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古川 俊治, 北島 政樹
2000 年 97 巻 1 号 p.
1-9
発行日: 2000/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
消化器癌に対して内視鏡下手術を適応するには,従来の開腹や開胸による手術と同等の根治性が得られることが前提となり,悪性細胞を播種することなく病変局所を確実に切除し,かつ転移のおそれのあるリンパ節の十分な廓清が可能でなければならない.現在,早期胃癌や進行大腸癌に対する内視鏡下手術の良好な長期成績が報告されつつあり,今後消化器癌に対する内視鏡下手術の適応は拡大していくと考えられる.内視鏡下手術の発展のためには,新しい関連技術の応用が重要であるが,masterslave manipulatorによるロボット手術,通信回線を利用した遠隔手術指導システムの構築,sentinel node navigation surgeryの導入などが特に期待されている.
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光山 慶一
2000 年 97 巻 1 号 p.
10-20
発行日: 2000/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
潰瘍性大腸炎は,原因不明の難治性炎症性疾患である.本症の根治療法はまだ存在せず,ステロイド系薬剤やアミノサリチル酸製剤などの基準薬剤を使用して炎症をコントロールすることが治療目標とされている.しかし,近年の免疫学,分子生物学の進歩により,本症の病態や薬剤の作用機序の解明が進み,それに立脚した選択的な治療法の開発が活発に行われるようになった.そのなかには,すでに臨床試験が実施され,優れた効果が実証されたものも出て来ている.今後,潰瘍性大腸炎の発症機序の解明がさらに進み,質の高い臨床試験のもとで,より疾患特異的な治療法が開発されることが期待される.
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井上 貴夫, 中澤 三郎, 芳野 純治, 乾 和郎, 若林 貴夫, 奥嶋 一武, 小林 隆, 西尾 浩志, 中村 雄太, 嘉戸 竜一, 渡辺 ...
2000 年 97 巻 1 号 p.
21-27
発行日: 2000/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
H.pylori除菌に成功した消化性潰瘍患者48例を対象とした.胃液pHは除菌前2.46から判定時1.65へ低下した(p<0.001),疾患,萎縮腺境界,炎症細胞浸潤,組織学的萎縮で多因子解析すると,萎縮腺境界のみが有意な独立因子であり,萎縮が広いほど除菌後に胃液pHが低下した.また,夜間pH3 holding timeは54.1%から22.3%へ減少した(p<0.005).長期経過観察17例(平均15.2カ月)では,胃液pHは1.66と低値を維持し,体上部の萎縮スコアは1.5から0.9へ低下した(p<0.05).除菌後長期では壁細胞の機能的回復に加え,胃底腺粘膜の組織学的萎縮の改善がpHの回復に関与していると考えられた.
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熊本 光孝, 谷口 友志, 向林 知津, 生馬 和樹, 中沢 和之, 岡 陽子, 石原 靖士, 小林 秀机, 清水 達也, 土橋 重隆, 森 ...
2000 年 97 巻 1 号 p.
28-32
発行日: 2000/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
成人の腸重積症のほとんどに器質的疾患が関与しているとされている.今回我々は,空腸腫瘍(絨毛腺腫内癌)を先進部として発症した成人腸重積症の1例を経験した.症例は45歳女性で,間歇的腹痛と嘔吐のため受診し,腹部CT検査にて腸重積症を,小腸造影にて空腸腫瘍を認め,空腸腫瘍による腸重積症と診断し小腸部分切除術を施行した.組織検査では絨毛腺腫であり一部に腺癌を合併していた.絨毛腺腫は消化管腺腫の中で最も癌化率の高い病変とされており,小腸では絨毛腺腫の1/3に癌を合併しているといわれている.成人腸重積症の約4596は小腸腫瘍が原因であり,小腸造影で小腸腫瘍の56%(悪性腫瘍に限ると65%)が診断可能といわれ,小腸造影の重要性と絨毛腺腫内癌について文献的考察を加え報告した.
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上田 城久朗, 能丸 真司, 永田 夏織, 梶井 信洋, 大村 良介, 原田 俊則, 鈴木 伸明, 鈴木 道成, 森岡 秀之
2000 年 97 巻 1 号 p.
33-37
発行日: 2000/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は73歳女性.朝食2時間後より突然,上腹部痛出現.腹部CT検査と小腸造影検査より空腸憩室を合併した小腸軸捻転症と診断した.入院約1カ月後,手術を施行したが,小腸全体が反時計回りに720°捻転しており,空腸憩室はTreitz靱帯から約25cmの部位の腸間膜よりに存在した,原発性小腸軸捻転症は,本邦ではまれな疾患で術前診断されることは少ないが,本症例では典型的なCT像より術前診断が可能であった.
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柿原 瑞穂, 光藤 章二, 時田 和彦, 児島 謙作, 山下 靖英, 中村 斉, 大野 智之, 恒村 康史, 前田 利郎, 加嶋 敬, 児玉 ...
2000 年 97 巻 1 号 p.
38-43
発行日: 2000/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
Chronic idiopathic intestinal pseudoobstruction(CIIP)はこれまで文献上報告例も少なく,診断に非常に苦慮する疾患である.われわれは回腸末端部に著明な腸管の拡張を認めた症例に対し,infused catheter法を用いて回腸末端部から全大腸の内圧を測定した.病変部が回腸末端部であったため内視鏡的に内圧測定用カテーテルを留置することができ,その結果回腸末端部の腸管運動異常が認められ,CIIPと診断し得た.
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尾形 隆, 板垣 茂文, 石黒 昌生, 小関 大平, 安達 徹, 荒井 茂
2000 年 97 巻 1 号 p.
44-47
発行日: 2000/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は3年前に噴門側胃切除術を受けた80歳の男性.1年前の内視鏡検査では大腸憩室症を認めただけだったが,今回横行結腸に13×13×10mm大のポリープの出現を認めたため内視鏡的に切除した.ポリープは正常粘膜と粘膜下層の疎性結合組織から成り,稀なcolonic muco-submucosal elongated polyp(CMSEP)と診断した.加齢による粘膜の脆弱化や腸管内圧の上昇が1年のうちにCMSEPを発生させた可能性が示唆された.
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小堀 陽一郎, 松本 主之, 飯田 三雄, 黒木 文敏, 末兼 浩史, 星加 和徳, 角田 司, 和田 秀穂, 清水 道生, 定平 吉都
2000 年 97 巻 1 号 p.
48-53
発行日: 2000/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は35歳男性.右下腹部痛を主訴に来院,右臍部に12×9cmの腫瘤を認め,小腸X線検査で空腸に密集した多発性小隆起を認めたため悪性リンパ腫を疑い,腫瘤および空腸部分切除術を施行した.術中の小腸内視鏡検査では,集簇隆起や小隆起の散在が観察され,multiple lymphomatous polyposis(MLP)に一致していた.mantle cell lymphomaが強く疑われたが,病理組織学的にはfollicle center lymphoma(FCL)に分類されるstage IIの悪性リンパ腫であった.小腸のMLPを呈するFCLが存在することに留意すべきと思われる.
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岩本 淳一, 箱崎 幸也, 三谷 圭二, 清家 英二, 松原 健朗, 小針 伸一, 峯 雅文, 小林 正彦, 藤岡 高弘, 大庭 健一, 白 ...
2000 年 97 巻 1 号 p.
54-59
発行日: 2000/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は49歳男性.アルコール性肝硬変(AL-LC),原発性胆汁性肝硬変(PBC)の合併で経過観察中,肝細胞癌(HCC)が出現し肝尾状葉切除術を施行.切除肝の組織像では,AL-LCとPBC(ScheuerI~II期)が混在し,HCCの成因はPBCよりAL-LCと考えられた.AL-LC/PBC合併例におけるHCC発生に関し,文献的考察を加え報告した.
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古谷 徹, 鈴木 憲治, 春日 葉子, 島田 紀朋, 内藤 嘉彦, 石川 智久, 大久保 至, 新谷 稔, 山根 建樹, 藤瀬 清隆, 小林 ...
2000 年 97 巻 1 号 p.
60-64
発行日: 2000/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は54歳男性,多量飲酒により高度肝機能障害を発症して来院.血液検査にて重症急性肝障害と診断し,血漿交換・持続的血液濾過透析(CHDF)・ステロイドミニパルス療法を施行した.血液検査成績の速やかな改善を認め,また画像上も第1病日に高度脂肪肝が認められたが,第4病日には脂肪肝の著明な改善が得られた.病態としてAlcoholic foamy degeneration(AFD)が考えられたが,急性脂肪変性の改善に各種治療の関与が示唆された.
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藤崎 滋, 小豆畑 丈夫, 五十嵐 誠悟, 三宅 洋, 天野 定雄, 富田 凉一, 福澤 正洋, 金子 弥樹, 田中 直英, 椿 浩司, 荒 ...
2000 年 97 巻 1 号 p.
65-70
発行日: 2000/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は72歳,女性.心窩部痛を主訴に来院.腹部超音波検査にて20mmを越える胆嚢隆起性病変を指摘されたが,約4年間放置の後,胆嚢癌の診断で切除された.HO,PO,n(-),t2(ss),M(-),stageII,curAであり,病理組織型は乳頭腺癌で,胆嚢管を除き胆嚢全体にわたり癌の進展がみられた.術後2年1カ月経過した現在,無再発生存中である.予後不良とされる進行胆嚢癌の中で,その発育進展の遅いものが存在することを示す貴重な症例と考えられたので報告した.
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山科 哲朗, 二階堂 ともみ, 丸山 裕, 赤澤 修吾, 西堀 恭樹, 中村 とき子, 新津 洋司郎
2000 年 97 巻 1 号 p.
71-74
発行日: 2000/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は67歳,男性.重症急性膵炎で入院後膵酵素阻害薬の持続動注療法が奏功し改善が得られた.しかし経過中に閉塞性黄疸が出現した.造影検査では下部胆管の完全閉塞を認め胆管癌との鑑別に苦慮し,経皮経肝的胆道鏡(PTCS)を行ったところ血管の増生や腫瘍像を認めず,生検結果でも悪性所見を認めなかった.以上より急性膵炎後に生じた炎症性胆管閉塞と診断し手術を行った.自験例においてその鑑別診断にPTCS下組織診が有効だった.
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樋口 良太, 渡邊 文利, 堀尾 嘉昭, 景岡 正信, 岩崎 央彦, 杉本 健, 本田 聡, 甲田 賢治
2000 年 97 巻 1 号 p.
75-79
発行日: 2000/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
74歳の男性が腹痛を主訴に来院.諸検査にて,副膵管本管の著明な拡張と分枝の嚢胞状拡張を認めた.粘液産生膵腫瘍と診断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.組織学的に嚢胞状に拡張した膵管分枝内は膵管内乳頭腺腫で,一部に癌細胞を認め,副膵管本管には過形成の所見を認めた.副膵管領域に発生する粘液産生膵腫瘍はまれで,原因として前癌病変である粘液細胞過形成がこの領域に少ないためと考えられている.
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