日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
108 巻, 10 号
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総説
  • 山上 裕機
    2011 年 108 巻 10 号 p. 1639-1645
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/05
    ジャーナル フリー
    切除不能膵癌に対する化学療法は,いまだにgemcitabineであるが,新しい治療法の開発を目的にさまざまな基礎的研究がなされている.その1つがペプチドワクチン療法である.われわれが施行した医師主導型第I相臨床試験では,ペプチドワクチン療法は安全に施行でき,免疫学的反応においても,61%と高率に特異的T細胞が誘導できた.また,注射部位の皮膚反応は83%に認め,注射部位反応と臨床効果に相関関係が認められた.以上から大規模第II/III相治験であるPEGASUS-PC試験を全国展開し,ペプチドワクチン療法の臨床効果とともに免疫学的パラメータについて探索的検討項目として解析中である.また,今後は術後補助療法としての位置付けについても検討する予定である.
今月のテーマ:膵癌に対する術前術後補助療法
  • 大東 弘明, 高橋 秀典, 石川 治
    2011 年 108 巻 10 号 p. 1646-1653
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/05
    ジャーナル フリー
    本療法の最大の目的は病巣の遺残を防止し切除断端を陰性化させることにある.hyper-fractionや3D原体照射などの照射法の工夫によって局所制御の増強や副作用の軽減が図られ,さらに放射線に対する増感作用を有する5-fluorouracilやgemcitabineが好んで併用されてきた.手術や術後療法の妨げとなることもなく安全に施行でき,局所進行例の切除可能化やborderline例における治癒切除率の向上が得られただけでなく,切除可能例においてはリンパ節転移率の減少やR0切除の増加が認められ,40~50%の5年生存率も認められるようになった.近年,多くの施設で試みられ,その報告も著増している.
  • 元井 冬彦, 力山 敏樹, 片寄 友, 江川 新一, 海野 倫明
    2011 年 108 巻 10 号 p. 1654-1660
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/05
    ジャーナル フリー
    切除可能膵癌に対する標準治療は,切除+術後補助化学療法であるが,その成績は十分とはいえない.術前治療は,全身状態の良い術前に行われることで,根治切除率を高め,また治療反応性を確認できる利点がある.食道癌や乳癌では既に標準治療として行われているが,膵癌では少数例での検討のみであり,さらなる検討が必要である.治療の有効性指標として,R0切除率などとともに,血清腫瘍マーカーの推移(治療前後・切除後)は重要である.これまでの検討では,全身化学療法による術前治療は,安全に施行可能で,切除機会の喪失もほとんどなく,今後他施設で前向きに症例を集積していくべきである.
  • 村上 義昭, 上村 健一郎, 首藤 毅
    2011 年 108 巻 10 号 p. 1661-1669
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/05
    ジャーナル フリー
    当科で施行してきたgemcitabineとS-1を用いた術後補助化学療法(GS補助化学療法)の成績を紹介し,GS補助化学療法の今後の展望について概説した.当科でGS補助化学療法が施行され2年以上経過した膵癌切除症例は60例で,リンパ節転移率,R0手術率は63%,80%であった.全症例の1・2・5年全生存率,生存期間中央値(MST)は,それぞれ,87%・63%・32%,32.5カ月であった.これら60症例の多変量解析では,リンパ節転移の有無のみが独立した予後規定因子であった.これまでに文献的に報告されたさまざまな術後補助療法のphase II・III studyの2年生存率,5年生存率,MSTは,それぞれ,25~59%,4~26%,13~30カ月で,膵癌切除後症例に対するGS補助化学療法の有用性が示唆された.現在,本邦において,膵癌切除患者を対象としたGS療法をgemcitabine単独療法と比較する術後補助化学療法の無作為比較第III相試験(JSAP-04試験)が進行中であり,膵癌の術後補助化学療法に対する本邦からの新たなエビデンスが発信されることが期待される.
  • 小菅 智男
    2011 年 108 巻 10 号 p. 1670-1675
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/05
    ジャーナル フリー
    膵癌の補助療法はエビデンスが乏しいままに行われてきたが,術後補助療法に関しては,多施設共同による大規模なランダム化比較試験が行われるようになった.その結果,ゲムシタビン単剤による術後補助化学療法の有用性が示され,標準治療として位置づけられるに至った.現在は,多剤併用療法などについていくつかの臨床試験が進行している.放射線化学療法については,補助療法としての歴史は長いものの,その位置づけについてはいまだに十分なエビデンスが得られていない.膵癌の治療成績向上のためには治療法を正しく評価する必要がある.そのためには,適切に計画された臨床試験による評価が不可欠である.
座談会:膵癌に対する術前術後補助療法
症例報告
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