著者は内視鏡的に,十二指腸球部粘膜を観察し,生検材料のDisaccharidase (Maltase, Lactase)活性をガスクロマトグラフィーを用いて測定した.また,内視鏡近接観察,実体顕微鏡観察を行つて絨毛形態とDisaccharidaseとの関係についても検討を加えた.
(1) Disaccharidase活性は生検材料の重量の影響をうけ,重量の大きいものほど活性が低く,重量の小さいものほど活性が高く測定された.
(2) 性別,年齢によるDisaccharidase活性の差異はあまりみられなかつた.
(3) Maltase, Lactase活性とも正常十二指腸球部粘膜において活性が高かつた.Maltase活性は病巣辺縁部で明らかに低かつた.Lactase活性については正常十二指腸球部粘膜よりも病巣辺縁部の方が低かつたが,病巣辺縁部と非病巣部では差はみられなかつた.
(4) 十二指潰瘍の各Stageにおける活性値の変動をみると,Maltase活性はH
2の病巣辺縁部,非病巣部においてともに高かつたが,Lactase活性はStage,部位による差異はなかつた.
(5) 十二指腸球部粘膜の絨毛形態を実体顕微鏡で観察し,絨毛形態を分類し,その分布をみると,正常十二
指球部粘膜,病巣辺緑部,非病巣部とも指状絨毛の占める割合が多い.また潰瘍が瘢痕化するほど指状絨毛の比率が45%から62%へと多くなつた.
(6) 絨毛形態別にDisaccharidase活性をみると,Maltase, Llactase活性は両者とも正常十二指腸球部粘膜の指状絨毛で高く,大葉状,尾根状絨毛では低かつた.
(7) 十二指腸潰瘍の各StageにおけるMaltase活性はH
2とSlの指状絨毛で高く,大葉状,尾根状絨毛では各Stageとも低かつた.
抄録全体を表示