症例は59歳,男性.20年来の直腸炎型潰瘍性大腸炎があり緩解を維持していた.心窩部痛を主訴に来院し,内視鏡検査にて胃体部に発赤と小白苔をともなうびらんを散在性に認めたが,食道や十二指腸は異常を認めなかった.びらんからの生検では陰窩膿瘍類似で好中球主体の炎症細胞浸潤と非びまん性炎症の所見を得た.当初,酸分泌抑制剤や粘膜保護剤にて加療されたが改善はみられなかった.問診および各種検査よりNSAIDsや
H.pyloriの関与は否定的であり,生検所見も併せ潰瘍性大腸炎との関連が強く疑われた.5-ASA製剤の粉末投与と副腎皮質ステロイドを増量したところ,自覚症状および内視鏡検査上びらんは消失した.胃病変はびまん性,連続性でなく散在性に存在していたが,潰瘍性大腸炎に準ずる内科的治療により治癒したことから,本疾患との関連を強く疑う胃病変と考えられた.自験例のごとく直腸炎型潰瘍性大腸炎に上部消化管病変をともなう類似の報告例はない.
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