日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
118 巻, 11 号
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今月のテーマ(総論):進行再発大腸癌診療の最前線
  • 長谷川 傑, 吉松 軍平, 小島 大望
    2021 年 118 巻 11 号 p. 999-1003
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー

    本邦においては高齢化社会の影響もあり大腸癌の死亡者数は増加傾向であり,癌腫別では男性3位,女性1位となっている.新規の薬物治療や外科治療の進歩により大腸癌治療の成績は改善してきたが,進行再発大腸癌のそれはまだまだ満足できるものではない.本特集では他臓器浸潤癌・肝転移・腹膜播種・直腸癌の局所再発などの大腸癌の診療で比較的遭遇しやすい困難な状況について,それぞれの領域において第一線の先生方に最先端の診断と治療,並びに今後の展望について解説をお願いした.

今月のテーマ(総説):進行再発大腸癌診療の最前線
  • 橋本 恭一, 我如古 理規, 長山 聡
    2021 年 118 巻 11 号 p. 1004-1011
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー

    遠隔転移を認めない局所浸潤大腸癌には他臓器一括切除術が推奨され,一括切除が完遂できれば,他臓器浸潤の認められない大腸癌と同程度の予後が期待できる.術前に他臓器に浸潤が疑われた癌のうち病理診断にて実際に浸潤が認められる症例は約半数であるが,術前画像診断や術中所見では浸潤を否定し難いため,疑われる場合には他臓器一括切除が必要である.腹腔鏡手術も考慮されるアプローチであるが,腹腔鏡での手術継続が困難と判断されたなら,術中偶発症をおこす前に開腹移行(戦略的開腹移行)するべきである.複雑な再建を必要とする症例では,専門医のいる高次の病院で手術を行うことが推奨される.術前治療(NAC,CRT)は1つの選択肢である.

  • 田中 邦哉, 高橋 裕季, 梅本 岳宏
    2021 年 118 巻 11 号 p. 1012-1023
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー

    大腸癌肝転移に対する外科治療はこの四半世紀で劇的に進歩した.1996年の報告に端を発するconversion surgeryといった概念での手術手技の工夫および治療戦略の改良,担癌宿主の高齢化に対する低侵襲化を企図した腹腔鏡やロボット支援下での切除技術の向上といった2領域の進歩には,特筆すべきものがある.ただし,依然として,これらのうちの大多数がガイドラインで十分推奨されるエビデンスレベルには達していない.肝転移治療のさらなる成績向上のためには,これらの手技や戦略のエビデンスの創出が急務である.

  • 五井 孝憲, 森川 充洋
    2021 年 118 巻 11 号 p. 1024-1031
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー

    大腸癌腹膜播種は肝転移や肺転移と比較し予後不良な病態であるが,近年の全身化学療法の発展にともない治療成績は向上してきている.切除可能なP1,P2症例の治療方針に関しては,切除の有効性が本邦の多施設研究より報告されており,ガイドラインでも切除が推奨されている.P3症例に対しては本邦での標準治療は全身化学療法であり,ガイドラインで推奨される切除不能大腸癌に対する薬物療法を施行することが推奨される.海外では大腸癌腹膜播種および腹膜偽粘液腫の治療として,完全減量切除および腹腔内温熱化学療法が専門施設に集約され広く行われるようになり,その良好な成績が数多く報告されており,今後の治療成績の発展において注目される.

  • 池田 正孝, 木村 慶, 池内 浩基
    2021 年 118 巻 11 号 p. 1032-1037
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー

    直腸癌骨盤内局所再発は,進行下部直腸癌の最も多い再発の1つである.重要臓器の再発ではないため直腸癌局所再発のみで死亡することはないが,長期間の闘病,神経浸潤などによる疼痛,局所の感染や出血など,QOL低下を招く.再発形式に則った治療戦略が重要であるが,いかに局所を確実に切除できるかがポイントとなる.化学放射線療法など集学的治療を用いた積極的な拡大手術により,切除断端に癌を露出させることなく腫瘍を周辺臓器とともに一塊として切除する.極めて侵襲の大きな手術であるため,多くの経験を積んだ専門施設での治療が望ましい.

原著
症例報告
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