日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
107 巻, 5 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
総説
  • 村上 卓道
    2010 年 107 巻 5 号 p. 693-702
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/06
    ジャーナル フリー
    近年,超音波(US)検査では造影剤を用いた肝腫瘍の検査法が進歩した.マルチスライスCT(MDCT)では空間・時間分解能が向上し,3次元画像に動態情報(時間軸)が加わった4次元画像が登場してきている.MRIは,Gd-EOB-DTPAなどの肝組織特異性造影剤が臨床応用され,肝腫瘍の診断能が向上した.PET-CT検査は,全身CTでとらえた病変の代謝情報から悪性度を評価でき,手術適応の決定や治療効果判定に利用されている.血管造影では,cone-beam CT装置による3次元血管造影が精度の高いIVR治療に貢献している.それぞれの検査法の特徴をよく理解した上で,最適な検査法をうまく組み合わせた総合画像診断(マルチモダリティー)を行うことが重要である.
今月のテーマ:消化器疾患診療の新しいモダリティー
  • 田中 治, 西村 恒彦, 山上 卓士, 一条 祐輔, 大内 宏之, 大野 浩司, 光本 保英, 森 敬弘, 吉川 敏一
    2010 年 107 巻 5 号 p. 703-711
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/06
    ジャーナル フリー
    画像診断装置の性能向上および造影剤の進歩により,肝細胞癌の画像診断は近年飛躍的に進歩した.2008年1月に肝細胞特異性造影剤であるGod-EOB-DTPA(gadolinium ethoxybenzyl diethlenetriamine pentaacetic acid,ガドキセト酸ナトリウム;EOB・プリモビスト®)が本邦で発売され,約2年が経過した.肝細胞機能評価のみならず,これまでの細胞外液性MRI造影剤の性能を併せ持っているために1回の検査で血流評価と肝細胞機能評価が同時に可能となり,肝細胞癌の診断,特に境界・前癌病変と癌との鑑別においてその有用性が期待される.
  • 今井 裕, 高原 太郎
    2010 年 107 巻 5 号 p. 712-717
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/06
    ジャーナル フリー
    MRIの拡散強調像は,躯幹部の診断にも臨床応用されるようになり,正常組織の信号が低下し,同時に病巣部の信号は高信号となり,広い範囲の病巣を容易に検出することができるのが最大の利点である.また,"みかけの拡散係数(ADC)"は,病巣部を定量的に評価し,病理組織学的な違いを数値で示すことができる.画像表示では,種々の再構成画像を作成することにより360°いずれの方向からも観察でき,病巣の部位や形状を三次元的に認識でき,さらに病巣の大きさも数値で計測することができる.また,拡散強調像とT2強調像との融合画像を作成することにより,拡散強調像の異常信号を示す部位の正確な解剖学的位置を示すことができるなどの特徴を有する.
  • 松木 充, 金澤 秀次, 稲田 悠紀, 中井 豪, 立神 史稔, 鳴海 善文
    2010 年 107 巻 5 号 p. 718-725
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/06
    ジャーナル フリー
    マルチスライスCTの登場により時間分解能,空間分解能が飛躍的に向上し,得られた大量の薄いスライスデータから再構成される3次元画像は,さまざまな領域の診断,治療支援に多くの恩恵がもたらされた.大腸領域では,CT colonography(CTC)の精度が目覚しく向上し,欧米を中心に大腸癌のスクリーニング法として開発され,最近本邦においても注目されている.さらに大腸癌に対して腹腔鏡下手術の適応が拡大している今日,マルチスライスCTによって精度の増した3D-CT angiography(3D-CTA)は,バリエーションに富む動静脈を非侵襲的に描出し,腹腔鏡下大腸癌手術前のマッピングとして活用されている.
  • 若林 直樹, 半田 修, 内藤 裕二, 吉川 敏一
    2010 年 107 巻 5 号 p. 726-731
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/06
    ジャーナル フリー
    カプセル内視鏡は,同時期に開発されたバルーンタイプの小腸内視鏡とともに,小腸疾患に対するストラテジーに劇的な変化をもたらした.小腸内視鏡診断学の進歩のみならず,登場から10年が経ち,小腸疾患の病態解明においても大きな役割を果たしつつある.さらなる発展には,粘膜傷害に対する内視鏡診断の標準化,大腸検査への実用化などが望まれる.
原著
  • 金子 晃, 久保 光彦, 山田 涼子, 谷村 知紀, 山口 大輔, 山本 守敏, 巽 信之, 中間 昭弘, 三田 英治, 加藤 道夫, 肱岡 ...
    2010 年 107 巻 5 号 p. 732-742
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/06
    ジャーナル フリー
    自己免疫性肝炎(AIH)の新しい国際診断基準について,多施設で集積した114例を用いて検討した.新しい診断基準では,抗核抗体の測定方法や組織診断の定義が明記されており注意が必要であった.Definite AIHと診断された症例は83例,probable AIHは22例で,約9割の症例は診断基準を満たしており,わが国においても多くの症例はこの診断基準で診断が可能であると考えられた.一方で,約1割にあたる9例は診断基準外となったが,これらの症例はIgG正常や自己抗体陰性の症例であり,このような非典型例では診断基準より外れる可能性があることを念頭において,診断基準のみに頼らず総合的に診断することが必要であると考えられた.
症例報告
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