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高木 洋治
2003 年 100 巻 7 号 p.
819-828
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
在宅中心静脈栄養法(HPN)や在宅経腸栄養(HEN)により, 患者のQOL向上がみられている. HPNでは6割以上が社会復帰を果たし, 6割以上が継続中である. カテーテルは約6割が継続使用中で, トラブルによる抜去が3割弱で, 重篤な代謝合併症は少ない. HENは調査した66%の施設が施行しており, ベッド規模が多い病院ほど施行率が高く, 経皮内視鏡的胃痩造設術(PEG)が普及している. 今後, 高齢化と診療報酬改訂により在宅医療が更に普及し, 在宅栄養療法患者は増加すると思われるが, その普及には医療従事者のみならず,患者側をも視野に入れた情報提供と教育充実ならびに診療報酬の改定や院外ネットワークなどのシステム作りの確立が望まれる.
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消火器疾患の新しい画像診断法
今井 裕, 高原 太郎, 白神 伸之
2003 年 100 巻 7 号 p.
829-836
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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消化管の診断には, 従来あまり用いられなかったCTやMRI装置が応用されるようになり, とくに三次元画像を含めた新しい有用性が検討されるようになった. また, 本邦では胃癌が多いため上部消化管疾患の拾い上げや質的診断に応用され, 装置の進歩とともに診断成績の向上が認められる. また, 大腸疾患の拾い上げ診断に関しては多くの施設でも行われており, 前処置や検査後におけるデータ解析の診断方法の改善が望まれる. 欧米ではCT colonographyによるコンピュータ支援診断の研究も行われており, スクリーニング検査への応用が期待されている. 一方, X線被曝のないMRIによる三次元画像の可能性についても現在検討されている.
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消化器疾患の新しい画像診断法
芳野 純治
2003 年 100 巻 7 号 p.
837-843
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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三次元超音波内視鏡は超音波プロープが外筒内を移動しながら多数のラジアル画像を撮影し, その画像のコンピューター処理により各種の画像が作成される. 臨床的には深達度診断, 体積測定, 周囲臓器との関係, 脈管との関係の把握などに用いられている. 深達度診断では早期癌, 小さな癌で診断能が良好になったとする報告が多い. 体積計測では胃癌・食道癌・胆管癌などの治療効果判定の定量的評価に用いられている. 表面構築像では内視鏡に類似した画像が得られるため, 内視鏡像と断層像との対比が行われている. 超音波内視鏡診断は空間分解能が良好であり, コンピューター処理機能の向上によりさらに診断に大きく貢献する可能性を有している.
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山内 宏哲, 井口 秀人, 松本 恒司, 松本 章夫, 西尾 雅年, 阿部 洋介, 松下 匡孝
2003 年 100 巻 7 号 p.
844-851
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
当院消化器科へ入院した胃潰瘍患者の臨床データをretrospectiveに検討したうえで, まず試作クリニカルパスを作成, 運用し, その実績から改訂クリニカルパスを作成して, 有用性について検討した. 胃潰瘍全症例での在院日数は, パス未使用群16.2±6.9(平均±標準偏差)日,試作パス群14.1±3.0日, 改訂パス群10.9±2.0日と改訂パス群で有意に短縮した. 出血性胃潰瘍例のみでの在院日数でも, パス未使用群18.0±6.3日, 試作パス群15.1±23日, 改訂パス群11.2±1.8日と改訂パス群で有意に短縮した. また, 再出血率に有意差は認めなかった. このように, 在院日数の短縮の点からもクリニカルパスは有用と考えられた.
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安田 健司, 藤原 英利, 松原 光宏, 山崎 満夫, 廣岡 慎治, 富吉 浩雅, 寺村 一裕
2003 年 100 巻 7 号 p.
852-857
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例1は46歳女性, 臍と横行結腸に腫瘍を認め手術となった. 腹膜播種はあったが臍部腹膜面に腫瘍浸潤はなく, 血行性もしくはリンパ行性転移と思われた. 症例2は53歳男性. 下血, 腹部膨満にて来院. S状結腸腫瘍, 肝転移を認めた. 腹膜播種のため腹腔臓器は一塊となっていた. 手術時に臍腫瘤に気付き転移性臍癌と判断した. 転移性臍癌はSister Mary Joseph's noduleと呼ばれ内臓癌の末期徴候として知られている. 大腸原発で転移性臍癌を認めた報告は少なくまれな症例である.
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泉谷 幹子, 矢島 知治, 芹澤 宏, 渡辺 憲明, 濱田 慶城, 常松 令, 熊谷 直樹, 土本 寛二, 豊田 元, 日比 紀文, 石井 ...
2003 年 100 巻 7 号 p.
858-862
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は30歳女性, 14歳時(1986年)に大腸型クローン病と診断された. 発症時より肛門周囲膿瘍および直腸腔痩を合併してサラゾピリン, プレドニゾロンとともに, 6-MP, メトロニダゾールを投与されていた. 2001年12月肝臓に腫瘤が認められ, 針生検にて肝細胞癌と診断された. 飲酒の習慣はなく, 肝炎ウイルス, 自己免疫疾患の関与も否定的であった. 肝細胞癌に対して肝左葉切除および経肝動脈腫瘍塞栓術施行後, 抗癌剤の内服治療を行い, 現在外来通院中である. 肝細胞癌を合併したクローン病は極めてまれであり, 腸管外合併症として, あるいは投与薬剤の関与が推測された.
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奥 隆臣, 和賀 永里子, 住吉 徹哉, 由崎 直人, 近藤 仁, 大平 典明, 高山 哲治, 敷島 裕之, 本原 敏司
2003 年 100 巻 7 号 p.
863-867
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は67歳, 男性, 腹腔内腫瘍に対し手術が施行され, CD34, c-kit陽性, desmin, S-100陰性より小腸原発GISTと診断された. 8カ月後に再発を認め, メシル酸イマチニプによる治療を開始したところ7日目に腹腔内出血をきたし, 緊急手術となった. メシル酸イマチニブはGastrointestinal Stromal Tumorに対して有用性が報告されているが腹腔内に露出した腫瘍に対しては慎重な投与が必要と考えられた.
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岸本 一人, 金城 福則, 外間 昭, 内間 庸文, 宮里 史郎, 仲本 学, 富盛 宏, 平田 哲生, 金城 渚, 中山 崇, 仲吉 朝邦 ...
2003 年 100 巻 7 号 p.
868-872
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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症例は74歳男性. 頭皮の血管肉腫切除4カ月後に腹痛が生じ, 小腸造影で多発潰瘍を認めた. 小腸内視鏡下生検の免疫病理検査で第VIII因子関連抗原陽性の腫瘍細胞を認め, 血管肉腫の小腸転移と診断した. 手術適応はなく, 保存的に治療したが, 消化管出血と穿孔性腹膜炎で死亡した. 血管肉腫の小腸転移の報告は少なく, 小腸内視鏡と免疫染色が有用であった貴重な症例と考えられた.
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中根 英敏, 岩田 郁, 西澤 新也, 吉兼 誠, 阿南 章, 入江 真, 鈴木 統久, 早田 哲郎, 渡邊 洋, 向坂 彰太郎
2003 年 100 巻 7 号 p.
873-877
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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肝細胞癌の肋骨転移に対してラジオ波焼灼術(以下RFA)を施行し, 完全な局所治療効果が得られた1例を経験した. 症例は72歳, 男性. 肝細胞癌の経過観察中に右第7肋骨に骨転移を疑われ入院となった. 肋骨腫瘍に対し経皮的にRFAを施行した. 同時に施行した吸引組織診断にて肝細胞癌骨転移と診断された. 術後CTにて病変部は完全に焼灼されており, 術後6カ月を経ても局所再発を認めていない. 肝細胞癌骨転移に対しても予後が期待される場合, RFAによる積極的治療が極めて有用である事が示された.
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平野 真苗, 杉本 健, 佐野 宗孝, 金岡 繁, 伊熊 睦博, 梶村 昌良, 横井 佳博, 馬場 聡
2003 年 100 巻 7 号 p.
878-883
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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症例は47歳女性. 検診の腹部超音波検査にて, 膵頭部にφ1.6cmのhyper-echoicな腫瘤性病変を指摘された. ERPでは膵管の異常はなく, 膵内分泌腫瘍や漿液性嚢胞腺腫などが疑われ, 腫瘍核出術が施行された. 病理組織診断では膵管内乳頭粘液性腺癌と診断された. 膵管内乳頭粘液性腫瘍は粘液産生膵腫瘍として発見されることがほとんどであり, 本症例のように臨床的に粘液産生がみられないものは非常にまれであると考えられる.
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須藤 訓, 奥秋 靖, 松岡 美佳, 榎本 康之, 鶴田 由美, 宮川 佳也, 斎藤 晃, 相澤 良夫, 戸田 剛太郎
2003 年 100 巻 7 号 p.
884-888
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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症例は51歳男性, 腹痛, 嘔吐, 体重減少にて入院. 飲酒歴があり, 十二指腸下行脚に全周性狭窄および膵関連酵素の上昇を認めた. 腹部CT, MRIにて膵頭部と十二指腸との間隙(groove)に限局した炎症像を認め, groove pancreatitis puretypeと診断した. 本邦では4例の報告のみできわめてまれであり, 貴重な1例を経験したので報告した.
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新倉 則和, 長谷部 修, 横沢 秀一, 今井 康晴, 長田 敦夫, 保坂 典子
2003 年 100 巻 7 号 p.
889-894
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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症例は74歳女性. 悪心・嘔吐・下痢および肝胆道系酵素上昇の精査目的で当科紹介となった. US・CTで膵頭部の拡張した管腔内に腫瘤を認め, EUSでは管腔内に限局する乳頭状に発育した腫瘍(長径25mm, 高さ8mm)を認めた. Vater乳頭は開大し粘液の流出を認め, ERCPでは膵・胆管合流異常の共通管に膨張性に発育した腫瘤を認めた. 膵管内乳頭粘液性腺癌と診断し, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行し, 共通管に25×30mmの膵管内乳頭粘液性腺癌(非浸潤性)を認めた.
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細川 寿和, 三上 雅史, 笠原 薫, 東 直樹, 郡 登茂子, 小林 哲郎, 遠藤 高夫, 今井 浩三, 仲 綾子
2003 年 100 巻 7 号 p.
895-900
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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症例は82歳男性. 主訴は吐血, 息切れ, 腹部CT・MRIにて膵体尾部に径約6cm大の腫瘤を認め同腫瘍は胃体上部後壁を圧排, 一部胃粘膜に突出して易出血性であった. 入院後低血糖発作を繰り返し約1年後に死亡した. 剖検で膵腫瘍はgrimelius染色, chromogranin染色陽性でありカルチノイド腫瘍と診断した. 本症例は10年前に肝腫瘍で手術(肝外側区部分切除術)を受けていたが, 再検にて肝の腫瘍もカルチノイド腫瘍と判明した. 肝, 膵のカルチノイド腫瘍は極めてまれであり, 低血糖の病態も含め報告する.
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宜保 淳也, 伊藤 鉄英, 河邉 顕, 永澤 恵理子, 中嶋 康博, 小島 瑞穂, 井上 直子, 明石 哲郎, 有田 好之, 古賀 寛史, ...
2003 年 100 巻 7 号 p.
901-906
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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症例は57歳, 男性. 46歳時に右腎細胞癌に対し右腎全摘術を施行, 外来フォロー中の平成13年1月に急性膵炎を発症した. CTにて膵体部を圧排する7.5cm大のリンパ節転移を認め, 膵炎の原因と考えられた. 進行した悪性腫瘍においては, 転移巣に起因した転移誘発性膵炎(metastasis-induced acute pancreatitis)を合併することがまれにあり, 適切な治療の選択を要すると考えられた.
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