日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
109 巻 , 10 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
総説
  • 三輪 洋人
    2012 年 109 巻 10 号 p. 1683-1696
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    機能性ディスペプシア(FD)は機能性消化管障害の1つで,器質的疾患がないのに胃が痛い,胃がもたれるなどのディスペプシア症状を慢性的に訴える疾患である.FD患者ではストレスを契機とした症状発現が特徴であり,ストレスに対する個体の応答性の異常がその病態の本質の1つと考えられる.その病因は,1)直接的に症状をおこす生理機能異常(胃運動機能異常,内臓知覚過敏),2)症状誘発を修飾する因子(胃酸分泌異常,H. pylori感染,精神心理的異常,食事・生活習慣),3)ストレスに対する応答異常を規定する因子(幼児期・成長期のストレス,遺伝子異常,感染後の残存炎症),に分けて考えるべきであろう.FDに対する現存の薬物治療の効果は概して低く,心療内科的アプローチとともに効果的な薬剤の開発が望まれる.
今月のテーマ:消化器の生理と漢方
  • 有沢 富康
    2012 年 109 巻 10 号 p. 1697-1702
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    機能性ディスペプシア(FD)に関与する遺伝子多型では,TRPV1 315G>C,pri-miR-325のrs5981521,SCN10Aの一塩基多型群が疾患感受性に関与し,これらはEPS,PDSの病型にかかわらず同様な関与が認められた.しかし,H. pylori(HP)陰性者に限れば,pri-miR-325,SCN10Aの他にGNB3の遺伝子多型の関与が認められ,HP陽性者では全く異なり,TRPV1と各種炎症関連分子の遺伝子多型の関与が認められた.遺伝子型からFDをみると,病型による差は認められず,むしろHP関連のFDと非関連のFDの相違が顕著にみえてくる.
  • 中田 浩二, 羽生 信義, 矢野 文章, 石橋 由朗, 小村 伸朗, 矢永 勝彦
    2012 年 109 巻 10 号 p. 1703-1713
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    機能性ディスペプシア(FD)の症状出現には,胃運動障害,内臓知覚過敏,心理社会的要因などが複合的に関与し,これらは脳腸相関を介して相互に影響を及ぼしている.心理社会的要因は症状の重篤度や受療行動,治療反応性や健康関連QOLなどと関連し,胃の知覚運動能にも影響を及ぼすことが知られている.FDの診療においてはその複雑な病態を理解し,心理社会的側面にも配慮した対応が求められる.心理社会的要因の関与が大きく治療抵抗性を示すFD患者では,早い段階から心療内科医や精神科医と連携した治療を行うことも必要である.
  • 川田 晃世, 保坂 浩子, 栗林 志行, 下山 康之, 河村 修, 草野 元康
    2012 年 109 巻 10 号 p. 1714-1721
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    FDでは胃排出の遅延や,胃前庭部運動能の低下,適応性弛緩能の低下,早期胃排出の亢進などの運動異常が報告されている.適応性弛緩障害では穹隆部の食事のリザーバー機能の低下により食物が急速に前庭部や十二指腸に排出される早期胃排出亢進がおこる.この早期胃排出亢進は幽門前庭部と十二指腸を急速に拡張するため腹痛や腹部不快感を発生させる.また十二指腸への酸の注入により上腹部症状が誘発され,前庭部収縮運動が抑制される.早期排出亢進による十二指腸の急激な拡張と酸曝露は胃運動を抑制し,心窩部の膨満感などのいわゆる胃もたれ感を持続させると考えられ,これらがFDの症状の発症機序として推測されている.
  • 北條 麻理子, 永原 章仁, 浅岡 大介, 渡辺 純夫
    2012 年 109 巻 10 号 p. 1722-1729
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    機能性ディスペプシア(FD)の治療薬として酸分泌抑制薬が主として用いられている.運動機能改善薬に関しては,新規薬剤の開発も進んでおり,注目が集まっている.Helicobacter pylori除菌治療は,その有効率は低いが,有効であった場合は長期にわたってその効果が持続する.抗不安薬は有効であるとの報告もあるがまだ報告数が少ない.抗うつ薬に関してはその効果の実証のために現在大規模臨床研究が進行中である.グレリン値の上昇などの効果を有する漢方薬がFDの治療薬として最近用いられている.FDは複数の要因によって発症するため,発症に関わる要因に応じて治療薬を選択することにより治療効果が期待できる.
座談会
症例報告
  • 紅林 泰, 丸山 保彦, 志村 輝幸, 景岡 正信, 大畠 昭彦, 森 雅史, 宇於崎 宏城, 甲田 賢治
    2012 年 109 巻 10 号 p. 1745-1751
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は43歳女性.1カ月間続く腹満感,嚥下時違和感に,下痢と嘔吐を合併したため来院した.内視鏡生検の結果,食道,十二指腸および回腸に有意な好酸球浸潤を認め,好酸球性胃腸炎の食道病変合併例と診断した.内視鏡所見上,食道粘膜に好酸球性食道炎で特徴的とされる,輪状溝と縦走溝の出現を認めた.これらの内視鏡所見は,好酸球性食道炎のみならず,好酸球性胃腸炎の食道病変を評価する際の指標になると考えられた.
  • 跡地 春仁, 酒井 範子, 丹治 芳郎
    2012 年 109 巻 10 号 p. 1752-1759
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は90歳男性.胸部苦悶で救急搬送され,腹部CTで門脈ガスと回腸浮腫を認めた.重症虚血性小腸炎と診断,循環不全のため保存的加療として救命し得た.その後腸閉塞となりイレウス管造影で回腸狭窄を認めたため,腹腔鏡補助下小腸切除術を施行し軽快した.急性腹症での門脈ガスは腸管壊死が示唆され緊急手術となるが,全身状態から手術困難な場合の保存的加療について,腸間膜血流維持を中心に今後検討していく必要がある.
  • 竹内 庸浩, 前田 哲男, 多田 秀敏, 西田 悠, 野村 祐介, 井上 善文, 牧野 哲哉, 仙波 秀峰
    2012 年 109 巻 10 号 p. 1760-1769
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は89歳女性.結核性脊椎炎の既往があり,結核性乳腺炎および結核性腹膜炎で手術歴がある.高熱,下腹部痛,嘔吐にて当院救急搬送となった.腹部CT検査で腹水貯留と壁側腹膜の肥厚を認め,腹水穿刺でGaffky 1号が検出された.結核性腹膜炎と診断し,rifampicin,isoniazid,ethambutolによる抗結核療法を開始したが,薬剤性肝障害が出現したため薬剤投与を中止した.肝機能障害が改善した後に,rifampicin,streptomycinによる抗結核療法を再開したところ,2日後に頻回な嘔吐が出現した.腹部X線写真で小腸イレウスの所見を認め,イレウスチューブを留置し,保存的に加療したがイレウス症状は改善しなかった.チューブ造影で上部空腸に閉塞機転を認めたため,開腹手術が施行された.腹膜には黄白色の結核結節が播種性に存在し,上部空腸と回腸の2カ所に強固な炎症性癒着を認め,これが今回の腸閉塞の原因であると考えられた.癒着剥離後に空腸および回腸部分切除術を施行し,病理組織学的検査で結核性腹膜炎の確定診断を得た.今回われわれは結核性腹膜炎に対する抗結核治療中に小腸イレウスを発症した1症例を経験したので報告する.
  • 柿ヶ尾 佳奈, 福嶋 伸良, 水谷 孝弘, 原口 和大, 岡本 梨沙, 澤村 紀子, 大橋 朋子, 光安 彩, 藤山 隆, 吉本 剛志, 國 ...
    2012 年 109 巻 10 号 p. 1770-1775
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性.腹部膨満感・下腿浮腫を主訴に,保存的加療にて改善しない著明な低蛋白血症を認めた.99mTc-DTPA結合ヒト血清アルブミンシンチグラフィー・α1-アンチトリプシンクリアランス試験などにて,消化管内腔への蛋白漏出が確認された.シェーグレン症候群と混合性結合組織病に続発した蛋白漏出性胃腸症の診断に至った.膠原病に合併した蛋白漏出性胃腸症の治療成績は一般に良好で,本症例もステロイドが奏功した.
  • 佐上 晋太郎, 福本 晃, 天野 美緒, 山雄 健太郎, 橋本 義政, 飯星 知博, 小野川 靖二, 平野 巨通, 花田 敬士, 天野 始, ...
    2012 年 109 巻 10 号 p. 1776-1783
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,男性.便潜血反応陽性精査のため全大腸内視鏡検査を施行し,S状結腸に白色調で微細顆粒状の隆起を多数認めた.病理組織学的に,紡錘形細胞の結節状の増殖を認め,免疫組織化学では抗S-100蛋白抗体陽性,NFP陰性,EMA陰性であった.多発性内分泌腫瘍2B型や神経線維腫症1型の合併を示唆する所見は認めなかった.以上より粘膜内シュワン細胞性過誤腫と診断した.
  • 平松 慎介, 根引 浩子, 上野 綾子, 丸山 紘嗣, 末包 剛久, 山崎 智朗, 佐々木 英二, 佐野 弘治, 佐藤 博之, 中井 隆志, ...
    2012 年 109 巻 10 号 p. 1784-1790
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    40歳代女性.発熱と右頸部腫脹を主訴に来院し,血液検査で肝胆道系酵素上昇を認めた.CTで頸部・腋窩・肝門部周辺に多数のリンパ節腫大が認められ,PETで同部に異常集積を認めた.肝門部リンパ節の超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診を行い,炎症にともなうリンパ節腫大と診断した.抗ミトコンドリア抗体高値であり,肝生検で原発性胆汁性肝硬変と診断した.ウルソデオキシコール酸の内服で肝胆道系酵素は改善,リンパ節は縮小した.
  • 浦田 孝広, 泉 良寛, 竹熊 与志, 山崎 明, 松山 桃子, 佐々木 彰子, 宮崎 修, 溝部 典生, 南 信弘, 北田 英貴, 松田 ...
    2012 年 109 巻 10 号 p. 1791-1798
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    58歳,男性.心窩部および背部痛を自覚し近医を受診.CTにて膵尾部に乏血性腫瘤を指摘された.腫瘤は,MRIのT1強調像で不均一な等信号,T2強調像で高信号,造影検査では嚢胞壁と隔壁構造および内腔の一部に造影効果を認めた.超音波内視鏡(EUS)では,内部に多量のdebrisを含む多房性の低エコー腫瘤として描出された.診断に難渋し,病理診断にて膵dermoid cystと診断された1例を報告した.
  • 中村 典明, 入江 工, 田中 真二, 寺本 研一, 有井 滋樹
    2012 年 109 巻 10 号 p. 1799-1806
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    75歳男性.皮膚黄染を主訴に近医受診.胆道造影にて胆管内腫瘤と大量の粘液による閉塞性黄疸と診断し,減黄処置を施行.画像上,胆管内腫瘤は膵頭部腫瘤が胆管へ穿通したものであり,MRI上T2強調で淡い高信号であった.膵粘液癌を疑い膵頭十二指腸切除を施行した.病理診断にてIPMN由来の粘液癌ではなく通常型浸潤性膵管癌の一亜型である膵粘液癌と診断した.胆管に穿破し閉塞性黄疸をきたした膵粘液癌は極めてまれである.
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