は同定できなかった.生検の結果,胆囊腺扁平上皮癌T3N2M0 stage IIIと診断した.血清PTHrP,G-CSFの著明な上昇をともない,G-CSF,PTHrP産生の胆囊腺扁平上皮癌と考えられた.胆囊腺扁平上皮癌で,G-CSF,PTHrPを産生する症例は非常にまれであるため,報告する.
今回われわれは,胆道出血の原因の1つである胆囊仮性動脈瘤破裂の2例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.症例は胆囊頸部結石嵌頓をともなう急性胆囊炎のため入院となった69歳と83歳の男性.どちらも経皮経肝胆囊ドレナージが施行されたが,処置数日後より胆囊内出血をきたした.腹部血管造影検査で胆囊動脈瘤が確認されたため,動脈塞栓術が施行され,その後開腹胆囊摘出術が行われた.
63歳女性および63歳男性の悪性リンパ腫再発症例.ベンダムスチン塩酸塩単独での化学療法により,既往感染からのHBV再活性化をきたした.エンテカビル投与により肝炎を発症することなくHBV DNAのすみやかな陰性化を得た.B型肝炎治療ガイドラインに準じたHBV DNA量のモニタリングが有用であった.ベンダムスチン塩酸塩単独投与による既往感染からのHBV再活性化症例の報告はなく,症例の蓄積が必要である.