各種胆道疾患と自律神経要素,つまり交感神経と副交感神経および消化管ホルモンとの関連と疾患時の胆道組織内CA含有量を明確にする目的で,新鮮剖検材料50例,胆石症80例,胆嚢ジスキネジー5例,胃切後胆石症11例,胆嚢癌5例を用いて,切除胆嚢より小片を採取し,Falck-HillarpのCAの蛍光組織化学的同定法と,AChE染色を施行し以下の結果を得た.1)胆嚢には豊富な交感神経と副交感神経とが関与し,主として三つのplexusより形成されていた.2)胆嚢平滑筋層にCCK-PZ like cellsと思われる黄色細胞が観察された.3)胆石症群でAd-fibresはその増生は観察されず,組織学的に急性胆嚢炎群で漿膜下層にmastcellsの増殖が,慢性胆嚢炎例で粘膜層内にのみserotonin containing cellsが証明された.4)胃切後胆石症群および胆嚢ジスキネジー群では,胆嚢各層にAd-fibresの増生が,Ch-fibresはその減少が観察され,胆石症群との相違が観察された.5)胆嚢癌群では,Ad-fibresは癌組織内には認められず,少し離れた平滑筋層および漿膜下層に中等度の増生を認めた.一方,Ch-fibresは癌病巣内およびその周辺の組織内に異常に太くなり観察された.6)新鮮剖検材料群の胆嚢でのCAの測定では,大部分がNAであつた.胆嚢でのNA含有量は頚部に最も多く,以下,体部,底部の順であつた.胆道各疾患時のNA含有量の測定で,そのmeanvalueの相違が観察され,蛍光法での検索と一致した.
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