胃疾患の形態学的研究は, 胃X線, 内視鏡診断学の進歩で急速に発展した. 一方, 胃の生理学的研究にもすぐれた業績がみられるが主として胃液分泌機能面での研究にかたよっているように思われる. そこで, 胃の病態生理を研究する一つの方法として胃粘膜局所温測定法を考えた. 測定にもちいた器具 (Gastrothermometer) は5/1,000℃の温度差を識別できる. この器具をもちいて臨床的に胃疾患患者の胃粘膜局所温を測定した. 胃潰瘍では, 潰瘍底は潰瘍周堤より低い温度を示し, この潰瘍底と周堤との温度差は潰瘍の治癒にしたがつて小さくなつた. 胃ポリープでは, 頭部が茎部, 根部より高い温度を示した. また, 胃癌の局所温には規則性はなかつた.
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