日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
105 巻, 1 号
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総説
今月のテーマ:膵胆道早期がん診療
  • 山雄 健次, 水野 伸匡, 澤木 明, 清水 泰博, Chang Kenneth J
    2008 年 105 巻 1 号 p. 8-16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/07
    ジャーナル フリー
    膵癌の予後は不良であり,早期診断,早期治療(切除)のみが治癒の期待できる方法である.最近,疫学的手法により糖尿病,慢性膵炎,膵管内乳頭粘液性腫瘍,膵嚢胞,膵癌の家族歴,遺伝性膵癌症候群などが膵癌のリスクファクターであることが明らかにされた.これら膵癌のリスクファクターに加え,膵酵素·腫瘍マーカーの異常,超音波検査における膵管拡張や嚢胞などを有する無症状例に対し,CTや超音波内視鏡を中心とした画像診断を実施し,さらに組織学的に確定診断し切除するなどの方法が膵癌の予後改善に有効な手段となるかもしれない.今後の分子生物学的手法を用いた新たな診断方法の開発にも期待が持たれる.
  • 真口 宏介
    2008 年 105 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/07
    ジャーナル フリー
    膵·胆道癌は予後不良例が多く,早期診断が課題である.しかしながら,ハイリスクグループの設定の困難性,早期診断に有効な血液学的マーカーがないなど,早期発見の観点からは画像診断に期待するところが大きい.
    一方,近年の画像診断機器の発展は目覚しく,US, CT, MRI, PETなど低侵襲性検査法において顕著である.特に,MDCTでは空間分解能と時間分解能の向上が得られ,極めて薄いスライス厚でのダイナミックCTが短時間に撮像可能となった.しかしながら,これらの進歩によっても,膵·胆道癌の早期発見を確実に行い得る画期的な低侵襲性検査法は完成されていない.
    これに対し,内視鏡的検査法であるEUSやIDUS, POCSの精度も向上し,これらによって小病変でも診断可能な状況を迎えている.
    したがって,低侵襲性検査にて間接所見を拾い上げ,EUSおよび次の精査に導くことが早期診断のkey pointといえる.そのためには,高性能US装置の使用,MDCTによる3相撮像をスクリーニングの段階から実施していく必要がある.さらに,EUSの術者の育成,確実な精査を行い得る施設の充実も重要な課題と考える.
  • 田中 雅夫
    2008 年 105 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/07
    ジャーナル フリー
    膵癌の診断は集団検診の効率が悪いために,高リスク群の設定が重要である.高リスク群には慢性膵炎,糖尿病,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN),遺伝性膵癌,遺伝性慢性膵炎,家族性大腸腺腫症などがある.筆者らが糖尿病患者を一定の選別をかけてERCPによる検診を行うと,186例中17例(9.1%)に膵癌が診断された.また,IPMNでも切除107例に上皮内癌2例を含む膵癌が10例(9.4%)認められた.慢性膵炎も膵癌が多いとされるが,長期間経過観察したが発生はなかったとの報告もある.より適切な高リスク群の認識が普及すれば,膵癌といえども早期診断は不可能ではない.
座談会:膵胆道早期がん診療
原著
  • 森 昭裕, 大橋 憲嗣, 丸山 貴子, 建部 英春, 伏見 宣俊, 浅野 剛之, 井上 洋, 奥野 正隆
    2008 年 105 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/07
    ジャーナル フリー
    【目的】特別な装置やプログラムを必要としない仮想超音波画像簡易作成法(simple reconstruction method of virtual sonography;SRVS)を考案し,その方法と有用性を報告する.【方法】超音波(US)プローブを当てる位置を軸(支点)とし腹側から背側へ順次回転させた断層像をmulti-detector row CT(MDCT)のmultiplanar reformat(MPR)法で再構築し,US観察画像に近似させた画像(SRVS)を作成した.【結果】32症例,41病変でSRVSを作成した.すべての病変で識別は容易となり,正確な治療方針の決定やRFA治療成績の向上に寄与した(RFA施行:18病変,生検施行:2病変,他の治療法選択4病変,経過観察:17病変).【結論】SRVSはMDCT標準装備ワークステーションで作成可能であり,肝腫瘤性病変の診断,治療に有用である.
  • 谷村 隆志, 足立 経一, 石村 典久, 木下 芳一
    2008 年 105 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/07
    ジャーナル フリー
    欧米の救急部門では,胃食道逆流症(GERD)による非心臓性胸痛の頻度が高いことが報告されているが,本邦ではその頻度についての検討は少なく,今回検討を行った.対象は2005年3月,6月,9月,12月の4カ月間に当院救急外来を受診した5610例である.内因性疾患のうち,胸痛を主訴とした患者は121例であり,このうち心臓性胸痛例は81例,非心臓性胸痛例は40例であった.非心臓性胸痛例では,呼吸器疾患を有する例が18例,精神疾患が8例であった.GERD例は1例のみであり,非心臓性胸痛例におけるGERDの割合は2.5%であった.今回の検討結果からは欧米と比較して本邦では救急外来を受診する非心臓性胸痛におけるGERDの頻度は低いと考えられた.
症例報告
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