日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
108 巻, 5 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
総説
  • 川崎 誠治, 石崎 陽一
    2011 年 108 巻 5 号 p. 717-722
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/11
    ジャーナル フリー
    わが国の脳死肝移植は欧米に大幅に遅れをとり,1997年の臓器移植法施行より2009年までの約12年間に67例しか脳死肝移植は施行されなかった.しかしながら,2010年より施行された改正臓器移植法により本人の意思確認がなくても家族の同意による臓器摘出が可能となりその数は急速に増加し,2010年8月から2011年2月の7カ月間に39例の脳死肝移植が施行された.成績も海外の移植成績と遜色なく,脳死肝移植が終末期肝疾患に対する有効な治療法であることが改めて示された.今後はより細かな脳死移植選択基準の設定,臓器輸送時間の短縮のため同一地域内での臓器摘出ならびに移植実施,臓器移植に関わる救急医療の整備などが課題である.
今月のテーマ:これからの脳死移植
  • 小中 節子
    2011 年 108 巻 5 号 p. 723-728
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/11
    ジャーナル フリー
    2010年7月17日(一部は1月17日施行)に,本人の書面による意思表示の存在がなくても脳死下臓器提供,親族への優先提供を可能とする改正法が施行された.移植システムを運用する日本臓器移植ネットワークは,普及啓発,臓器提供施設の院内体制整備支援を行うとともに,改正法を遵守した移植システム構築,移植コーディネーター研修を行い,改正法施行に備えた.改正法施行から39例の脳死下臓器提供が行われ,うち本人の書面意思表示を有さない家族の承諾による脳死下臓器提供は9割であった.今後,この医療が社会の理解を得て,一般医療として確立することを念頭に置いた,適切で効率的な臓器あっせん体制を検討する必要があると考える.
  • 中村 俊介, 有賀 徹
    2011 年 108 巻 5 号 p. 729-734
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/11
    ジャーナル フリー
    臓器の移植に関する法律(臓器移植法)の改正によって,家族の判断などによって脳死となった患者から移植を目的とする臓器摘出が可能となり,また修正齢12週以上の小児の臓器提供も可能となった.関連する規則や指針も,それにともなって改正がなされ,以前より混乱の原因であった「臨床的に脳死と判断される場合」の文言が削除されるなど歓迎すべき改善点も見られたが,脳死下臓器提供施設の制限に関する問題やオプション提示といった以前より存在する問題の具体的な解決はなく,新たに被虐待児に関する問題も生じている.本稿では改正された点について概説し,問題点について,今後必要となる支援制度や院内での体制についての検討を行った.
  • 永野 浩昭, 丸橋 繁, 小林 省吾, 和田 浩志, 江口 英利, 種村 匡弘, 梅下 浩司, 土岐 祐一郎, 森 正樹
    2011 年 108 巻 5 号 p. 735-742
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/11
    ジャーナル フリー
    末期肝疾患に対する根治手段である「肝臓移植」は,本邦においては,1997年に脳死臓器移植法が成立したにもかかわらず,生体部分肝移植がその主流を占めてきた.しかしながら,2008年5月の「イスタンブール宣言」などの国際的事情により,2009年7月に臓器移植法改正案が成立し,翌2010年7月からの施行後,現在までに約半年が経過した.この間の脳死肝移植症例数はたしかに増加したが,(1)国際的に見た提供者不足,(2)提供者不足による脳死肝移植・待機時間,(3)MELD基準導入など肝移植適応基準の改正,(4)肝移植実施施設における移植外科医の減少と労働環境整備,などの諸問題を依然として包括している.
  • 杉谷 篤, 吉田 淳一
    2011 年 108 巻 5 号 p. 743-752
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/11
    ジャーナル フリー
    膵臓移植とは1型糖尿病患者を対象にして,血糖コントロールの正常化,2次性合併症の発生・進展阻止,救命・延命を目的として行い,欧米では1型糖尿病の根治療法として確立されている.発症間もない頃に膵単独移植が選択され,糖尿病性腎不全を併発すると膵腎同時移植,あるいは腎移植を先行したあとで腎移植後膵移植が選択される.2010年7月の臓器移植法改正後,39件の脳死下臓器提供があって36件は家族承諾による提供であった.レシピエントの内訳を見ると,心臓:28名,肺:29名,肝臓:40名,小腸:2名,膵臓あるいは膵腎同時:30名,腎臓:47名であった.今後,心停止献腎提供の増加,小児ドナーからの提供,摘出手技の修練・統一,ドナーとレシピエントの適応検討,膵島移植のあり方が課題であろう.
  • 仁尾 正記, 和田 基, 佐々木 英之, 風間 理郎, 西 功太郎, 福澤 太一, 田中 拡, 工藤 博典, 山木 聡史
    2011 年 108 巻 5 号 p. 753-758
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/11
    ジャーナル フリー
    小腸移植は腸管不全に対する究極的な根治的治療法であるが,かつてその成績は不良であった.近年,免疫抑制療法の発達により,格段の成績向上がみられており,欧米では脳死ドナーからの小腸移植が重症腸管不全に対する標準的治療となりつつある.わが国の小腸移植は,いまだごく限られた施設で少数例が行われているのが現状であるが,その成績は欧米のそれに匹敵する.2010年の改正臓器移植法の実施にともない,脳死小腸移植症例に増加の兆しがみられている一方で,本邦における脳死小腸移植の普及には,移植適応の適切な評価,肝小腸移植へ向けてのシステム整備,社会保険制度の適用など,解決しなければならない問題も数多く残されている.
症例報告
ITC (The 1st JSGE International Topic Conference)
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