日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
108 巻, 7 号
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特別寄稿
  • 林 紀夫
    2011 年 108 巻 7 号 p. 1153-1160
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/06
    ジャーナル フリー
    私は医学部卒業以来38年間,肝臓病の臨床と研究に従事してきました.私は肝臓研究を行っていくにあたり,細胞内情報伝達やアポトーシス,そして自然免疫といった新しい研究概念に出会うことができました.また,分子生物学の臨床への導入を黎明期に研究に取り入れたこと,PCRや免疫細胞学,ノックアウトマウスをはじめとした発生工学的手法を柔軟に取り入れたことも,研究を推進する上では重要でした.研究や臨床のテーマや手法は時代とともに変遷していきますが,その背後にある考え方や対処法は時代を越えて共通のものがあるように思います.そこで,若い先生方が診療・研究を今後展開していく上での参考になればと考え,私の研究歴をお話いたします.
総説
  • 岡上 武
    2011 年 108 巻 7 号 p. 1161-1169
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/06
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者や肥満者ではNAFLD罹患者が多く肝癌発生率が高い.2008年にわが国で初めて大規模なNASH/NAFLD研究班ができ,班の全体研究として糖尿病患者の肝障害の実態調査,NASH起因肝癌の臨床・病理学的検討,単純性脂肪肝(SS)とNASHの血液生化学的鑑別法の作成,NASH発症の遺伝的素因の解析,治療指針作成,NASH治療指針の作成などを目指した.また,個別研究では多方面から病態解明や予後調査を行った.研究班では多くの成果が得られたが,未発表のものも多く,本総説ではNASH/NAFLDの臨床・研究についての最近の動向と,班研究の成果を含むNASH/NAFLDの最新の臨床・研究の現状と今後の課題について記載した.
今月のテーマ:C型肝炎治療法の進歩
  • 黒崎 雅之, 泉 並木
    2011 年 108 巻 7 号 p. 1170-1178
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/06
    ジャーナル フリー
    genotype 1型・高ウイルス量のC型肝炎に対するpeg-interferon・ribavirin併用療法のウイルス学的著効(SVR)率は約50%であるが,一般検査やC型肝炎ウイルス遺伝子ISDRおよびCoreアミノ酸の変異を組み合わせることで,SVR率が80%以上の症例を同定できる.一方,宿主遺伝子IL28Bは強力な治療効果の予測因子であり,SVRが期待できない症例を見分けられる.これら宿主・ウイルス因子は新規抗HCV薬であるprotease阻害薬の治療効果とも関連する.protease阻害薬には治療不応による薬剤耐性出現リスクがあるため,治療効果予測に基づく治療戦略が重要である.
  • 荒瀬 康司
    2011 年 108 巻 7 号 p. 1179-1186
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/06
    ジャーナル フリー
    60歳以上のHCV感染者を長期的に観察し,死亡例662例でみるとその死因は,男女とも肝癌死が最も多く,次いで肝不全死の順であった.肝疾患関連死が男女とも約60%を占めていた.したがって肝疾患関連死を防止ないし先送りすれば,より長期の生存が可能となる.肝疾患関連死は,加齢,男性,低アルブミン血症,トランスアミナーゼ高値,AFP高値,血小板低値例などでよりおこりやすいため,このような因子を多く有した症例には肝疾患関連死を防止するような治療を積極的に行っていく必要がある.治療の第一選択剤はウイルス排除をめざした抗ウイルス療法であるが,これが難しいようであれば肝炎鎮静化をめざした肝庇護療法を考慮する.
  • 井上 和明, 高橋 寛, 与芝 真彰
    2011 年 108 巻 7 号 p. 1187-1199
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/06
    ジャーナル フリー
    近年の分子ウイルス学の進歩により,C型肝炎ウイルスの増殖系が確立されウイルスのlife cycleが分子生物学的に明らかにされるにつれて,たくさんの治療薬の候補が多くの研究者により見つけられ続けている.NS3のプロテアーゼはウイルスのlife cycle上必須の酵素で,プロテアーゼ阻害薬の研究に全世界が取り組み,その結果Boceprevirが世界での承認薬第1号となった.プロテアーゼ阻害薬の導入により慢性C型肝炎初回治療例の70%は治癒することが期待される.また他のウイルス因子を標的としたポリメラーゼやNS5Aの阻害薬,またウイルス増殖に必須の宿主因子を標的としたサイクロフィリン阻害薬も治験中であり,近未来的には経口薬の組み合わせでウイルス排除が目標となる.
座談会
症例報告
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