日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
113 巻, 12 号
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総説
  • 神澤 輝実, 来間 佐和子, 千葉 和朗
    2016 年 113 巻 12 号 p. 1991-1997
    発行日: 2016/12/05
    公開日: 2016/12/05
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    先天性胆道拡張症は,戸谷分類では5型に分類されてきた.最近作成された先天性胆道拡張症の診断基準と診療ガイドラインでは,いわゆる狭義の先天性胆道拡張症は,総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張し,全例に膵・胆管合流異常を合併する戸谷Ia型,Ic型およびIV-A型と定義された.膵・胆管合流異常は,長い共通管を有して膵管と胆管が十二指腸壁外で合流し,乳頭部括約筋の作用が膵胆管合流部に及ばないことより,膵液が胆道系に容易に逆流する(膵液胆道逆流現象).先天性胆道拡張症では,しばしば急性膵炎をおこし,さらに膵液と胆汁の混和液がうっ滞する胆囊や拡張胆管に高率に発癌するので,診断されれば肝外胆管切除が行われる.

今月のテーマ:先天性胆道拡張症の最前線
  • 濵田 吉則
    2016 年 113 巻 12 号 p. 1998-2003
    発行日: 2016/12/05
    公開日: 2016/12/05
    ジャーナル フリー

    日本膵・胆管合流異常研究会において『先天性胆道拡張症の診断基準2015』を作成し,いわゆる狭義の先天性胆道拡張症の診断基準を明らかにした.先天性胆道拡張症とは,総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張する先天性の形成異常であり,必ず膵・胆管合流異常を合併するもので,肝内胆管の拡張をともなう例も含めると定義した.胆管拡張の診断は,患者の胆管径は超音波検査,MRCP,CTなど胆道に圧のかからない検査による総胆管の最大内径をもって,年齢別の胆管径の上限値を参考に拡張の有無を客観的に判断することが重要である.拡張形態は,先天性胆道拡張症の戸谷分類のIa型,Ic型,IV-A型に相当するものに限るものとした.

  • 石橋 広樹, 島田 光生, 矢田 圭吾
    2016 年 113 巻 12 号 p. 2004-2015
    発行日: 2016/12/05
    公開日: 2016/12/05
    ジャーナル フリー

    先天性胆道拡張症(congenital biliary dilatation;CBD)は,総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張する先天性の形成異常で,膵・胆管合流異常を合併し,胆汁と膵液の流出障害や相互逆流,胆道癌など肝,胆道および膵にさまざまな病態を引きおこす疾患であるが,診療ガイドラインはいまだ策定されていない.今回,CBD診療ガイドラインの作成にあたり,膵・胆管合流異常診療ガイドラインから,抜粋,一部改変し,clinical question作成,引用文献のレベル分類,ステートメントの推奨度決定を行い,科学的根拠に基づいたCBD診療ガイドラインを作成したので,ダイジェスト版として紹介する.

  • 廣岡 芳樹, 川嶋 啓揮, 竹山 友章, 後藤 秀実
    2016 年 113 巻 12 号 p. 2016-2021
    発行日: 2016/12/05
    公開日: 2016/12/05
    ジャーナル フリー

    先天性胆道拡張症の診断基準2015では,総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張し膵・胆管合流異常を合併する戸谷Ia型,Ic型,IV-A型が狭義の先天性胆道拡張症と定義された.胆道拡張を腹部超音波検査などの侵襲性のないモダリティで拾い上げ,合流異常を造影MDCT,MRCP,ERCPなどを追加して適切に診断する.MDCTやMRCPは侵襲性が低いという利点があるが,主膵管や合流部の描出能はERCPに劣る.特に共通管が短い例は描出能が低下するためERCPを追加する必要がある.成人例においてはEUSやIDUSを行うことで膵・胆管合流異常の診断はより確実になる上に,胆道癌の除外や進展範囲診断にも寄与する.

  • 安藤 久實
    2016 年 113 巻 12 号 p. 2022-2028
    発行日: 2016/12/05
    公開日: 2016/12/05
    ジャーナル フリー

    先天性胆道拡張症に対する治療の歴史は内瘻術に始まった.しかし,術後の結石形成や胆道癌の合併という大きな問題が明らかとなり,膵液と胆汁の流出路を分離して胆管壁の化学的変化を防止するとともに,癌の発生母地である拡張胆管を可及的に切除して癌発生の可能性を低下させる,という分流手術が標準術式となった.ところが,分流手術後にも結石の発生や発癌が新たな問題となっている.これは先天性胆道拡張症が抱える発癌性という根本的な問題であるのか,それとも不完全な手術にともなうものであるのかを今後検証する必要があるが,現時点では膵内胆管を完全に切除し,肝管狭窄への対処を行うことが重要と考える.

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