日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
121 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特別寄稿
  • 中尾 一彦
    2024 年 121 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル 認証あり

    私が医師になって40年,消化器病診療,研究の進歩は目覚ましく,消化器病患者の生命予後とQOLは改善してきた.本稿では,私が関わってきた診療と研究から,HBV高浸淫地区36年間の肝検診成果,HBV基礎研究ならびにラミブジンを保険収載前に使用した症例について,次に肝癌自然退縮3例の経験を契機とした肝癌治療の基礎研究(血管新生抑制,腫瘍免疫誘導,肝癌増殖シグナル阻害)と分子標的薬,免疫療法について,最後に移植・消化器外科との協働によって経験できた肝移植後HCV再感染に対するDAA治療の劇的効果,肝移植後に生じる代謝変化,細胞シートを用いた再生医療への参画などについて,当時の想いも含めつつ述べる.

今月のテーマ(総論):自己免疫性肝・胆道疾患up to date
  • 田中 篤
    2024 年 121 巻 1 号 p. 6-9
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル 認証あり

    自己免疫性肝・胆道疾患とは,肝・胆道に対する異常な自己免疫反応によって発症する肝・胆道疾患の総称である.いずれも病因が明らかになっておらず,長期にわたる治療が必要であり,国が指定難病としている.自己免疫性肝炎・IgG4関連硬化性胆管炎では免疫抑制薬が,原発性胆汁性胆管炎では胆汁うっ滞改善薬が奏効し,長期予後は良好であるが,原発性硬化性胆管炎では有効な内科的治療薬が存在せず,いまだに予後不良の疾患である.現在各疾患に対して新規治療薬の開発が進められており,近い将来には個別化治療により,原発性硬化性胆管炎も含めた各疾患の長期予後および健康関連QOLの改善がもたらされることが期待される.

今月のテーマ(総説):自己免疫性肝・胆道疾患up to date
  • 大平 弘正, 高橋 敦史, 阿部 和道
    2024 年 121 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル 認証あり

    近年,自己免疫性肝炎(AIH)の有病率は増加しており,急性肝炎例の割合が約20%を占めている.日本の診療ガイドラインが2022年1月に改訂され,診断基準項目の順番の変更,CQを2項目追加,重症度判定項目の修正,治療反応性定義の記載,PSCオーバーラップ,薬物起因性AIH様肝障害,非侵襲的線維化診断に関する内容が追記となっている.周辺疾患として,免疫チェックポイント阻害薬による肝障害や脂肪性肝障害との関連が注目されている.海外の新たな動向も踏まえながら,わが国としてのAIH診療の対応を確立していく必要がある.

  • 小森 敦正
    2024 年 121 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル 認証あり

    原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis;PBC)は,肝内小型胆管細胞の自己免疫性破壊を病理像とする慢性肝疾患である.Ursodeoxycholic acid(UDCA)が治療薬として導入されPBCの予後は改善したが,現在PBC診療の焦点はUDCA不応例に向かっている.一方で臨床経過と治療反応,予後の予測に関する理解も深まっており,治療パラダイムを見直す機運も高まっている.本稿では,PBCの疫学,病因と病態,診断と治療に関する近年の進歩について概説する.

  • 水野 卓
    2024 年 121 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル 認証あり

    ゲノムワイド関連解析などにより,原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis;PSC)の病態に免疫が深く関与していることが明らかになりつつある.腸内細菌叢や胆管上皮の老化に関する研究も進んでいる.PSCの診断は特徴的な胆管像に基づくが,ERCPに代わって,侵襲の少ないMRCPやEUSが行われるようになっている.診断のためのバイオマーカーもいくつか報告されている.PSCの根本的治療は肝移植のみであるが,薬物療法ではウルソデオキシコール酸による肝胆道系酵素低下作用が改めて注目されている.病態解明が進み,それに応じた治療の開発も期待される.

  • 中沢 貴宏, 内藤 格, 大原 弘隆
    2024 年 121 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル 認証あり

    IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2020は,①肝内,肝外胆管の狭細像,②胆管壁の肥厚像,③血清学的所見,④病理学的所見,⑤他のIgG4関連疾患の合併,⑥ステロイド治療の効果,からなる.自己免疫性膵炎の合併の有無,胆管像分類により診断を行うこと,画像診断は胆管像と胆管壁の肥厚の状態の2方面から検討することを特徴とした.また,診断基準を利用しやすくするためにアルゴリズムを作成した.さらに2019年に施行した全国調査の結果を紹介した.

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